日本刑事政策研究会 罪と罰
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平成29年版犯罪白書を読んで
辰野 文理
1.はじめに
 平成29年版犯罪白書は,例年とほぼ同様に,犯罪動向と犯罪者処遇の状況を扱った前半の6編と,後半の特集から構成される。各編の中身もここ数年の版と大きくは変わらず,読み手が必要とする情報を例年どおりの場所から拾うことができる。
 まず,第1編から第4編は,犯罪動向や犯罪者処遇の現状についての報告である。第5編には,昨年の特集に続き再犯・再非行が置かれ,第6編が犯罪被害者である。
 第7編は,「更生を支援する地域のネットワーク」と題し,再犯防止における民間協力と多機関連携に焦点を当てた特集が組まれている。これまで,犯罪や犯罪者の特性に注目して分析がなされることが多かったが,再犯防止対策に比重が移り,さらに「更生支援」や「地域のネットワーク」がキーワードとなってきたことがうかがえる。
 以上のように,犯罪白書は,前半のルーティン部分から犯罪に関する数値を読み取りながら,後半の特集部分において現在の刑事政策課題を知ることができる重要な資料である。一方,そこから得られる数値の動きをどのように解釈し,どう活用するかは読み手に任せられているとも言える。
 そこで,本稿では,大学の講義において,例年,参照資料として犯罪白書を活用する立場から,29年版白書について,刑法犯の動向,各種犯罪の動向,少年非行の動向,児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪,高齢者の犯罪,再犯・再非行の概況,特集の順にその内容を概観し,検討を加えることとする。

2.統計にみる犯罪の動向
 白書の第1編,第3編,第4編は,刑法犯,特別法犯,少年非行,各種犯罪の順で,犯罪の動向を記述している。これらを通じて,わが国の犯罪動向を概観する。
(1) 刑法犯の推移
 刑法犯の認知件数は,平成14年に戦後最多の件数を記録した後,減少が続いている。その理由は,刑法犯の多数を占める窃盗が減少していることにある。
 1−1−2−3図は,窃盗の認知件数の推移を,侵入窃盗,乗り物盗,非侵入窃盗別にみたものである。9年以降,非侵入窃盗の割合が高い状況が続いている。
 窃盗の認知件数が戦後最多の237万7,488件であった14年は,非侵入窃盗が126万3,759件(53.2%),乗り物盗77万5,435件(32.6%),侵入窃盗が33万8,294件(14.2%)であり,非侵入窃盗が半数以上を占めていた。同年の非侵入窃盗を手口別にみると,車上ねらい18.6%,自販機荒し7.3%,万引き5.9%,部品盗5.4%の順であった(%は窃盗に占める割合)。
 これに対し,28年は,窃盗総数の認知件数が72万3,148件であり,非侵入窃盗が37万4,497件(51.8%),乗り物盗27万2,174件(37.6%),侵入窃盗が7万6,477件(10.6%)である。非侵入窃盗が多数を占める状況は続いているが,その手口をみると,万引き15.6%,車上・部品ねらい12.2%,置引き4.7%,自動販売機ねらい1.6%の順となり変化している(%は窃盗に占める割合)。いずれの手口も減少傾向にあるものの,万引きは,横ばいで推移している。

1−1−2−3図 窃盗 認知件数の推移(手口別)


