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平成25年版犯罪白書特集
「グローバル化と刑事政策」
グローバル化と犯罪の動向
久米 輝幸
1 はじめに

平成25年犯罪白書では,特集の一つとして,グローバル化に伴う各種犯罪の動向や外国人犯罪者の現状とそれらへの対応について,関連する統計等を示しつつ分析している。本稿では,主に外国人犯罪者の動向を中心に出入国管理における近年の取組を含め,その概要を紹介する。なお,意見にわたる部分については,筆者の私見である。

2 外国人の入国・在留状況等

平成24年の外国人新規入国者数は,約755万人であり,元年(約246万人)と比べ,約3倍に達している。24年入国者の在留資格は,96.0%が「短期滞在」である。他方,中長期的に在留する外国人数の推移を見ると,24年の在留外国人数は,約203万人(総人口比1.59%)であり,元年(外国人登録者数)の約98万人(総人口比0.80%)と比べ,約2倍に増加している(図1)。

図1 外国人登録者・在留外国人数・我が国総人口に対する比率の推移



平成24年末現在の在留外国人の国籍等別構成比を見ると,図2のとおりである。 在留資格等別構成比の変化を見たものが,図3である。永住者が平成24年には30.7%を占め,4年(3.5%)と比べ著しく上昇している。


図2 在留外国人数の国籍等別構成比




図3 外国人登録者・在留外国人の在留資格等別構成比



決められた在留期間を経過して本邦に残留する不法残留者数は,平成5年の約30万人をピークに減少し続け,25年1月は約6万人となっている(図4)。

図4 不法残留者数の推移



3 国際的・越境的な側面のある犯罪の動向

税関が摘発等した覚せい剤(覚せい剤原料を含む。)密輸入事犯について,最近10年間の摘発件数及び押収量の推移(図5)を見ると,おおむね増加傾向にある。

図5 覚せい剤密輸入事犯 摘発件数・押収量の推移



また,その仕出地は,アジアの比率が相応の割合を占めて高い一方で,中南米,欧州及びアフリカの占める割合が上昇し,仕出地の地域が拡散しつつあることがうかがわれる(図6)。


図6 覚せい剤密輸入事犯における仕出地の構成比の推移




犯罪を助長し,又は容易にする基盤(犯罪インフラ)に関する犯罪のうち,外国人に係る特有のものの検挙人員・検挙件数は,表1のとおりである。偽装結婚事犯の検挙人員は,300人台から500人台で推移しており,そのうち日本人以外の者の国籍等を見ると,平成24年では,中国(台湾及び香港等を除く。)が123人と最も多く,次いで,フィリピンの49人であった。



表1 犯罪インフラ事犯 検挙人員・検挙件数


4 来日外国人犯罪者の動向

(1)一般刑法犯全体
図7は,特別永住者や永住者等を含まない「来日外国人」による一般刑法犯の検挙件数及び検挙人員の推移(平成元年以降)を見るとともに,一般刑法犯全体の検挙件数(総検挙件数)又は検挙人員(総検挙人員)に占める来日外国人の検挙件数又は検挙人員の各比率(来日外国人比)の推移を見たものである。来日外国人の検挙件数は平成17年をピークに減少し続け,検挙人員も16年をピークに減少傾向にある。総検挙件数に占める来日外国人の比率も17年をピークに低下し続けているが,総検挙人員に占める来日外国人の比率は,過去20年間を通じて大きな変動はなく,おおむね2%前後で推移している。


図7 来日外国人による一般刑法犯 検挙件数・検挙人員・来日外国人比の推移




平成14年及び24年における来日外国人による一般刑法犯検挙件数の罪名別構成比を見ると,図8@のとおりである。いずれの年も窃盗が圧倒的に高い比率を占めているが,24年は,14年と比べ,窃盗の比率が13.4pt低下し,傷害・暴行の比率が5.4pt上昇している。


図8 来日外国人による一般刑法犯 検挙件数の罪名別・国籍等別構成比




図8Aは,平成14年及び24年における来日外国人による一般刑法犯検挙件数の国籍等別構成比を見たものである。いずれも,地域別ではアジアが,国籍等別では中国(台湾及び香港等を除く。)がそれぞれ最も高い割合を占めている点に変わりはないが,24年は,14年と比べ,ベトナム,韓国及びフィリピンの占める割合が上昇している一方で,ブラジルが約2割から1割弱に低下し,14年では2割近くを占めていたトルコが24年には1%にも満たないなど,国籍等によっては変動が認められる。
来日外国人による一般刑法犯検挙人員の在留資格等別構成比の推移(平成10年以降)は,図9のとおりである。12年から正規の在留資格を有する者の占める比率が上昇し,20年以降は9割以上が正規滞在者である。また,「日本人の配偶者等」を含む「その他」の正規滞在者の比率が上昇傾向にあることが特徴的である。なお,「日本人の配偶者等」の検挙人員を把握し得る21年以降では,いずれの年も「その他」の正規滞在者のうち約半数が「日本人の配偶者等」の者であった。


図9 来日外国人による一般刑法犯 検挙人員の在留資格等別構成比の推移




(2)特別法犯
来日外国人による特別法犯(交通法令違反を除く。)の送致件数及び送致人員は,いずれも平成16年に過去最多数を記録した後,減少し続けており,総送致件数と総送致人員に対する各来日外国人比はいずれも低下している。 来日外国人による特別法犯の送致件数について,主な罪名・罪種ごとの推移(最近10年間)を見ると,図10のとおりである。

