日本刑事政策研究会 罪と罰
受賞者発表
平成18年度懸賞論文入賞者決定!

 財団法人日本刑事政策研究会は,読売新聞社との共催により,毎年度,刑事政策に関心を持つ学生の皆さんを対象として,懸賞論文の募集を行っています。
 第20回目となる平成18年度においては,「再犯防止に関する有効な対策について」を論文題目として募集を行いました。募集は,平成18年8月末日をもって締め切られ,同年12月4日に開催された審査委員会において,審査委員による慎重な審議が行われた結果,次のとおり,受賞論文が選定されました。

優秀賞(1名) 秋山 映美(明治大学大学院 法学研究科 博士前期課程 1年)
佳 作(2名) 松岡 正志(京都大学大学院 法学研究科 (法科大学院)2年)
安 成訓(明治大学大学院 法学研究科 博士後期課程 2年)

 なお,受賞者に対する表彰式は,平成18年12月15日,法曹会館において行われ,優秀賞には,当研究会から賞状及び賞金20万円が,読売新聞社から賞状と賞品が授与され,また,佳作には,当研究会から賞状及び賞金5万円がそれぞれ授与されました。
 受賞者の皆様には,心からお祝い申し上げます。
 以下に,優秀賞を受賞した論文全文及び佳作の論文要旨を掲載します。


  
平成18年度受賞作品
優秀賞薬物事犯者の再犯防止に関する有効な対策(秋山 映美)」
佳作保護観察の充実強化による重大再犯の防止
―判決前調査との有機的連携を目指して―
(松岡 正志)」
佳作行刑における高齢犯罪者の再犯防止への取組み(安 成訓)」

優秀賞
薬物事犯者の再犯防止に関する有効な対策
秋山 映美
一 はじめに
 近年,殺人や強姦などのいわゆる凶悪犯罪の再犯がマスコミなどで取り上げられ,多くの国民が治安に対する不安感を抱いている。実際に,平成9年以降,再犯者の人員は増加し,再犯者率は上昇している。平成16年における一般刑法犯検挙人員中の再犯者は13万8,997人であり,再犯者率は35.7%である1
 また,平成16年の殺人の検挙人員のうち有前科者は40.4%であり,強姦については40.0%である。しかし,この二つの犯罪について,同一罪種の前科を有する者の割合を見ると,殺人については4.2%であり,強姦については9.8%といずれも高い数字を示してはいない。同一罪種の前科を有する者については,むしろ,傷害,恐喝,窃盗,詐欺などが高い割合を示している。他方,覚せい剤取締法違反については,前科ではないものの,同一罪種の検挙歴を有する者の比率は56.8%であり,非常に高い数字を示している2
 このように,覚せい剤取締法違反は,殺人や強姦などのいわゆる凶悪犯罪に比べて,同一罪種の再犯を繰り返す危険性が高く,それが結果的に再犯者率の平均値を上げていると言える。
 また,覚せい剤取締法違反の再入受刑者は全再入受刑者のうち24.9%を占めており,窃盗に続いて高い数字を示している3。同一罪種の犯罪を繰り返すということは,現状では再犯防止策が十分に機能していないことを意味する。
 再犯者率を低下させるためには,覚せい剤などの薬物事犯の再犯防止が不可欠であり,薬物事犯の有効な防止策を講ずる必要があると考える。さらに,薬物事犯者の刑務所への再入所率が減少することによって刑務所の過剰収容状態が解消されれば,性犯罪や殺人などの重大犯罪を繰り返す者に対して,十分な処遇プログラムを提供する人的・物的資源の確保が可能になるのである。
二 覚せい剤などの薬物事犯者に対するアプローチ
 わが国では,薬物の自己使用は,「犯罪」であることが強調され「処罰」の対象とされてきた。薬物の自己使用事犯者については,懲役という罰を与え,物理的・強制的に薬物との関わりを断つことで矯正するという考えが強く,通常の刑事裁判手続がとられている。
 しかし,薬物依存症は,自分の意志では薬物使用中止のコントロールができない「病気」である。にもかかわらず,薬物の使用を繰り返す者は自分が薬物依存症であるということを自覚していない場合が多い4