注 警察庁の統計による。


 ところで,犯罪白書を活用して,犯罪動向の推移を把握しようとするときに,白書冒頭の「凡例」に注意を払う必要がある。罪名等の定義に変更がありうる。たとえば,刑法犯の推移を追う場合,刑法犯に含まれる罪名が変化している。そして,それらを示す用語が変化している。12年版まで「刑法犯(交通関係業過を除く)」と注記されてきた統計数値が,13年版から27年版の犯罪白書においては「一般刑法犯」であらわされ,28年版からは「刑法犯」の語が用いられている。
 また,第2編の「犯罪者の処遇」においては,刑の一部の執行猶予の文字が各所にみられるようになった。これに合わせて28頁と106頁の刑事司法手続の流れ図にも刑の一部の執行猶予が組み込まれた。
(2) 各種犯罪の動向
 29年版白書の10〜11頁には,各種犯罪の20年間の推移を示すものとして,殺人,強盗,傷害等14の罪名別の図が掲載されている(1−1−2−7図)。
 大学の受講生に,いくつかの罪名を消してこの図を紹介することがある。増減等の手がかりからその罪名を推測してみるというものである。いくつかの罪名を示した上でその他を推測する方法であってもなかなか正解にはたどり着かない。罪名の持つイメージとグラフの動きが一致しないためである。たとえば,強盗や傷害,暴行などの動きに共通性がみられなかったり,脅迫と恐喝が逆の動きをしていたりする。平成14年頃までは,多くの罪名が増加傾向を示していたが,その後の動きにばらつきがある。強盗のように減少傾向が続く罪名もあれば,暴行のように高止まりしている罪名もあり,認知件数の増減が一律ではない。このこと自体が興味深いが,増減に違いがあることの確認を通じて,各犯罪の特徴やその先にある犯行者の状況にも関心を持つことになる。そのための題材として重要な資料である。
 ただし,実際には,添付のCD に収録されるデータを用いて,より長期間の図を作る作業が必要となる。長期間の図を活用することにより,法改正や制度変更の時期との符合を確認したり,長期的な動きを確認したりすることで,それぞれの罪名の特徴を見いだして理解を深めることにつながる。
(3) 少年非行の動向
 少年非行のおおまかな動向は,第3編第1章の「少年非行の動向」で知ることができる(3−1−1−1図(92頁))。同図@は,少年による刑法犯等の検挙人員・人口比の推移であり,Aは刑法犯の推移である。
 @には,危険運転致死傷・過失運転致死傷等が含まれ,平成28年の検挙人員は5万6,712人である。これまで,少年非行には,三つの大きな波がみられるとされてきた。この三つは,昭和26年,昭和39年,昭和58年をピークとする波であり,その増加の背景が分析テーマとなってきた。ところが,平成16年以降は減少傾向にあり,28年は戦後最少となっている。戦後最高を記録した昭和58年の31万7,438人と比較すると,6分の1ほどの水準にまで下がっている。
 一方,Aは,過失運転致死傷等を含まない刑法犯の検挙人員の推移であり,こちらも減少を続けている。平成28年は4万103人となり,同年の高齢者の検挙人員を下回っている(65歳以上は4万6,977人(184頁))。
 少年非行は,人口比では依然として他の年齢層よりも高い状況にあるが,検挙人員でみると,高齢者の検挙者数が他の年齢層を上回る状況となった。少年非行研究と同様に高齢者の犯罪についても研究を進める必要がある。
(4) 児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪
 虐待など身近な関係性の中で発生する犯罪が新たな章として第4編第6章にまとめられた。被害者と加害者の関係性に着目した類型ともいえる。
 同章には,児童虐待,配偶者間暴力,ストーカー等の動向を示すものとして,「児童虐待に係る事件 検挙件数」,「刑法犯 配偶者間事案の検挙件数」,「ストーカー事案の検挙件数」の推移を示す図がある。これらは,いずれも右肩上がりであり,ほぼ一貫して増加している。刑法犯の多くが減少傾向にあるのに対し,これらの事件の件数が増え続けている点が注目される。今後もその動向を注視する必要がある。
 なお,身近にかかわる人からの虐待としては,児童虐待の他にも,高齢者に対する虐待や障害者に対する虐待などがある。いずれも,被害を受けた側が被害を申告しない,あるいは申告できないことが多く,表面化しにくい。その背景には,力関係の差や生活を依存していることなどが考えられる。表面化する前の介入は難しく,発覚後も被害者の自己決定が難しいという課題もある。これらについても,今後,実態の把握が求められる。

