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更生支援に対する国民の理解と協力 ─平成29年版犯罪白書特集を参考に─
谷  真如
1 はじめに
 「あなたは,犯罪や非行をした人たちの立ち直りに協力したいと思いますか。」
 この問いに対し,実に6割もの国民が「思う」又は「どちらかといえば思う」と回答する。その事実に驚きを感じるだろうか,それとも当然のことと思われるだろうか。平成28年12月に成立・施行された再犯の防止等の推進に関する法律(平成28年法律第104号。以下「再犯防止推進法」という。)は国民の理解と協力を得て,犯罪や非行をした者が再び社会を構成する一員となるよう支援することを再犯防止施策の基本理念として掲げている。一方で,国民が「犯罪や非行をした者の更生支援」に対し実際どのような意識を持っているのかという点にスポットライトが当たる機会は少ない。
 平成29年版犯罪白書(以下「白書」という。)では「更生を支援する地域のネットワーク」と題して特集を組み,国,地方公共団体,保護司や協力雇用主等の民間協力者,関係機関・団体等の緊密な連携協力のもと,各地で行われる多くの取組をコラムとして紹介した。白書特集はいわば「グッドプラクティス・ガイド」としても活用できる内容となっている。さらに,これらの好事例に共通する特徴を抽出・整理することを試みた。詳細は白書特集を御覧いただきたいが,近年の再犯防止施策における先駆的な取組を取材する中で,多くの矯正・保護等の職員が更生支援を国の刑事司法機関のみで行うことの限界,民間協力・多機関連携の有効性・重要性を実感していることが明らかになった。そして,連携・協力の相手となる民間協力者や関係機関・団体等を構成するのは,それぞれの地域で暮らす国民である。犯罪や非行をした者の更生支援に携わる人々の裾野をより広げていくための施策を考える上では,国民の理解と協力の重要性を抜きに語ることはできない。そこで,本稿では白書特集の中でも特に国民の意識という点に焦点を当てて,内容の一部を紹介するとともに,若干の考察を加えることとしたい。なお,本稿中,白書の記述・分析内容を超え,意見にわたる箇所は,全て筆者の個人的見解である。

2 再犯防止対策に関する特別世論調査の結果と考察
(1) 世論調査の概要
 白書特集では,犯罪や非行をした者の更生支援に対する国民の意識について把握するため,平成25年8月に内閣府が行った「再犯防止対策に関する特別世論調査」(以下「世論調査」という。)の結果の分析を行った。世論調査は,層化2段無作為抽出法(注1)により全国210市区町村210地点から抽出した20歳以上の日本国籍を有する者3,000人を対象として,調査員による個別面接聴取により行われたものであり,調査票の有効回収数は1,855人(回収率61.8%)であった。
(2) 立ち直りへの協力意識
 図1は,本稿冒頭に掲げた「あなたは,犯罪や非行をした人たちの立ち直りに協力したいと思いますか。」という質問に対する回答を男女別に見るとともに,これを年齢層別に見たものである。
 男女共に,年齢層が高い者ほど,「協力したいと思う」と回答した者の割合が高い。また,「協力したいと思う」と回答した者及び「どちらかといえば協力したいと思う」と回答した(以下「協力意思がある」という。)者の合計を見ると,男性では,40歳以上64歳以下の年齢層が,女性では,20歳以上39歳以下の年齢層及び40歳以上64歳以下の年齢層が,それぞれ他の年齢層に比べて割合が高い。女性では,年齢層が高い者ほど,「協力したいと思わない」と回答した者の割合も高く,「どちらかといえば協力したいと思う」及び「どちらかといえば協力したいと思わない」と回答した者の割合が低くなる傾向があり,65歳以上の年齢層では協力意思の有無が最も明確になる。つまり,全体で見ると,過半数の国民には犯罪や非行をした者の立ち直りに対する協力意思があるが,性別や年齢層により回答傾向に差が見られた。

図1 立ち直りへの協力意識(男女別・年齢層別)


注1 内閣府の「再犯防止対策に関する特別世論調査」(平成25年8月調査)の資料に基づき法務総
    合研究所が作成したものである。
  2 質問に対し,「わからない」と回答した者を除く。
  3 ( )内は,実人員である。