 薬物依存症者がその違法行為の法的責任を取ることは,依存症からの回復のためにも必要な事であるが,一方で,刑務所への収容が再犯(再使用)防止に効果があるとはいえない。むしろ,刑務所への収容で家族との絆が失われ,出所後の状況は収容前より悪化し,ますます薬物への依存を深めることになる。
 近年,多くの行刑施設において,民間の薬物自助団体の協力を得て,薬物依存離脱指導が実施されている5。また,昨年より「更生保護のあり方を考える有識者会議」において,薬物事犯者に対する保護観察の強化などが検討され6,さらに,今年の7月には中間処遇や社会奉仕命令も含む社会内処遇の制度化について法制審議会へ諮問がなされるなど,薬物事犯者について新たな処遇プログラムの検討がなされている。
 しかし,薬物依存からの回復は,薬物を使用しない生活を毎日積み重ねていくことが重要である7。そのためには,保護観察中,受刑中,釈放後の各段階相互の連関なく処遇プログラムを組むのではなく,薬物依存症者への一貫性がありかつ継続的な支援を検討する必要がある。
 薬物依存症は「病気」であり,薬物依存症者は「治療」の対象として捉えられる必要がある。すなわち,犯罪−処罰アプローチではなく,病気−治療アプローチへの転換が必要なのである。
三 薬物事犯の再犯防止策に関する提案
1 アメリカ合衆国におけるドラッグ・コートの紹介8
 ドラッグ・コートとは,1989年フロリダ州マイアミのデイド郡裁判所が,薬物乱用に苦しむ人々へのトリートメントを提供している機関と提携して始めた裁判制度である。
 アメリカでは,1980年中頃から薬物事犯が急増したため,薬物使用と薬物の影響を受けた犯罪行為の減少を目的として,ドラッグ・コートが設置された。薬物の使用に対して,刑罰ではなく,脱薬物トリートメントで対応しようとする試みである。さらに,副次的効果として,裁判所・検察庁の負担の減少,刑務所の収容率の低下,薬物犯罪対策にかかる総費用の削減が期待されている。
 ドラッグコート・プロフェッショナル全国連合(The National Association of Drug Court Professional)では,参加者と裁判官の頻繁かつ個人的な接触の機会があること,違反に対して即時かつ一貫して対応できる段階的な賞罰制度があること,包括的なトリートメントとアフターケアが提供されることなど6つのドラッグ・コートの要件を挙げている。
 裁判手続は,裁判官,検察官,弁護人の三者が中心となって進行するが,通常の刑事事件の法廷とは異なり当事者対立主義ではなく,検察官と弁護人が一つのチームのメンバーとして行動する制度である。裁判官がリーダーシップをとり,被告人にプログラムへの参加を促し,プログラムの参加者を叱咤激励しながら,薬物依存からの回復を支援している。
 たとえば,ワシントン州キング郡では次のような流れで手続を行っている。@検察官は,ドラッグ・コートの要件があれば,被疑者をドラッグ・コートに起訴。A第1回目の出頭で,公設弁護人が割り当てられ,検察官の起訴状朗読,裁判官の権利告知の後,被告人の罪状認否。この際,裁判官は被告人にドラッグ・コートの仕組みと3つの選択肢を説明する。第1は有罪を認める答弁をすること,第2は起訴事実を争って通常の審理を求めること,第3はトリートメントに参加することである。被告人は考慮期間中に,試しにドラッグ・コートに参加することができる。Bドラッグ・コートの参加を選択した被告人は,裁判所と契約書を交わし,非営利民間団体が提供するトリートメントに12〜14ヶ月参加する。その間,被告人は定期的に薬物検査を受け,裁判所へ出廷する。ディーラーや過去に性犯罪,暴力犯罪の前科がある者は参加の資格はないが,ドラッグ・コートに一度参加したことがある者でも再度参加することができる。
