日本刑事政策研究会 罪と罰
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性犯罪者の実態に関する特別調査の結果について
高 橋  哲
1 はじめに
 平成27年版犯罪白書においては,国民が身近に不安を感じ,社会的関心の高い犯罪の一つである性犯罪に着目し,「性犯罪者の実態と再犯防止」と題した特集を組んでいる。本特集では,各種統計資料に基づき,強姦や強制わいせつを中心とした性犯罪の動向を分析するとともに,性犯罪者の再犯防止に向けた各種施策や取組を紹介しているが,本稿では,当所において実施した特別調査に焦点を当て,その要点を紹介する。
 なお,本稿中,意見にわたる箇所は筆者の個人的見解であるほか,読みやすさ等の観点から適宜省略して紹介していることから,用語の厳密な定義,詳細な数値,分析結果の解釈に際しての留意点に関しては同白書を参照されたい。

2 調査対象者及び調査手続
 全国において性犯罪を含む事件で懲役刑の有罪判決を受け,平成20年7月1日から同21年6月30日までの間に裁判が確定した者1,791人を対象とした。ここで,本稿中,「性犯罪」とは,強姦,強制わいせつ,わいせつ目的略取誘拐,強盗強姦及び都道府県のいわゆる迷惑防止条例で禁止されている痴漢,盗撮等とし,「性犯罪者」とは,確定判決の罪名に性犯罪が含まれる者とする。
 調査手続としては,調査の対象となった性犯罪事件に係る刑事確定記録等に基づき,対象者の基本的属性や事件の概要及び裁判内容等の調査を行ったほか,裁判確定から5年間に再び有罪の裁判が確定した者を対象に,当該再犯の内容等に関する再犯調査を行った。

3 結果の概要
 以下,(1)性犯罪者を複数の類型に分類してその特徴等を検討した結果,(2)性犯罪者の再犯の実態や再犯要因に関して検討した結果,(3)処遇プログラムの受講と再犯率の関連について検討した結果,(4)性犯罪を反復する者の犯行態様等について検討した結果,の四つに分けて簡潔に紹介する。
(1) 類型別の特徴に関する調査結果
 第6編第4章第3節(281頁〜)においては,性犯罪者を七つの類型に分類し,その類型別に,年齢層,婚姻状況,就労状況,性犯罪前科の回数,初回の性非行・性犯罪時の年齢層等の特徴を概観している。分類に当たっては,性犯罪の罪名,被害者の年齢,共犯の有無及び犯行態様によって,いずれか一つの類型に該当するようにしており,例えば,被害者に13歳未満の者を含まず,罪名に強姦を含み,共犯による犯行がある者であれば「集団強姦型」,被害者に13歳未満の者を含み,13歳未満の被害者に対する罪名に強姦を含まず,強制わいせつを含む単独犯行の者であれば「小児わいせつ型」,罪名が条例違反のみで犯行態様に痴漢を含む者であれば「痴漢型」に分類される。こうした類型別の特徴について,白書においては様々な図を掲載しているが,紙幅の都合上,ここでは,初回の性非行・性犯罪時の年齢による累積人員比率を類型別に見たグラフのみを示す。
 6−4−3−5図を見ると,(本誌においては白黒のため判別しづらいものの)集団強姦型と小児わいせつ型とでは,初回の性非行・性犯罪時の年齢の立ち上がり方が大きく異なることが見て取れる。その他,全体の傾向と比較した場合の各類型の特徴は次のとおりである。