 この結果は,どのように解釈できるだろうか。まず思い浮かぶのは,加齢による意識の変化という観点である。他にも,出生年による世代間での意識の差異という観点もあり得るであろう。この点を考える上で,今回の世論調査と類似した質問を行っている過去の世論調査の結果を見てみたい。
 昭和54年,内閣総理大臣官房(当時)は,更生保護活動の周知度及び協力度等を把握することを目的に,「更生保護事業に関する世論調査」を行った(注2)。調査対象者は今回の世論調査同様,層化2段無作為抽出法により全国から抽出した20歳以上の日本国籍を有する者3,000人であった(調査票の有効回収数は2,437人,回収率81.2%)。同調査では「あなたは,非行少年や犯罪者を立ち直らせるために協力してみる気持ちはありますか」という質問を行っている。結果は,「ある」が46.1%,「ない」が29.5%,「わからない」が24.4%であった。この数値自体は回答の選択肢(「どちらかといえば〜」が存在しない)や調査全体の構成等が異なるため,必ずしも今回の世論調査と対応させて見ることはできないが,注目すべきは男女別・年齢層別の回答傾向である(表2)。
 協力意識について,@「ある」という回答の占める比率は,男女共に40歳以上49歳以下の層及び50歳以上59歳以下の層が他の年齢層に比べて高く,A「わからない」という回答の占める比率は,おおむね年齢層が上がるに従って減少している。つまり,今回の世論調査と類似する回答傾向となっているのである。昭和54年当時,協力意思がある者の割合が最も低かった20歳以上29歳以下の層は,34年後に行われた今回の世論調査では,協力意思ある者の割合が最も高かった40歳以上64歳以下の年齢層に該当する。このことは,出生年による世代を問わず,加齢による影響が存在する可能性を示唆している。

表2 昭和54年世論調査 立ち直りへの協力意識(男女別・年齢層別)



 無論,表2に見られる回答傾向が今回の世論調査の結果に完全に合致しているわけではなく,この点も含め厳密には質問の内容や回答の選択肢等を揃えたより精緻な調査に基づく評価が必要である点はくれぐれも留意が必要である。
(3) 直接的な更生支援への協力の意思
 次に,今回の世論調査において,協力意思がある者に対し,更に具体的な立ち直りへの協力内容について,「あなたは,犯罪や非行をした人たちの立ち直りにどのような協力をしたいと思いますか。」と質問した結果を紹介する。
 図3は質問に対する回答を男女別に見るとともに,これを年齢層別に見たものである。
 男女共に,「社会を明るくする運動に参加する」という間接的な協力に比べ,「犯罪や非行をした人たちに直接会って継続的に助言や援助をする」という直接的な協力を選択した者の割合が低い。つまり,更生支援に対する協力意思がある64%の国民のうち,直接的な支援をする意思がある国民はわずか18%にとどまるという結果となった(図4)。
 このような結果について,白書特集では,民間協力者への取材や保護司会へのアンケート調査結果などから,犯罪や非行をした者と直接関わることへの不安や抵抗感が背景にあることを指摘している。詳細は特集を参照いただくとして,本稿では,さらに一歩進んで,不安や抵抗感の具体的な中身について考察してみたい。

図3 立ち直りへの協力内容(男女別・年齢層別)


注1 内閣府の「再犯防止対策に関する特別世論調査」(平成25年8月調査)の資料に基づき法務総
    合研究所が作成したものである。
  2 「犯罪や非行をした人たちの立ち直りに協力したいと思うか」との質問に対し,「思う」又は「ど
    ちらかといえば思う」と回答した者のうち,協力したい内容として各項目を選択(複数回答によ
    る。)した者の比率である。
  3 ( )内は,各項目を選択した回答者数である。


図4 立ち直りへの協力意識と直接的な支援の意思


注 内閣府の「再犯防止対策に関する特別世論調査」(平成25年8月調査)の資料に基づき法務総合研
   究所が作成したものである。


 この点を考える上では,平成25年に内閣府が実施した第4回青少年意見募集事業(注3)の結果が示唆を与えてくれる。同調査は,全国からインターネットを通じて中学生以上30歳未満の報告員を募集し,様々なテーマについて意見募集を行うもので,同年のテーマの一つとして「犯罪や非行をした人たちの立ち直りと再犯防止について」が取り上げられた(意見提出者155人,回答率58.3%)。同調査は更生支援への協力意思について尋ねた上,さらに「協力したくない」又は「どちらかといえば協力したくない」と回答した者にはその理由を尋ねている。同調査の結果,協力したくない理由には男女差があり,男性では「どのように接すればよいか分からない」が最も高く(34.4%),女性では「自分の身に何か起きないか不安」(40.4%)が最も高かった。調査対象者を青少年に限っての結果ではあるが,何をしていいかわからないという更生支援の技術や経験の面での不安によるものと,どんなことが起こるかわからないという自らの身に降りかかるトラブルを懸念しての不安とがあることが推察できる。
 特集では,直接的な支援をする意思の有無について,「犯罪や非行をした人たちが自分の身近にいるかもしれないと思いますか。」という世論調査中の別の質問に「そう思う」と回答した者(以下「身近にいると思う者」という。)と「そう思わない」と回答した者(以下「身近にいると思わない者」という。)とに分けて見た結果を紹介している(図5)。