3−1−1−1図 少年による刑法犯等 検挙人員・人口比の推移


注1 警察庁の統計,警察庁交通局の資料及び総務省統計局の人口資料による。
  2 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に20歳以上であった者は,成人として計上している。
  3 触法少年の補導人員を含む。
  4 @において,昭和45年以降は,過失運転致死傷等による触法少年を除く。
  5 @において,「少年人口比」は,10歳以上の少年10万人当たりの,「成人人口比」は,成人10万
    人当たりの,それぞれ刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等の検挙人員である。
  6 Aにおいて,平成14年から26年は,危険運転致死傷を含む。
  7 Aにおいて,「少年人口比」は,10歳以上の少年10万人当たりの,「成人人口比」は,成人10万
     人当たりの,それぞれ刑法犯検挙人員である。


(5) 高齢者の犯罪
 平成28年における刑法犯の検挙人員は22万6,376人であり,このうち65歳以上の高齢者は4万6,977人である。ここ数年,検挙人員は高止まりの状況にあるが,検挙人員総数に占める高齢者の比率は,高まっており,年齢層別の構成比をみると,65歳以上の者の構成比が4.1%(9年)から20.8%に上昇している(1−1−1−5図(6頁))。
 高齢者の検挙人員の罪名をみると,窃盗が72.3%であり,そのうちの8割は万引きである(4−8−1−3図(185頁))。高齢者の窃盗による検挙人員は,この20年間で約3.6倍となり,高齢者人口の増加をはるかに上回る勢いで増加している。万引きの検挙人員における高齢者の割合も増える傾向にあり,23年以降は高齢者の割合がもっとも高い。
 窃盗以外の罪名をみると,平成18年頃から暴行の増加が著しい。その他,強盗が徐々に増加しており,傷害も増加傾向にある(4−8−1−4図(186頁))。高齢者においてこうした暴力的な犯罪の増加が続くことが懸念される。事件報道からすると,家族への暴力,近隣や知人とのトラブル,役所の担当者への暴行などがある。どこで,誰に対してどのような暴力行為が行われているのか,関心が持たれる点である。
 4−8−2−2図は,高齢者の入所受刑者人員の推移である。刑務所内の高齢者の割合が増え続ける状況が続いている。
 高齢者犯罪の説明として,社会・経済的状況の影響,加齢の影響,コホートによるもの,施策の影響などがある。これらが複合的に関係している可能性もある。個人特性と置かれた状況による結果なのか,高齢になると犯罪率が高まるのか,今後も継続した分析と対策が必要となる。

3.再犯・再非行の概況
 平成28年版白書に特集として取り上げられた再犯・再非行関係の図表の主要なものが,引き続き,29年版の第5編「再犯・再非行」に掲載されている。
 24年7月20日,犯罪対策閣僚会議において決定された「再犯防止に向けた総合対策」は,策定後10年間の取組における数値目標として,「刑務所出所後2年以内に再び刑務所に入所する者等の割合を今後10年間で20%以上削減する」ことを掲げている。

4−8−2−2図 高齢者の入所受刑者人員(入所度数別)・高齢者率の推移(総数・女性別)