6−4−3−5図 初回の性非行・性犯罪時の年齢による累積人員比率


注1 法務総合研究所の調査による。
  2 「累積人員比率」は,横軸の年齢までに初回の性非行・性犯罪に及んだ者の累積人員の比率をいう。


 ア 単独強姦型
 犯行時の年齢が29歳以下の者の割合が約5割と高いほか,教育程度が中学卒業の割合が半数弱を占める。前科のある者の割合は約4割であるが,性犯罪前科のある者はそのうちの約半数であり,性犯罪以外の前科のある者の割合が約2割と比較的高い。
 イ 集団強姦型
 犯行時の年齢が29歳以下の者の割合が約8割と高く,平均年齢が25.0歳と類型別では最も低い。教育程度では,中学卒業の割合が約7割と高い。また,初回の性非行・性犯罪時の年齢及び累積人員比率を見ると,他と比べて若い年齢層で急激に上昇しており,24歳までに半数の者が初回の性非行・性犯罪に及んでいる。性犯罪前科のある者の割合は2.4%と7類型中最も低い一方で,性犯罪以外の前科のある者の割合は約3割と高い。また,性非行以外の非行による保護処分歴のある者の割合も36.1%と最も高い。
 ウ 強制わいせつ型
 犯行時の年齢が「29歳以下」,「30〜39歳」,「40歳以上」の区分でそれぞれ約3割と比較的幅広い年齢層の者が犯行に及んでいる。平均年齢は36.8歳で,婚姻状況は既婚の者の割合が約4割と高い。性犯罪者の有職者率は,他の罪名の者と比べて高い傾向にあるが,中でも,有職者の割合が約8割と顕著に高い。
 エ 小児わいせつ型
 犯行時の平均年齢が41.9歳と最も高く,40歳以上の者の割合が45.1%,65歳以上の者も1割以上を占めている。教育程度は中学卒業の割合が約5割と高い。初回の性非行・性犯罪時の年齢及び累積人員比率を見ると,他と比べて緩やかに上昇し続け,34歳までに半数の者が初回の性非行・性犯罪に及び,それ以降も,各年齢層において初回の性犯罪に及ぶ者が一定数ずついる。前科のある者の割合は約4割だが,性犯罪前科のある者の割合は14.6%と低く,性犯罪以外の前科のある者の割合が23.6%と比較的高い。
 オ 小児強姦型
 犯行時の平均年齢は36.2歳で,教育程度が中学卒業の割合が56.1%と高いほかは,他と比べて目立つ特徴は認められない。性犯罪前科のある者の割合は約1割と低く,性非行による保護処分歴のある者はいない。
 カ 痴漢型
 犯行時の年齢が40歳以上の者が約半数を占め,平均年齢は41.4歳と小児わいせつ型に次いで高い。ただし,ここで注意しなければならないことは,痴漢型では,初回の性非行・性犯罪時の平均年齢が33.1歳であり,初回の犯行から今回の調査対象となった犯行時の平均年齢(41.4歳)までの経過年数が約8年もあり,他の性犯罪者類型と比べて最も長いことである。また,教育程度が大学進学の割合が約3割と高い。前科のある者の割合は9割を超え,性犯罪前科のある者の割合は85.0%と最も高く,複数回の性犯罪前科のある者の割合も約7割と最も高い。一方,保護処分歴のある者の割合は6.7%と類型別では最も低い。
 キ 盗撮型
 平均年齢は37.4歳で,婚姻状況が未婚の者の割合が約6割,教育程度では大学進学の割合が約4割と高い。性犯罪前科のある者の割合が64.9%と高く,また,複数回の性犯罪前科がある者の割合は46.8%と痴漢型に次いで高い。
(2) 再犯の実態と再犯要因に関する調査結果
 第6編第4章第4節(289頁〜)においては,特別調査の対象者の再犯に関する調査結果を紹介している。
 全対象者のうち,調査の対象となった性犯罪事件の裁判確定から5年が経過した時点において服役中等の者を除いた1,484人について,罪名は問わずいずれかの再犯を行った者の比率である全再犯率は20.7%であった。性犯罪再犯率は13.9%であり,全再犯を行った者のうちの約7割を占めていた。類型別に再犯率を見る際には,そもそも実刑に処せられた者の割合や5年経過時点における服役中の者の割合に偏りがあるほか,再犯が可能であった,すなわち社会内で再犯の機会があった期間に長短があることを考慮に入れる必要があるが,全再犯率では,痴漢型が最も高く,次いで,盗撮型,小児わいせつ型,強制わいせつ型,小児強姦型,単独強姦型の順となっており,集団強姦型が最も低い。性犯罪再犯率に限っても同様の傾向が認められる。また,性犯罪再犯に及んだ者の中でも類型によって再犯までの期間に長短がある。