図5 直接会っての継続的な助言や援助の意思(男女別・身近にいると思うかどうかの意識別)


注1 内閣府の「再犯防止対策に関する特別世論調査」(平成25年8月調査)の資料に基づき法務総
    合研究所が作成したものである。
  2 「犯罪や非行をした人たちの立ち直りに協力したいと思うか」との質問に対し,「思う」又は「ど
    ちらかといえば思う」と回答した者のうち,協力したい内容として各項目を選択(複数回答によ
    る。)した者の比率である。
  3 「身近にいると思う」,「身近にいると思わない」は,「犯罪や非行をした人たちが自分の身近に
    いるかもしれないと思うか」との質問に対し,それぞれ「そう思う」又は「そうは思わない」を
    選択した者をいう。
  4 ( )内は,各項目を選択した回答者数である。


 犯罪や非行をした者が身近にいると思う者は,身近にいると思わない者と比べて,「犯罪や非行をした人たちに直接会って継続的に助言や援助をする」と回答した者の割合が高い。この結果を,前記の青少年意見募集事業の結果とあわせて考えると,身近にいると思う者は,実際に犯罪や非行をした者と接した経験を有していたり,友人・知人等から話を聞くなどしたことがあり,直接的な更生支援のイメージが浮かびやすく,漠然としたトラブルの懸念を抱きにくいという可能性が浮かんでくる。
 したがって,国民の中で新たに民間協力者や関係機関・団体等で更生支援に携わる人々の裾野を広げるためには,支援の技術や経験の不足,トラブルへの懸念等に起因する不安を少しでも緩和できるよう,広報・啓発活動(注4)や民間協力者等への支援策を拡充する必要があることが示唆される。重要なのは,漠然とした協力意思がある人々に,「私にも直接会っての支援ができるかもしれない」,「支援者が怖い思いをするわけではない」と思ってもらえるよう,犯罪や非行をした者がどのような更生支援を受けることで具体的にどう変化していくのか,支援に携わる民間協力者等を支えるためのどんな制度等があるのかを,(個人情報の保護等に十分配慮した上)実例として具体的に理解してもらうことであると考えられる(注5)

図6 直接会っての継続的な助言や援助の意思(男女別・必要な再犯防止策の内容別)


注1  内閣府の「再犯防止対策に関する特別世論調査」(平成25年8月調査)の資料に基づき法務総
    合研究所が作成したものである。
  2 「犯罪や非行をした人たちの立ち直りに協力したいと思うか」との質問に対し,「思う」又は「ど
    ちらかといえば思う」と回答した者のうち,協力したい内容として各項目を選択(複数回答によ
    る。)した者の比率である。
  3 「身近にいると思う」,「身近にいると思わない」は,「犯罪や非行をした人たちが自分の身近に
    いるかもしれないと思うか」との質問に対し,それぞれ「そう思う」又は「そうは思わない」を
    選択した者をいう。
  4 ( )内は,各項目を選択した回答者数である。


 さらに,特集では,立ち直りへの協力内容について,どのような再犯防止対策が必要と考えているかという観点と関連付けて検討を行った。図6は,直接的な支援の意思の有無を,「犯罪や非行をした人たちを立ち直らせ,再犯を防止するためには,具体的にどのようなことが必要だと思いますか。」という世論調査中の別の質問に対する回答別に分けて見たものである。
 男女共に,再犯防止対策として「犯罪や非行を地域の問題として捉え地域ぐるみで立ち直りを援助する」ことが必要と回答した者は,そうでない者と比べて,「犯罪や非行をした人たちに直接会って継続的に助言や援助をする」と回答した者の割合が高い。つまり,犯罪や非行を地域の問題として捉える意識は,自らが直接更生支援に携わろうとする意思と関係していることがうかがえる。
 実際に,白書特集のコラムの取材を行う中で,保護司等の民間協力者の中には,犯罪や非行をした者の更生支援に関わる以前から,町会やPTA など地域のボランティア活動に従事してきた人々が見受けられた。また,更生支援に取り組む先駆的な地方公共団体では,首長や職員から「犯罪や非行をした者も一人の県民・市民」といった声が聞かれた。前記の身近にいると思うかどうかという意識とも相互に関連するが,自身が居住する地域に対して責任感を持ち,我が地域のこととして更生支援を認識すること,換言すれば,「犯罪や非行をした者も同じ地域に暮らす住民である」という意識を抱いてもらうことができるかどうかが,刑事司法機関が再犯防止推進法に掲げる国民の理解と協力を得るため,より具体的には,民間協力者等として直接的な更生支援への参画を促すための鍵であると考えられる。