注1 矯正統計年報による。
  2 入所時の年齢による。
  3 「高齢者率」は,入所受刑者総数及び女性の入所受刑者に占める高齢者の比率をいう。


 過去5年における2年以内再入率の平均値(刑務所については20%,少年院については11%)を基準とし,これを33年までに20%以上減少させることを目指すものである。具体的には,刑務所出所者の2年以内再入率を16.0%以下とし,少年院出院者の2年以内再入率を8.8%以下とすることが目標となる。
 こうした観点から,白書第5編をみると,刑事施設からの出所受刑者の2年以内再入率は,18年以降わずかながら低下傾向にあり,27年は18.0%であった(5−2−3−9図(218頁))。出所後の2年以内は,これまで比較的再入所率が高い時期となっており,この期間における再犯を防止する対策の拡充と,その結果を継続的に把握する意味は大きい。
 これに対し,少年院出院者の再入院率は,10〜11%で推移しており大きな変化はみられない(5−2−5−4図(228頁))。再入院率の推移からみると,少年院出院者の再非行を防ぐ効果的な対策の難しさを示している。
 保護観察対象少年の再処分においても同様の傾向にあり,19年から28年までの間に保護観察が終了した少年院仮退院者の再処分率をみると18〜23%台で推移しており,大きく低下するには至っていない(229頁)。この背景に直接言及する記述はないが,保護観察終了時の就学・就労状況別再処分率の図から,無職であった者の再処分率が顕著に高いとしている。保護観察の終了時に無職の状態であることの背景要因にも関心が持たれるところである。


5−2−3−9図 出所受刑者の出所事由別再入率の推移


注1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。
  2 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放又は仮釈放の者を計
    上している。
  3 「再入率」は,各年の出所受刑者の人員に占める,出所年を1年目として,@では2年目(翌年)
    の,Aでは5年目の,それぞれ年末までに再入所した者の人員の比率をいう。


5−2−5−4図  少年院出院者 再入院率と再入院・刑事施設入所率の推移


注1 矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。
  2 「再入院率」は,各年の少年院出院者の人員に占める,出院年を1年目として,@では2年目
    (翌年)の,Aでは5年目の,それぞれ年末までに新たな少年院送致の決定により再入院した者
    の人員の比率をいう。
  3 「再入院・刑事施設入所率」は,各年の少年院出院者の人員に占める,出院年を1年目として,
    @では2年目(翌年)の,Aでは5年目の,それぞれ年末までに新たな少年院送致の決定により
    再入院した者又は受刑のため刑事施設に初めて入所した者の人員の比率をいう。なお,同一の出
    院者について,出院後,複数回再入院した場合又は再入院した後に刑事施設への入所がある場合
    には,その最初の再入院を計上している。


4.特集「更生を支援する地域のネットワーク」について
 29年版白書では,特集として「更生を支援する地域のネットワーク」と題して,再犯防止に向けた民間協力や多機関連携の状況を報告している。
 同様のテーマは,24年版白書の「刑務所出所者等の社会復帰支援」と題する特集でも取り上げられた。24年版は,「刑務所出所者等の再犯防止と改善更生は,我が国の刑事政策における現下の最重要課題である。」とし,刑務所出所者等にとって,不安定な就労や居住状況が再犯リスクとなると指摘している。そのため,刑務所出所者等の仕事や住居等の生活基盤を整えることが再犯防止対策として重要とされ,いわゆる「居場所」と「出番」の確保のための民間団体等の取組が紹介されている。
 こうした就労や住居の確保といった支援策は,矯正や更生保護の機関だけでは達成することは難しい。雇用主,アパート等の仲介者や提供者,福祉的なサポートといった地域社会の協力が必要であり,ときに長期的な関わりも重要となる。そこで,様々な立場の人々が協働的な取組を推進することが有効である。29年版白書では再び,更生に向けた民間協力を取り上げている。5年経過した時点での変化に興味が持たれるところである。
 これに関し,29年版白書では,就労関係の支援の取組について多くの頁が割かれている(314〜332頁)。とくに協力雇用主については,その数,業種,規模などの数値が図化されており,協力雇用主の量的な拡大が見て取れる(29年の協力雇用主数は24年の約1.8倍となっている)。ただし,協力雇用主に雇用されている保護観察対象者等の人員をみると,22年以降は増加していたものの,29年は前年より減少している。また,職場への定着状況が気になるところであるが,それに関係するデータは,雇用主に対して支給された刑務所出所者等就労奨励金制度の適用件数に限られる(330頁)。一方,住居の確保に関しては,自立準備ホームへの言及がある程度である。
 また,24年版白書では,特集のまとめとして,ギャンブル,買い物依存等,し癖行動や依存症に関連する問題への対応や,薬物依存症リハビリテーション施設や医療機関等との連携強化が課題とされている。これらについても,その後の動きに関心が持たれるところである。
 29年版白書においては,ギャンブル依存などの統計類は見当たらないが,薬物依存に関し,民間の薬物依存症リハビリテーション施設等に薬物依存回復訓練を委託した人員の推移について,28年度は,24年度に比べて56.5%増加しているとの報告がある(7−3−1−3図(293頁))。
 ところで,29年版白書の特集では,多くのコラムが掲載されている。ここ数年の白書において,「事例」として具体的活動が取り上げられてきたが,27年版,28年版にはいくつかのコラムがみられ,さらに29年版では,更生支援に関わる様々な公的機関や民間団体の活動が25のコラムによって紹介されている。
 その一部をあげると,保護司の活動,自治体の取組,医療機関との連携,自助グループとの連携,社会福祉士の活動,職親プロジェクトなどである。
 近年,就労支援や住居確保等に向けた取組の進展ともあいまって,民間団体の参加や協力が活発化し,関わる機関や団体も増え,官民協働の在り方も多様化してきている。コラムが取り上げる機関や団体をみると,これまでの刑事政策が扱う領域に収まらない専門性や知見が必要となりつつあることがあらためて確認される。取組が多岐に渡ることから,現状では,体系化した区分や類型化が難しいかもしれない。そうした取組を紹介する方法としてコラムが有効と思われる。
 他方,地域社会の様々な場面で刑務所出所者等が受け入れられるためには,地域住民の理解が重要となる。広く理解を求めるにはコラムを用いた説明が有効と思われるが,そのためには,さらに写真などを多く取り入れ,平易な表現を用いて,より多くの読者の目に留まるようにする必要があると考える。