 そのほか,性犯罪再犯と関連する要因を探るため,年齢,就労状況,前科,調査対象事件中の性犯罪の内容等と性犯罪再犯との関連について分析している。分析に際しては,執行猶予者と出所受刑者とでは,再犯可能期間(執行猶予者では5年,出所受刑者では3年弱),各集団に占める罪名構成,調査対象者の特性等が異なることから両者を分けて検討している。以下は,あくまで当該要因と性犯罪再犯との間の二変量の関係を検討したものではあるが,執行猶予者と出所受刑者の双方において「性非行による前歴・保護処分歴,性犯罪による前科・前歴のいずれかがあること」,「被害者に面識のない者を含むこと」,「犯行時の婚姻状況が未婚であること」と性犯罪再犯との間に有意な連関が認められた。そのほか,執行猶予者においては「初回の性非行・性犯罪時の年齢が29歳以下であること」,出所受刑者においては「犯行時に無職であること」,「(非接触型の性犯罪の一つとみなすことのできる)公然わいせつによる前科のあること」,「犯行時に執行猶予中等であること」に該当する者が,そうでない者と比べて性犯罪再犯率が有意に高いという結果が得られた。
(3) 処遇プログラムの受講と再犯率の関連について検討した結果
 第4節の最後では,処遇プログラムの受講と再犯状況の関連について検討した結果を紹介している。
 分析に際しては,まず,全対象者のうち,今回の性犯罪事件の裁判確定から5年が経過した時点において服役中の者や,本来処遇プログラムの受講対象にはなり得ない者等を除外している。その上で,処遇プログラムの受講の有無及び出所事由に着目し,三つの群,すなわち,@刑事施設における性犯罪再犯防止指導及び保護観察所における性犯罪者処遇プログラム(コア・プログラム)の双方を受講した者120人(双方受講群(仮釈放者))と,Aいずれにおいても受講していない者のうち,出所事由が仮釈放であった者64人(双方非受講群(仮釈放者)),Bいずれにおいても受講していない者のうち,出所事由が満期釈放であった者247人(双方非受講群(満期釈放者))を設定し,その3群(計431人)について再犯率を比較している。
 具体的には,刑事施設からの出所日を起算点として最長3年の範囲で再犯の有無を調べたほか,再犯がある場合には,出所日から再犯日,再犯がない場合には,出所日から調査の終了時点までの日数を対象者ごとに計上し,前記の三つの群別に,罪名を問わない再犯状況を見たものが,6−4−4−10図である。
 図中の曲線は,医学・疫学の領域で頻繁に用いられている生存曲線というものである。医学領域における死亡という事象はもとより,再犯という事象も,その発生の有無だけでなく,発生までの時間がどの程度かということが大切な指標になる。また,今回の特別調査のように,研究デザインの制約から,対象者によって社会内において追跡できた期間が様々である場合も多く,そうした場合には追跡期間も考慮した分析が望ましい。ここで,表中の数字は,各経過期間までの再犯者の累積人員を示しており,例えば,双方非受講群(満期釈放者)では,総数247人のうち,90日経過時点までに33人,720日経過時点までに74人,1,095日経過時点までに82人が,いずれかの罪名の再犯に及んでいることが分かる。調査の終了時点において,双方受講群(仮釈放者)においては120人中10人,双方非受講群(仮釈放者)においては64人中12人,双方非受講群(満期釈放者)においては247人中82人が全再犯に及んでいた。
 なお,刑事施設における性犯罪再犯防止指導は,性犯罪の再犯リスクが高いとされる受刑者を特定し,受講の優先度の高い者に実施されるよう配意されているものの,受講する受刑者の選定に当たっては,刑期の長短等様々な要因の影響を受けざるを得ない事情がある。また,保護観察所における性犯罪者処遇プログラム(コア・プログラム)も,実施対象者の選定に当たっては,保護観察期間の長短等様々な要因の影響を受けざるを得ない事情がある。したがって,各群に属する個々の対象者には,処遇プログラム受講の有無以外にも再犯と関連する要因においてそもそもの差異がある可能性を排除できないことから,ここでの分析結果は,厳密には効果検証といえるものではないことに留意されたい。