3 今後の課題
 本稿では,国民の意識に焦点を当てたが,広報・啓発活動等を通じ,その変化を促していく中では,ひるがえって刑事司法手続に携わる者もまた,自らの意識の在り方を振り返ってみる必要があるのではないだろうか。白書特集のコラムでは,福祉等の他の分野の関係者と接する中で,保護観察官が刑期終了後の対象者の生活により目を向けるようになった例などを紹介している。日々接する犯罪や非行をした者が刑事司法手続の期間を終え,いかに一人の住民として数か月,数年とかけて地域に溶け込んでいくのかまで視野に入れて支援を行うべきではないか,保護観察等の期間中の再犯さえなければ良いと考えてはいないかなど,矯正・保護等の職員の側においても,時に己の意識を見つめ直すことがあって良いと考える。
 次に,再犯防止施策の効果的な広報の在り方についてもさらなる検討が求められよう。例えば,白書特集で重点的に取り上げた各種の就労支援制度については,「犯罪や非行をした者」であるがゆえに優先的な雇用や支援等の対象とするという説明を対外的に行うことが一般的である。しかし,実際は一人一人,生活歴や多数回の受刑期間等による職業技能・実務経験の不足,認知や人格特性等による良好な対人関係維持の難しさ,アルコール・薬物への依存や精神障害など,個別多様な「就職及び安定就労を妨げる要因」があり,就労支援の現場では,これらニーズを意識して具体的に手当てがなされている。また,白書特集ではフィンランドにおける就労支援施策等を紹介しているが,同国の実地調査の中でも,現地の社会的企業(注6)で支援に携わるスタッフから,具体的なハンディキャップがあればその部分に手当てをするが,そうでなければ犯罪をした者も,世の多くの長期失業者と変わらない扱いをしているという話を聞くことがあった。さらに,世論調査では,犯罪や非行をした者を積極的に雇用する必要性について約4分の1の国民が「わからない」と回答し,賛否を決めかねているとの結果も示されている。国民への説明ぶりとして,単に「再犯が懸念される犯罪や非行をした者だから重点的に雇用・支援をします」というレベルに留まるのは,ある意味で彼らを「犯罪者・非行少年」と特別視する国民の意識を固定化させることにもつながらないか,あるいは,就労支援等の必要性に疑問符を抱かせるのではないか,より踏み込んで犯罪や非行をした者は様々な理由で就業上不利な立場となっている点まで言及する方が国民の理解が得られやすいのではないかといった観点は,一考の価値があるように思われる。
 最後に,白書特集でも触れている将来的な調査研究について,若干の展望を行いたい。今回,特集で行った世論調査の結果の分析では過去に実施されたデータを利用したが,将来的に,質問項目の作成等の段階から仔細に検討した上で分析まで一貫して行っていけば,より深い知見を得ることができるだろう。刑事司法等に関する世論調査は諸外国にも先例がある。例えば,カナダ矯正局は同国内外の世論調査についてのレビューを公表しており(注7),同レポートでは,@どのような制度があり,どのような処遇等が行われるか,出所者の再犯率を過大評価していないかなど,ベースとなる矯正・保護等の知識の程度により意見は変わってくること,A犯罪をした者等として想定する者の罪種等により意見が異なること(例えば,暴力犯罪や性犯罪を行った受刑者に限っては更生しないと考える人々が多い)などを指摘している。さらに,同じくカナダ矯正局の行政評価レポート(注8)では,保護観察による犯罪者の更生事例など成功した社会内処遇の結果はあまり一般に共有されておらず,こうした情報について広く社会の認知度を高め,犯罪をした者に対する国民の誤解を解いていくとともに,その社会復帰の重要性等について,カナダ矯正局と地域パートナーとが共同で公教育活動に取り組むべきであるとして,我が国にも通じる課題を指摘している。
 一方で,諸外国の知見がそのまま我が国に当てはまる訳ではない点にも留意すべきである。人口10万人当たりの刑務所在所人員(未決等を含む)は,日本とカナダ等の諸外国とでは大きな差があり(注9),刑務所出所者等が社会の中でどれだけマイノリティであるかという前提条件には相当な違いがある。さらに,犯罪への不安も国による文化差があり,例えば, 国際犯罪被害実態調査(ICVS: International Crime VictimSurvey)の結果に基づきOECD 各国を比較したデータでは,カナダ等と比べると,日本は実際の犯罪被害率に対して犯罪への不安が高いことなども分かっている(注10)。以上のような我が国に固有の事情を踏まえつつ,実際に犯罪や非行をした者と接した経験や犯罪被害に対する不安,矯正・保護等の知識の程度を問う質問,犯罪や非行をした者の罪種等で分けた質問を盛り込むなどして,更なる調査研究を実施していくことが今後の課題であると考えている。引き続き,犯罪や非行をした者の更生支援に対する国民の意識について,官民を問わず更に研究が積み重ねられることを望むものであり,今般の白書特集がその端緒となれば幸いである。