5.おわりに
 以上,犯罪白書を教材として利用する立場から,その内容について,できるだけ広汎に取り上げた。
 犯罪白書は,以前に比べると格段に活用しやすくなったと感じる。一回り大きくA4版になり,資料がCD 化され,法務省のサイトから全文が閲覧できるようになった。一般の読者に基礎資料を分かりやすく提供しようとする作成者側の努力や配慮が伝わってくる。
 ところが,白書を初めて手にする大学生の感想を聞くと,たとえば,高齢犯罪の原因について簡潔な答えや結論が見当たらないと言う。受け手の求めていることと距離がある例である。
 従来,犯罪白書の役割は,一般には入手しにくい統計類を駆使して犯罪情勢を伝えることにあった。しかし,ネットの普及に伴い,犯罪白書が引用する犯罪統計や各種年報の統計が必要に応じてネット上から利用できるようになった。また,ネットがあれば知りたい答えが即座に得られると思う人が増えたことで,犯罪白書にも知りたいことの解答を求める傾向が強まったように感じる。犯罪白書の重要性は変わっていないものの,犯罪白書を利用する側のニーズは多様化していると考えられる。
 犯罪白書を講義のテキストや参考資料にあげている大学の教員は多い。その活用の仕方についても,それぞれの工夫があると思われる。そうした方々がどのように活用しているのか,どのようなニーズがあるのかを知ることは,今後の犯罪白書を考える際の手がかりになると思われる。
 最後に,犯罪白書を編纂する法務総合研究所への期待を記したい。犯罪研究については,同研究所でなければ実施できないものもある。長期間にわたる研究,犯罪生物学や脳科学等の多領域のメンバーを交えた学際的な分析,海外からの研究者を受け入れた共同研究,全国の各地域の特性を要素とした犯罪の分析など,個人研究者には過大であるテーマに取り組んでいただくことを望みたい。そこから得られた知見を還元することで,犯罪対策の有用性が高まる。そして,犯罪白書が,そうした情報を分かりやすい形で広く社会に発信する役割を担い続けることに期待したい。

(国士舘大学法学部教授)
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