 また,カリフォルニア州のドラッグ・コートにはいくつかのモデルがある。有罪答弁前のモデルではプログラムを修了すると不起訴になる。起訴後のプログラムではプログラムを修了すると検察官が公訴を取り下げ,公訴棄却になる。判決後のプログラムでは,プログラムを修了すると刑務所に収容されることがない。その他,民事モデルでは子どもの親権を維持するか取り戻すためにプログラムに参加するが,修了できない場合には,永久に親権を失うことになる9
2 日本におけるドラッグ・コート・プログラムの可能性
(1)現状でも実施できるプログラムとして
 現在,アパリやダルクなどの民間団体が薬物依存からの回復を支援するプログラムを提供している10。アパリでは,特に,薬物依存症者をできるだけ早くリハビリ施設につなげるべく,保釈中の刑事被告人へのプログラムの提供を行っている。通常,薬物依存症者に対する初期介入は非常に難しく,身体的・精神的に変調をきたし,仕事も家族も失ってから,初めてリハビリの専門機関につながることが多い。したがって,保釈中の被告人に対する薬物研修プログラムは,逮捕・起訴を契機に薬物依存から回復する有効な機会を早期に提供するという意義がある。さらに,社会復帰後に,再度薬物使用することを防止するために,NA(ナルコティクス・アノニマス)のミーティングに参加することの重要性と,もし再度薬物を使用した場合にも受け入れ先があるということを周知する意味でも,このプログラムが重要であるとしている11
 刑事訴訟法93条3項が,保釈に際し,「被告人の住居を制限しその他適当と思われる条件を附することができる」としていることから,アパリの施設で薬物研修を受けることを条件にアパリの施設を制限住居として保釈決定を得ることによって,このプログラムを実施している。保釈された被告人は,毎日NAミーティングに参加するなど,再犯防止に向けたプログラムを受けることになる12
 さらに,アパリのスタッフが情状証人として出廷し,被告人の薬物研修プログラムの受講事実は,薬物依存から脱却しようと努力していることを示す情状として有利に認定されている13
 しかし,現状では,アパリの提供している保釈を利用した刑事被告人への薬物研修プログラムは制度化されておらず,今後は,全国にある薬物依存症者のリハビリ施設が,保釈された刑事被告人を受け入れられるよう,補助金などで体制を整える必要がある。さらに,弁護士会の協力を得て積極的に保釈請求をすることや,裁判所が保釈決定をする際の保釈金額を下げることによって,保釈率が上がり,保釈中の刑事被告人への薬物研修プログラムの提供は全国的に広く実施可能な制度となるであろう。
 また,刑事訴訟法95条の勾留の執行停止を利用することも可能であろう。勾留の執行停止は,保証金に代わる確実な人的保障,すなわち,親族もしくは保護団体その他の者へ委託,または,居住の制限のいずれかがある場合に認められる14。実務では,病気治療のための入院などの場合は認められているが,薬物依存の治療については認められていないようである。今後は,薬物研修プログラムへ参加することで勾留の執行停止が認められるようになれば,保釈金を支払うことができない被告人もプログラムへの参加が可能になるであろう。
 さらに,被告人が拘置所に勾留されている場合には,希望者に拘置所内で薬物研修プログラムを提供し,一定の改善があれば,執行猶予の判断材料とした上で,その後の執行猶予中の保護観察の期間中に,引き続きプログラムに参加する制度が考えられる。法務省の更生保護のあり方を考える有識者会議の報告書15でも提言がなされているように,更生保護事業の担い手を拡大し,プログラムを提供する民間施設の更生保護事業への参入を促進することによって,薬物依存症者の回復効果が期待できる。
