日本刑事政策研究会 罪と罰
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刑務所出所者等の再犯の現状 ─平成28年版犯罪白書特集から─
高橋   哲
竹下 賀子
只野 智弘
1 はじめに
 再犯防止対策については,平成24年7月に,犯罪対策閣僚会議が「再犯防止に向けた総合対策」を策定し,対象者の特性に応じた指導及び支援の強化等を重点施策として掲げるとともに,関係諸機関の連携の下で各施策を着実に実施することとした。また,同総合対策では,刑務所出所者及び少年院出院者の出所・出院年を含む2年間における刑務所等に再入所等する者の割合(2年以内再入率)について,過去5年の平均値(刑務所については20%,少年院については11%)を基準として,33年までに20%以上減少させるという数値目標が設定された。我が国の刑事政策において,このような数値目標が導入されたのは初めてのことであり,同総合対策では,社会経済情勢等の犯罪をめぐる諸情勢の変化,施策の推進状況や目標達成状況等を踏まえ,おおむね5年後(平成29年頃)を目途に見直しを行うこととされている。
 同総合対策の見直しに当たっては,近時の再犯に関する動向を詳細に分析するとともに,これまでの取組を整理し,現段階の達成状況と残された課題について,客観的な指標を踏まえた上で検討する必要がある。また,犯罪や非行をした者といっても,犯した罪の種類,その者の年齢や境遇等,それぞれの特性は異なり,多様であるため,その特性に応じた施策を実施すべきところ,効果的な対策の策定には,犯罪者の多様な実態を適切に把握することが欠かせない。
 こうした昨今の情勢に鑑み,平成28年版犯罪白書では,同総合対策の見直しに向けた検討に資する基礎資料を提供するため,「再犯の現状と対策のいま」と題した特集を組んでいる。本特集は三つの章から構成され,第1章では,再犯の動向について各種統計資料を使って多角的な分析を行い,第2章では,検察,矯正及び更生保護の各段階において実施されている各種施策や法務総合研究所が行ってきた調査研究について,同総合対策に示されている「少年・若年者及び初入者」,「高齢者・障害者」,「女性」,「薬物依存の問題を抱える者」,「性犯罪者」,「暴力団関係者等再犯リスクの高い者」の六つの類型ごとに紹介している。第3章では,同総合対策で数値目標が定められている刑務所出所者や少年院出院者の再入所(再入院)の状況に関する知見等を整理し,今後重点を置くべき施策の方向性及び再犯防止に資する実証研究の在り方について考察を試みている。本稿では,同特集のうち,数値目標が掲げられている「再入率」に焦点を当て簡潔に紹介する。
 なお,本稿中,意見にわたる箇所は,もとより筆者らの個人的見解であるほか,用語の厳密な定義,詳細な数値,分析結果の解釈に際しての留意点に関しては同白書を参照されたい。

2 「再入率」という用語について
 再犯防止に向けた種々の対策を考える上では,まずは,刑事施設を出所した受刑者のうち,どれくらいの者が新たに犯罪を行い,再び刑事施設に戻ってくるのか,そして,その時期はいつ頃であるのかということを大まかに把握する必要がある。
 こうした実態を把握するために,平成28年版犯罪白書では「X年以内再入率」という指標を用いている。ここで,「2年以内再入率」という場合,出所した年と,その翌年の年末までに再入所した者,「5年以内再入率」という場合,出所した年を含む5年以内(出所した年から数えて5年目の年末)までに再入所した者を計上している。特定の人物を追いかけた縦断データを得られないため,犯罪白書では,出所受刑者と入所受刑者のデータを組み合わせてこれらの値を算出している。
 計算の具体例を示すと,平成26年出所受刑者の「2年以内再入率」という場合,まず,「平成26年に出所した受刑者の数」(出所事由が仮釈放又は満期釈放の者に限る。)を分母として算出する。次に,「平成26年及び同27年に刑事施設に入所した者のうち,再入者であり,かつ,前回出所年が平成26年である者(前刑出所前の余罪により,再入した者は除く。)の数」を分子として算出し,これらの比率を計算する。ここで,「平成26年に出所した受刑者」といっても,平成26年1月に出所した者もいれば,同年12月に出所した者もおり,前者では,最長でほぼ2年に近い追跡期間を確保できるが,後者では,最長でも1年と数十日の追跡期間ということになり,いわゆる「2年きっかり」を追跡した上での再入率を示しているわけではないため留意されたい。また,出所後,期間内に複数回の刑事施設への再入所がある場合には,その最初の再入所を計上している。
 なお,第5編第1章第1節「検挙」のコラム(白書210頁参照)では,再犯を論じる際によく混同されやすい「再犯者率」と「再犯率」の違いや,「再犯率」を計算したり解釈したりする際の様々な観点を紹介しているので,ご興味のある方は参照されたい。