6−4−4−10図 処遇プログラム受講群別 再犯状況(全再犯)


注1 法務総合研究所の調査による。
  2 グラフ中の「+」は,調査対象事件の裁判確定から5年が経過したことなどにより
    観測を終了したことを示す。
  3 図中の「累積再犯率(推定)」は,各時点までの再犯者の累積人員と,当該時点までに
    観測中で再犯の機会があった者(調査対象事件の裁判確定から5年が経過しておらず,
    かつ,再犯のない者)の数を用いて算出している推定値のため,各群の総人員に占める
    再犯者の累積人員の比率とは一致しない。
  4 表中の「経過日数」は,刑事施設の出所日から経過した日数をいう。
  5 表中の数字は,当該時点までの再犯者の累積人員を示す。
  6 表中の( )内は,各群の実人員を,〔 〕内は,その時点での累積再犯率(推定)を示す。


(4) 性犯罪を反復する者に関する調査結果
 性犯罪を複数回行う者の中には,同様の犯行態様の性犯罪を繰り返す者もいれば,異なる犯行態様の性犯罪に及ぶ者も存在する。そこで,第6編第4章第5節(304頁〜)においては,前記7類型中,「痴漢型」「盗撮型」を除く5類型の者のうち,性犯罪前科のある者に着目し,そのうち調査のために必要な資料を入手できた232人について,その性犯罪前科に係る事件の概要及び裁判内容等に関する調査を行っている。前科の内容を見ると,性犯罪前科のみある者の割合は約6割,性犯罪前科以外の前科もある者は約4割であった。性犯罪以外の前科のうち,本調査における性犯罪の定義には該当しないものの,関連する他の犯罪として下着盗,公然わいせつ,児童福祉法違反の前科を調べたところ,極めて少数であった。こうした結果を踏まえると,性犯罪を反復する者は,必ずしも性犯罪ばかりを行っているわけではないことが示唆される。
 そのほか,第5節では,初回の性非行・性犯罪時の年齢の分布も見ている。グラフは割愛するが,232人のうち約7割の者が29歳以下に初回の性非行・性犯罪に及んでおり,初回時の年齢について,最年少は15歳であった。一方,40歳以降に初回の性犯罪を行った者は31人(13.4%)おり,初回時の年齢の最高齢は69歳であった。無論,暗数の問題があることから軽々に判断はできないが,遅発性の反復者が一定数いることがうかがわれる。また,初回の性非行・性犯罪時から今回の性犯罪事件の犯行時までの経過期間については,懲役の実刑に処せられた場合の服役期間も経過期間に含まれているものの,20年以上の者が約1割(25人)を占めている。これらの者のうち,今回の性犯罪事件より前に性犯罪により服役したことがある者は20人,その平均服役回数は2.5回であった。複数回の服役にもかかわらず長期間にわたって性犯罪を反復する者も一定数おり,逸脱した性的関心の持続性という観点から着目される。
 なお,性犯罪を繰り返す者の性犯罪事件の内容の推移を見るために,今回の性犯罪より前に2回以上の性犯罪前科のある者について,今回と同一類型の性犯罪前科のある者の割合を見ると,強制わいせつ(痴漢)型で100.0%,小児わいせつ型で84.6%と特に高かった。性犯罪前科のある者について遡及的に調べたものであることから,結果の解釈は慎重であるべきだが,前記3(1)及び(2)の結果も踏まえると,性犯罪者は必ずしも性犯罪ばかり繰り返しているわけではなく,性犯罪以外の犯罪に親和性が高い者がいること,その一方で,性犯罪を反復する者の中で見ると,同種の態様の犯行を繰り返す者が一定数おり,その多寡は類型によって異なる可能性が示唆される。

4 おわりに
 平成27年版犯罪白書の特集のうち特別調査部分の概要について簡潔に紹介した。これらの結果を踏まえて,第6編第5章の「おわりに」(312頁〜)においては,性犯罪者に対する再犯防止策等について考察を加えているので,興味のある方は参照されたい。また,犯罪白書は,実態把握に資する基礎資料の提供に主眼を置いているため,詳細かつ専門的な分析までは行っていないものの,今後は,例えば,時間経過に伴う性犯罪の犯行態様の同一性や変化の様相とそれらを規定する要因の検討,介入による動的リスク要因の変化と再犯との関係についての詳細な検討,群間のベースライン特性を十分に調整した上でのプログラムの構成要素と再犯との関連の検討といった研究の進展が望まれる。
 最後に,性犯罪は,被害者の人格や尊厳を著しく侵害する犯罪であり,暗数も多いとされていることから,その再犯防止を図ることは私たち実務家にとって極めて重要な課題であり,本調査の結果が,性犯罪者に対する再犯防止対策を考える上での一助となることを期待する。
(法務総合研究所室長研究官)



1)本稿は,日本犯罪社会学会第42回大会において口頭発表したものに加筆修正を施したものである。
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