 現在,多くの刑務所で薬物依存離脱指導が実施されている。この刑務所内で実施されているプログラムに参加し,修了することを仮釈放の審理の際の判断材料として,これまで以上に重視することができれば,より多くの薬物依存症者が積極的にプログラムに参加する動機付けとなるであろう。また,仮釈放の運用状況は必ずしも十分なものであるとはいえないため,今後は,薬物研修を修了した者について,積極的に仮釈放を認め,一人でも多くの薬物依存症者を回復につなげることができよう。
(2)新たなダイバージョンシステムとしての薬物審判制度の創設
 今後,日本でドラック・コートのような新しい司法制度を導入する方法として,少年審判制度に類似した「薬物審判制度」の創設を提案したい。
 この薬物審判制度においては,対審構造のもとで厳格な手続に従って事実認定を行う成人の刑事裁判とは異なり,1人の裁判官がリーダーシップをとって裁判を行う職権主義的な構造をとる。その目的は,薬物依存症者の治療であり,アメリカのドラッグ・コートのように,弁護人,検察官などその裁判に関与する者が,依存症から回復させるために一つのチームとなって取り組む審判制度である。
 薬物審判の対象者を検察官から裁判所に送致し,第1回目の出廷の際に裁判官が薬物使用の事実を確認する。そして,事実に争いがない場合に,薬物審判を選択した者は薬物審判に参加する。
 薬物審判では,終局決定でない中間決定として,試験観察のような制度を設けることが考えられる。アメリカのドラッグ・コートでは,参加者はトリートメント受講中,定期的に出廷し,裁判官にプログラムの進捗状況についての報告や薬物検査などを行っている。裁判官は参加者の生活態度について注意をし,仕事や学校のことなど参加者の環境についてのアドバイスなどを行っている。参加者は,薬物を再使用したとしても,すぐに刑務所へ収容されるのではなく,段階的な賞罰制度を設け対応している。薬物の再使用は薬物依存の回復過程でごく普通に起こることであり,依存症者はそこで薬物の使用がどのような状況で起こるのかを自覚するため,回復へのひとつの転機となるのである16
 終局決定としては,試験観察期間中に薬物研修プログラムを修了すれば,不処分または保護処分の決定をすることなどが考えられる。保護処分決定の場合には,犯罪者予防更生法33条に薬物審判の保護処分を受けた者を加え,薬物審判の参加者は保護観察制度を利用して薬物研修プログラムに継続して参加することを義務付けることを可能にする。
 参加者がプログラムを修了できなかった場合や,全く改善が見られないような場合には,検察官へ逆送し,通常の刑事訴訟手続に戻すことになる。
四 考察
 アメリカにおけるドラッグ・コートの効果についての評価は様々な角度からなされている。
 ドラッグ・コートには再犯防止の効果はないという研究報告もあるが,否定的見解は,刑事司法制度の目的は刑罰であり,1970年代の改善社会復帰アプローチは失敗であったという見解を示しているフランシス・アレンの「The decline of the rehabilitative ideal」を引用し評価している17
 その一方で,ニューヨーク州の11のドラッグ・コートの効果を検証した報告書では効果があると評価されている18。対象となるドラッグ・コートは,大都市(マンハッタンなど)から郊外の都市(ロチェスターなど)まで様々な規模の都市の中から抽出し,類似した環境にあるドラッグ・ユーザーにおける効果を比較している。この報告書によると,ドラッグ・コート参加者の再犯率は,参加していない者と比較すると,逮捕後3年では29%低く,ドラッグ・コート終了後1年では32%低いことが示されている。
 確かに,ドラッグ・コートへの参加者は本人が希望して参加しているため,参加していない者より再犯率は低くなる傾向はある。しかし,以上のデータから,日本においても薬物依存症者にドラッグ・コートのようなトリートメントを実施することは,薬物事犯の再犯率を低下させるためにも効果があると考えることができる。