(法務総合研究所研究部室長研究官)

1 「層化2段無作為抽出法」とは,全国の地域・都市規模等により偏りなく調査対象者を抽出するための調査手法の一つである。詳細については,内閣府のホームページ(http://survey.gov-online.go.jp/h25/h25-zouki/5.html)を参照。
2 内閣府のホームページ(http://survey.gov-online.go.jp/s54/S54-12-54-19.html)を参照。なお,男女別・年齢層別の詳細な集計結果については,「更生保護事業に関する世論調査」1980,内閣総理大臣官房広報室 を参照。
3 内閣府のホームページ(http://www.youth-cao.go.jp/guidance/report_archive05.html)を参照。
4 内閣府の青少年意見募集事業において,犯罪や非行をした者の立ち直りに理解を深めてもらう手法としてどのようなものがあるかを質問したところ,男性では「学校の授業で取り上げる」が最も多く(22.0%),女性では「講演会・座談会の実施」(18.3%),次いで「ドラマ・映画化」(15.1%)が多いという結果となっており,性差があった。このような調査結果も,性別や年齢層に応じた効果的な広報・啓発活動等の方法を考える上での参考となると考えられる。
5 犯罪をした者に対する不安について,上瀬由美子,橋尚也,矢野恵美(2017),「官民協働刑務所開設による社会的包摂促進の検討」,心理学研究,第87巻第6号:579-589 では,官民協働刑務所の開設地域近隣住民の受刑者や出所者一般に対する態度等について調査・分析を行い,施設見学やメディアによる情報接触,施設外での職員等の関係者との接触の有無による施設接触が,受刑者等への受容的態度と強く関係する一方,刑事施設の存在による治安不安やリスク認知による不安との関連は(地区により統計的に有意ではあるものの)比較的弱いものであったことを共分散構造分析により示している。このような結果から,単なる刑事施設や職員等との接触増加,一般的な矯正広報による情報提供等のみでは,十分に不安が解消されないことがうかがえる。
6 「社会的企業」(social enterprise という概念の和訳)とは,事業利益を事業主や持分所有者等へ分配することよりも,福祉や地域振興,環境保全等,何らかの「社会的」な目的を実現するために用いる事業体をいう。詳細については,白書特集第7編第3章第2節2項参照。
7 Roberts, J. V. (2005). Public Opinion and Corrections: Recent Findings in Canada. Ottawa, Canada, Report for Correctional Service of Canada.
8 Correctional Service Canada (2013), “Evaluation report: community correctional operations: chapter 3: community engagement”. Ottawa, Canada.
9 OECD (2016), “Crime and prisoners”, in Society at a Glance 2016: OECD Social Indicators, OECD Publishing, Paris.
  同資料において,人口10万人当たりの刑務所在所人員は,日本が47人なのに対し,カナダは106人,OECD 各国の平均は147人,OECD 各国中で最も多い米国は698人となっている。
10 OECD (2009), “Victimisation rates”, in OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics, OECD Publishing, Paris.
  同資料に引用されているICVS の詳細については,「研究部報告41 第3回犯罪被害実態(暗数)調査」2009,法務総合研究所を参照。なお,同資料における「犯罪への不安」は,ICVS での「暗くなった後,あなたの住んでいる地域を一人で歩いているとき,どの程度安全であると感じますか」との質問に対する「やや危ない」及び「とても危ない」という回答の割合を指す。
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