3 出所受刑者の再入所状況
 図1(白書5-1-3-7図)は,出所受刑者の@5年以内,A10年以内,B20年以内の再入率を,「仮釈放か満期釈放か」の出所事由別に見たものである。
 ここで示した@〜Bの三つのグラフでは,対象者の出所年がそれぞれ異なる(@は平成23年,Aは平成18年,Bは平成8年の出所受刑者である。)。そのため,各年における,対象者の構成,社会経済情勢,取締状況等に影響を受けた再入率の変動がないとは言えず,その点,解釈には注意を要するが,再入率(総数)は,5年以内では38.8%,10年以内では47.6%,20年以内では56.2%となっている。@を見ると,出所受刑者の4割近くの者が5年以内に再び刑務所に戻っており,そのうちの約半数が2年以内に再び受刑していることが分かる。また,大まかな傾向として,再入率は,出所年を含む5年以内に急激に上昇するものの,その後の曲線の傾きは緩やかになり,10年を越えるとほぼ横ばいになっている様子がうかがわれる。
 また,再入所の時期について前刑罪名別に見ると,10年以内に再入所してきた者を分母とした場合,窃盗及び詐欺では,過半数の者が2年以内に再入所しているのに対し,覚せい剤取締法違反では,その割合は3割を超える程度であり,罪名による差異が見出された(白書222頁参照)。直接的な被害者がいない覚せい剤取締法違反では,一般に犯罪が発覚しにくく,発覚までに時間を要する点を考慮する必要はあるものの,窃盗及び詐欺については,出所から間もない時期における重点的な介入が必要であること,覚せい剤取締法違反については,出所後間もない時期のみならず,より息の長い継続的な支援が求められることが示唆される。

図1 出所受刑者の出所事由別再入率


注1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。
  2 前刑出所後の犯罪により再出所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放又は仮釈放の者を計
    上している。
  3 「再入率」は,@では平成23年の,Aでは18年の,Bでは8年の,各出所受刑者の人数に占め
    る,それぞれ当該出所年から27年までの各年の年末までに再出所した者の人員の比率をいう。


 ここまで示した再入率は,再入時の罪名のいかんを問わずに計上したものであるため,前刑時と再入時の罪名が必ずしも同一とは限らないが,「同一又は同種の犯罪を反復している」のか,「多岐にわたる犯罪を重ねている」のかによって,再犯防止に向けた対策の在り方は影響を受けると考えられる。そこで,平成23年に出所した受刑者のうち5年以内に再入所した者について,前刑時の罪名と再入時の罪名の関係を見たものが,図2(白書5-1-3-12図)である。

図2 5年以内再入者の再入罪名別構成比(前刑罪名別)


注1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。
  2 「5年以内再入者」は,平成23年の出所受刑者のうち,同年から27年の年末までに再出所
    した者をいう。
  3 「前刑罪名」は,前回入所したときの罪名をいう。
  4 「同一罪名」は,前刑罪名と再入罪名が同一であることをいう。
  5 ( )内は,実人員である。


 前刑時に覚せい剤取締法違反の者では再入時も覚せい剤取締法違反である者が約8割,前刑時に窃盗の者では再入時も窃盗である者が7割を超えるなど,覚せい剤取締法違反と窃盗では,同一罪名者の割合が,他の罪名と比べて顕著に高いことが分かる。さらに,前刑時の罪名が,傷害・暴行,強姦・強制わいせつ,放火,強盗,殺人であった者では,同一罪名の反復による再入者よりも,覚せい剤取締法違反又は窃盗による再入者の占める割合が高いことも読み取れる。
 続いて,「再犯防止に向けた総合対策」において数値目標として掲げられている「2年以内再入率」について検討する。
 図3(白書5-1-3-15図@)は,直近10年間における2年以内再入率の推移を見たものである。平成26年出所受刑者の再入率(総数)は18.5%であり,冒頭で紹介した総合対策の基準値である20%と比べて1.5pt 低い。平成17年出所受刑者の再入率と比べると3.2pt 低下しており,10年のスパンでは緩やかな低下傾向が認められる。出所事由別では,満期釈放者の再入率は仮釈放者のそれよりも常に高いものの,10年のスパンでは低下していることも読み取れる。