 ドラッグ・コートの効果は,再犯率の低下だけにとどまらない。刑務所への収容者数が減少することによって,100%を超えている日本の刑務所の過剰収容状態を解消することが期待される。また,刑務所に収容された場合にかかる費用と比較すると,ドラッグ・コートの運営にかかる費用の方が少ない金額であるとの試算もある19
 現在,日本では,薬物自己使用者に対しては処罰アプローチの側面が強調されているが,治療アプローチの視点から,薬物依存症者への研修プログラムを実施することは,再犯防止の有効な対策の一つであると考えることができる。
 もちろん,プログラムの効果は,参加者の環境,たとえば,仕事の有無,家族の有無,住居の有無,薬物の使用頻度などによって異なるものであり20,薬物依存からの回復は,一定期間の薬物研修プログラムへの参加だけでは解決ができない問題である。したがって,プログラムを修了した者が薬物依存症から回復するためには,刑事司法制度の改善だけでは不十分であり,社会福祉制度の充実が必要であると思われる。
以 上
1 平成17年版犯罪白書66頁。なお「再犯者率」とは一般刑法犯検挙人員に占める再犯者の人員の比率を指し,「一般刑法犯」とは刑法犯全体から交通関係業過を除いたものである。
2 前掲注(1)68頁1-4-6-3表。
3 前掲注(1)439頁。
4 アパリクリニックホームページ「薬物依存症って」
http://www.apari.jp/clinic/izon
5 矯正局成人矯正課,矯正局少年矯正課「薬物事犯受刑者処遇研究会及び『被害者の視点を取り入れた教育』研究会報告会の概要報告」刑政第117巻第8号62頁,66頁(2006年)。
6 法務省『更生保護制度改革の提言−安全・安心の国づくり,地域づくりを目指して−』
更生保護のあり方を考える有識者会議報告書43頁(2006年)。
http://www.moj.go.jp/KANBOU/KOUSEIHOGO/houkoku02.pdf
7 近藤恒夫『薬物依存を越えて 回復と再生へのプログラム』46頁(2000年,海拓舎)。
8 平野哲郎「ドラッグ・コート−アメリカ合衆国におけるリハビリテーション・ジャスティス(社会復帰的司法)の試み」判例時報1674号27頁(1999年)。
9 尾田真言「アパリ,ダルクが提供可能な薬物自己使用事犯者に対する薬物依存症回復プログラム−米国ドラッグ・コート制度を参考にして−」犯罪と非行141号145頁,165頁(2004年)。
10 アパリホームページ http://www.apari.jp/npo/
アパリでは,回復プログラムとして,ミーティング(集団療法),スポーツプログラム,農作業プログラム,陶芸プログラム(作業療法)のほか,日常生活の支援を行っている。毎朝,NA(ナルコティクス・アノニマス=無名の薬物依存者たちの集まり=)によるミーティング方式を取り入れた薬物依存症から回復するための自助グループ・ミーティングを行っている。ミーティングは,過去の自分たちの薬物体験を語り合うことで出席者が心の痛みを分かち合い,ほかの仲間の苦しみへの共感能力を高めつつ,自身の回復への決意を固めていくことを目的にしている。
11 前掲注(9)156頁。
12 前掲注(10)「保釈中の刑事被告人に対する薬物研修プログラム」。
13 前掲注(9)156頁。
14 伊藤栄樹ほか『注釈刑事訴訟法[新版]』第2巻127頁,128頁(1997年,立花書房)。
15 前掲注(6)24頁。
16 前掲注(9)165頁。
17 Morris B. Hoffman , The Rehabilitative Ideal and the Drug Court Reality, Vera Institute of Justice, Inc.(2002), n.24; Morris B. Hoffman, A Reply to Messrs, Meyer and Ritter, n.8(2002).
