日本刑事政策研究会 罪と罰
受賞者発表
平成11年度の受賞作品
佳作
「恢復的司法」の我が国への導入について
有賀 祥一
 犯罪者が本当に更生するには,自らじゃっ起した犯罪結果を認識し,被害者に対して責任を果たすことが必要である。従来,社会内処遇は施設内処遇のマイナス点を改善することに重点が置かれていたが,最近,欧米を中心として人的コミュニケーションに重点を置いた「恢復的司法」という新しい司法のモデルが提唱されており,「被害者−加害者和解プログラム」等が制度化されている。被害者と加害者の対面すら不可能であろう重大な事件や性犯罪等を除き,当事者間の紛争解決が可能な軽微事件については積極的に導入を検討すべきであり,刑罰は,重大凶悪犯罪のように,一般予防・特別予防上どうしても必要な場合に課す「最後の手段」として活用されるべきと考える。
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佳作
自立へのきっかけ作りのために
佐々木 晋
 従来,更生保護施設の処遇は,宿泊や食事の提供,就職援助等,個別処遇的性格が強かったが,現在,人間と人間との相互作用が処遇にもたらす効果に注目し,SST(社会生活技能訓練)などの新しい集団処遇に挑戦しようという動きが見られる。「自立へのきっかけ作り」を重んじるSSTが万能であるかどうかは分からないが,SSTという処遇は,小手先の方法論にとどまらず,もっと深い哲学的な何かを,処遇関係者を始め一般社会に生活する私達にも提示しているような気がする。「きっかけ作り」という一言で完全に説明できるとは思えないが,被保護者間の関係性,被保護者と職員との関係性,そして,私達を含めた人と人との関係性の尊さについて改めて考えてみることは,これからの社会内処遇を考察する上でも決して無駄なことではないと考える。
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佳作
交通事犯に対する社会内処遇
篠木 勘司
 交通事故で年間1万人の死者が出ているが,その加害者の多くは不起訴や罰金刑,執行猶予に付されており,遺族等から見れば実質的な「免責」である。そこで,自由刑よりも軽く,かつ罰金刑や執行猶予よりも犯罪者にとって負担となるような処遇が求められており,これにこたえるためには,社会内処遇の刑罰としての側面を強化することが必要ではないだろうか。そのためには保護観察付執行猶予(4号観察)制度を積極的に活用すべきであろう。特別遵守事項の新設や指導監督の強化によって,被害者・遺族の応報感情も,従来の単なる執行猶予等よりも緩和され,刑罰としての一般的予防効果をも持つであろう。また,現行制度にない補償命令制度や社会奉仕命令等についても検討の余地がある。いずれの制度にしてみても,法曹三者の増員だけではなく,犯罪者の処遇に関わる保護観察官や保護司の増員等にも力を入れなければならない。
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佳作
関係修復的司法の意義
平山 真理
 社会内処遇は犯罪者にとって烙印が回避されることで社会復帰も円滑に行われる等利点は多い。しかし,昨今の被害者問題の高まりの中,社会内処遇において被害者はどう考慮されるのかという問題は放置できず,一方,それが厳罰につながらないかという危機感もある。被害者と加害者を同時に尊重する新しい司法アプローチとして,欧米で広く行われている関係修復的司法がある。その多くは社会奉仕命令を伴って行われ,加害者を社会の中に置きつつ,加害者と被害者の関係だけでなく,加害者と社会の関係をも修復することが可能である。社会内処遇において重要なのは,その犯罪者を社会から排除するのではなく,社会の中で共存しようと努力することであり,被害者,加害者,そして社会の三者の観点を考慮した関係修復的司法の意義は大きいのではないだろうか。

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