図3 出所受刑者の2年以内再入率の推移(出所事由別)


注1 図1の脚注1及び2に同じ。
  2 「2年以内再入率」は,各年の出所受刑者の人員に占める,出所年の翌年の年末までに
    再入所した者の人員の比率をいう。


 次に,再入率が全般的に低下傾向にある中で,どのような属性の者の再入率が高く,その値がどのように変化しているのかを見ていく。
 図4(白書5-1-3-16図及び5-1-3-17図)は,直近10年間における2年以内再入率の推移を,@男女別,A入所度数別,B年齢層別及びC前刑時の罪名別に見たものである。
 @の男女別では,男性の再入率が女性のそれと比べて高いが,その値は緩やかに低下していること,一方で,女性の再入率は上昇傾向にあることが分かる。
 Aの入所度数別では,入所度数が多い者ほど再入率が高いが,入所度数が2度の者と3度以上の者(再入者)ではその値が大きく低下していることが分かる。

図4 出所受刑者の2年以内再入率の推移(属性別)


注1 図1の脚注1及び2に同じ。
  2 「2年以内再入率」は,各年の出所受刑者の人員に占める,出所年の翌年の年末までに再入所
    した者の人員の比率をいう。
  3 Bの「年齢層」は,前刑出所時の年齢による。再入者の前刑出所時年齢は,再入所時の年齢及
    び前刑出所年から算出した推計値である。


 Bの年齢層別では,65歳以上の高齢者層の再入率は,近年低下傾向にあり,また,年によって変動が大きいものの,一貫して他の年齢層と比べて高いことが読み取れる。
 Cの罪名別では,近年は,窃盗と覚せい剤取締法違反の再入率が他の罪名と比べて高いこと,中でも窃盗の再入率は,低下傾向にあるものの,一貫して最も高いこと,一方で,覚せい剤取締法違反の再入率は20%前後で推移しており,他の罪名と比べて低下の幅が小さいことが分かる。
 このように属性等によって群分けして検討することで,各群の特徴が浮き彫りになるが,その一方で,細分化された群に注目すると,その相対的な規模感を見失いがちでもある。そこで,図5(白書5-1-3-14図@)は,罪名別に,出所受刑者の人員と2年以内再入率の分布を示したものである。横軸に出所受刑者の人員を,縦軸に再入率を示しており,グラフの右上に位置している窃盗と覚せい剤取締法違反は,他の主要な罪名と比べて際立って再入率が高いことに加え,出所受刑者人員も多いことが見て取れる。再入率の高さだけでなく,その規模の大きさからも,窃盗と覚せい剤取締法違反への対応の重要性が示されていると言える。
 以上,再入率を中心に出所受刑者の再入所状況について紹介したが,白書本文においては,これらのデータに加え,再入者の出所から再犯までの期間に関する分析等を含め,再入所状況について多角的に検討しているため,参照されたい。

4 少年院出院者の再入院等の状況
 本年版白書特集では,少年院出院者の再非行・再犯の実態を把握するために,「再入院率」のほか,新たに「再入院・刑事施設入所率」という指標を用いている。
 再入院率は,各年の少年院出院者人員のうち,一定の期間内に,新たな少年院送致決定により再入院した者の人員の比率をいい,有用な指標ではあるものの,「成人に達したなどの理由で少年司法制度の対象外となった者」の情報はこぼれ落ちてしまう。そこで,ある年の少年院出院者数を分母とし,その者のうち,一定期間内に,「再入院した者」に加えて,「刑事施設に初入者として入所した者」も計上し,それらを合算した人員を分子にして比率を出したものが「再入院・刑事施設入所率」である。すなわち,「再入院」を土台に「刑事施設入所」という異種の数値を積んだ,いわば二階建ての指標であると言える。無論,少年院への再入院と刑事施設への入所は,保護処分と刑事処分という性質を異にするものであり,施設収容に至るまでの過程等も異なることを踏まえて解釈する必要がある。

図5 出所受刑者人員と2年以内再入率の分布(罪名別)


注1 図1の脚注1及び2に同じ。
  2 「2年以内再入率」は,平成26年の出所受刑者の人員に占める,同年から27年の年末までに再
    入所した者の人員の比率をいう。