18 National Drug Court Institute, Drug Court Review 67, at 71(2004).
http://www.ndci.org/dcr_vol4_iss2.pdf
19 前掲注(8)36頁。
20 前掲注(8)34頁。

(明治大学大学院 法学研究科 博士前期課程 1年)
一覧へ戻る


佳作
保護観察の充実強化による重大再犯の防止
―判決前調査との有機的連携を目指して―
松岡 正志
要旨
 平成16年末から保護観察を受けていた者による重大再犯事件が相次いだこともあり,体感治安の悪化は著しい。保護観察の実効性に国民から懐疑の目が向けられる中,再犯防止機能の強化が強く要請される事態となっている。
 もっとも,現在の保護観察は決して再犯防止に無力ではない。『犯罪白書』によると,保護観察を受ける仮出獄者の再犯率は,それを受けない満期釈放者の再犯率よりも相当低く抑えられている。政策の実現性の面からも,現状の保護観察に一定の評価を下しつつ,その充実強化を図るという方向性をもつべきではないか。その際には,重大再犯事件続発の教訓から,特に凶悪事犯の防止という視座をもつことが重要である。
 保護観察が抱える課題として,@判決と保護観察との乖離,A官と民のアンバランス,B運用の劣弱性が挙げられる。従来脆弱であった官の役割を明確化し,体制を強化することが求められるが,対象者に適合する処遇期間,プログラムの内容でなければ再犯防止機能は十全に発揮されない。その点で,保護観察への出発点ともいえる判決に焦点を当て,処遇との連携を図りたい。
 判決に際し個別処遇を考慮するためには,それに先立ち被告人の個別事情の調査が必要となる。欧米でも広く採用される「判決前調査制度」を検討してはどうか。いきなり全事件について採用するのはリソース等の面で限界があろう。重大再犯防止の観点から,当面は@凶悪事犯A類型的に調査の必要性が高い犯罪(家庭内犯罪・性犯罪等)に限定して導入することを提唱する。
 このための調査官は裁判所に所属させる。更生保護機関の専門職員も強化し,両者の間で双方向情報提供システムの構築が展望される。この有機的連携によって保護観察の実を挙げ,重大再犯防止に役立てたい。
 本稿は,以上のような「限定的判決前調査制度」を提言するものである。

(京都大学大学院 法学研究科 (法科大学院)2年)
一覧へ戻る


佳作
行刑における高齢犯罪者の再犯防止への取組み
安 成訓
要旨
 最近の犯罪情勢をみると,再犯者による犯罪の増加傾向がみられており,特に行刑施設においては,年間刑務所入所者の約5割が刑法上の累犯者であり,また,累犯者中,その犯罪傾向がより進んだ刑務所入所度数の多い,いわゆる,ひん回累犯者の数が減少していないなどの事実が従来から指摘されている。なかでも,特に注目されるのは,行刑施設内の受刑者の高齢化が著しく,再入新受刑者における高齢化傾向が顕著に認められるということである。
 高齢化への過程は,すべての人間が等しくたどる道である。超高齢社会を目前にし,「Aging Japan」に対する準備がどの時期よりも強調される現時点で, 変貌しつつある高齢犯罪者と行刑段階(矯正と保護)における新しい関係を設定する作業は喫緊の課題である。このような認識に基づき,高齢受刑者の再犯防止対策におけるその方向を提言したい。まず,高齢再犯者の場合は,過去の成育環境,家族生活などの把握による人格特性及び意識・態度などを考慮するという個人向けの面を重視した処遇プログラムより,高齢犯罪者をめぐる環境的な面をより重視した処遇プログラムの開発,あるいは,矯正段階と更生保護段階との連携を重視したプログラムの開発が重要であると思われる。なぜならば,すでに人生の大半を過ぎてしまった高齢受刑者に対して,過去の成育環境,家族生活などを云々したところで,今更,その効果があるとは思われないからである。次に,犯罪者の処遇を直接に担当する矯正と更生保護機関のより緊密な連携が要求される。高齢再犯者は,保護環境が悪いため,合法的機会構造の下で,生活を送るための基盤が薄弱である場合が多いのが現状であり,特に,再入高齢受刑者の帰住先として更生保護施設の構成比が最も高いという現状から判断すると,矯正と更生保護機関はより相互に情報を交換し合い,または,より緊密な関係を保持し,彼らを積極的に管理する適切な刑事政策を行う必要があると思われる。

(明治大学大学院 法学研究科 博士後期課程 2年)
一覧へ戻る