 図6(白書5-1-5-5図)は,平成23年の少年院出院者について,5年以内の再入院率及び再入院・刑事施設入所率を見たものである。

図6 5年以内の再入院率と再入院・刑事施設入所率


注1 矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。
  2 「再入院率」は,平成23年の少年院出院者の人数を占める,同年から27年までの各年の年末ま
    でに,新たな少年院送致の決定により
    再入院した者の人数の比率をいう。
  3 「再入院・刑事施設入所率」は,平成23年の少年院出院者の人数を占める,同年から27年まで
    の各年の年末までに,新たな少年院送致の決定により再入院した者又は受刑のため刑事施設に初
    めて入所した者の人員の比率をいう。なお,同一の出院者について,出院後,複数回再入院した場
    合又は再入院した後に刑事施設への入所がある場合には,その最初の再入院を計上している。


 出院年を含む2年以内に少年院に再入院した者の比率は11.1%であり,同様に5年以内に再入院した者の比率は15.9%であった。また,同期間内に少年院に再入院又は受刑のため刑事施設に入所した者の比率(2年以内及び5年以内再入院・刑事施設入所率)はそれぞれ11.8%,21.7%であった。
 また,図7(白書5-1-5-6図)は,最近10年間における,@2年以内の再入院率及び再入院・刑事施設入所率の推移,A5年以内の再入院率及び再入院・刑事施設入所率の推移を見たものである。2年以内再入院率は10〜11%台で,2年以内再入院・刑事施設入所率は11〜12%台で推移しており,5年以内再入院率は14〜16%台で,5年以内再入院・刑事施設入所率は21〜24%台で推移している。
 なお,男女別に見ると,少年院出院者における再入院率等の男女差は出所受刑者のそれと比べても大きく,平成23年出院者における女子の5年以内再入院率及び再入院・刑事施設入所率はそれぞれ7.4%,9.5%と,男子と比べて顕著に低い(白書245頁参照)。
 ここで,単純な比較はできないものの,少年院出院者の「再入院率」及び「再入院・刑事施設入所率」は,刑事施設出所者の「再入率」に比べ,相対的に低い水準にある。ただし,出所受刑者の2年以内再入率が緩やかな低下傾向を示しているのに対し,(下げ幅の余地が相対的に少ないことも影響しているとは考えられるが)少年院出院者の2年以内再入院率及び再入院・刑事施設入所率はほぼ横ばいの状態が続いている。

図7 再入院率と再入院・刑事施設入所率の推移


注1 矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。
  2 「再入院率」は,各年の少年院出院者の人数を占める,出院年を1年目として,@では2年目
    (翌年)の,Aでは5年目の,それぞれ年末までに新たな少年院送致の決定により再入院した者
    の人数の比率をいう。
  3 「再入院・刑事施設入所率」は,各年の少年院出院者の人数を占める,出院年を1年目として,
    @では2年目(翌年)の,Aでは5年目の,それぞれ年末までに新たな少年院送致の決定により
    再入院した者又は受刑のため刑事施設に初めて入所した者の人員の比率をいう。なお,同一の出
    院者について,出院後,複数回再入院した場合又は再入院した後に刑事施設への入所がある場合
    には,その最初の再入院を計上している。


 その他,少年院再入院者に限って,前回少年院を出院してから再入院に係る本件非行までの期間(再非行期間)を調べると,前回少年院を出院後6か月以内で約4割が,1年以内で7割近くが再非行に及んでいることから,少年院出院者についても,社会内処遇への円滑な移行,特に,出院直後における重点的な社会内処遇が重要であることがうかがわれる。

5 おわりに
 平成28年版犯罪白書の特集のうち,主として「再入率」に関する動向の概要について紹介した。犯罪白書は,犯罪状況の実態把握に資する基礎資料の提供に主眼を置いており,実務家の方々にとっては,目新しいというよりも感覚的に知っていることを裏付けるといったものが多いであろう。しかし,研究者や実務家が犯罪・非行に関する種々の問題を論じるに当たっては,その現状を正しく理解する必要があることは言うまでもなく,そのために基礎的な数字を一定の基準に則って継続的に把握していくことには相応の意義があると思われる。今回の特集が,再犯防止に関するデータブックとして広く活用され,今後の再犯防止対策の充実・強化に多少なりとも寄与することができれば幸いである。

(法務総合研究所 研究官・研究官補)
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