図10 来日外国人による入管法違反等 送致件数の推移




(3)外国人少年事件の処理
図11@は,検察庁における外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員(一般刑法犯及び道交違反を除く特別法犯に限る。)の推移(最近20年間)を来日外国人犯罪少年とその他の外国人犯罪少年の別に見たものであり,同図AからCは, これを近年において来日外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員が多い3か国について見たものである。来日外国人犯罪少年もその他の外国人犯罪少年も減少傾向にある。他方,外国人犯罪少年全体に占める来日外国人犯罪少年の比率は,最近20年間は大きく上昇しており, 平成20年以降は6割以上で推移している。来日外国人犯罪少年では,13年から20年までブラジルが最も多かったが,21年以降は減少傾向にあり,24年はフィリピンと同程度であった。


図11 外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員の推移



(4)矯正施設入所者
各年の日本人と異なる処遇を必要とするF指標入所受刑者人員,そのうち女子及び犯罪傾向が進んでいる者に指定されるB指標の者が占める割合(女子比及びB指標比)の推移(最近20年間)を見ると,図12のとおりである。F指標入所受刑者は,平成10年から急増し,16年に1,690人まで増加した後,減少を続け,24年は16年と比べ67.5%減となった。日本人を含む入所受刑者全体も,最近減少を続けているが,これに占めるF指標入所受刑者の割合は,24年は2.2%と,ピーク時の16年(5.3%)から大きく低下しており,受刑者全体の減少を上回る勢いで減少していることを示している。なお,F指標入所受刑者人員は,男女共に減少傾向にあるものの,女子比は,上昇傾向にある上,24年は17.7%と入所受刑者全体における女子比(9.0%)より8.7pt高い。B指標比は,17年から上昇を続けているが,F指標入所受刑者の再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)が同年から上昇傾向にあることと関連するものとも考えられる。



図12 F指標入所受刑者人員・女子比・B指標比の推移




平成24年におけるF指標入所受刑者の国籍等を見ると,中国(128人),ベトナム(68人),ブラジル(63人),イラン(36人),韓国・朝鮮とペルー(各27人)の順に多く,地域別ではアジアが約6割を占め,次いで南アメリカ(約2割)となっている。この構成比を14年と比較して見ると,図13のとおりである。国籍等別では,14年も24年も中国が最も多かったが,全体に占める割合は41.0%から23.3%と大幅に低下している。地域別では,アジアが占める比率は19.2pt低下している反面,ヨーロッパが9.5pt,アフリカが4.5pt上昇している。また,順位変動は見られるものの,構成比が高い順から6か国等は変わらない一方,これら6か国等が全体に占める割合は79.1%から63.6%へと約16pt低下している。これらのことから,10年前と比べ,F指標入所受刑者の国籍等の多様化,分散化がうかがえる。

図13 F指標入所受刑者 国籍等別構成比



(5)外国人の再犯
図14は,外国人入所受刑者について,処分歴別の人員,有前科者率(入所受刑者人員に占める有前科者の比率をいう。なお,有前科者は,懲役・禁錮以上の刑(執行猶予を含む。)に処せられたことがある者に限る。)及び再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)の推移(平成8年以降)を見たものである。外国人入所受刑者の人員は,17年をピークに翌年から減少している。有前科者及び再入者の人員も,18年以降減少傾向にあるが,外国人入所受刑者の人員が大きく減少したことに伴い,有前科者率は15年(40.2%)を底に,再入者率は16年(19.3%)を底にいずれも上昇傾向にあり,24年には有前科者率は61.4%,再入者率は36.0%となった。


図14 外国人入所受刑者人員(処分歴別)・有前科者率・再入者率の推移



5 出入国管理等における対応

(1)出入国管理の強化
グローバル化や国家間の賃金格差等を背景に外国人入国者数が増加し,これとともに増大した不法滞在者に対処するため,累次にわたり様々な出入国管理上の施策が実施されてきた。
「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」(平成15年12月策定)では,犯罪の温床となる不法滞在者を平成16年から20年までの5年間で半減させる目標が示された。
これを受けて,平成16年に入管法が改正され,不法残留や不法就労助長等の罪に係る法定刑の引上げ及び二度以上退去強制された者についての上陸拒否期間の伸長がなされたほか,不正の手段により入国するなどした外国人や在留資格に該当する活動を行っていない外国人の在留資格を取り消すことのできる在留資格取消制度が導入された。その一方で,入国管理局への自主的な出頭を促すため,不法残留者のうち一定の条件を満たし,出国を希望して自ら出頭した者については,身柄を収容せず簡易な手続により出国させた上,出国後の上陸拒否期間を短縮する出国命令制度が導入された。
また,平成17年に事前旅客情報システム(APIS: Advance Passenger Information System)が導入され,航空機が我が国に到着する前に,航空会社から提供される旅客の身分事項等に関する情報を入国管理局等保有の要注意人物に関するデータベースと照合することにより,事前に要注意人物の到着に備えた体制を確保して厳正な上陸審査等を行えるようになった。
さらに,平成19年11月,特別永住者等を除く外国人に対し,上陸審査時に個人識別情報(指紋と顔写真)の提供が義務付けられ,入国管理局が保有する情報との照合により,偽変造旅券や他人名義旅券を利用して不法入国しようとする外国人テロリストや退去強制歴を有する者等を水際で発見し入国を阻止することが容易となった。個人識別情報の活用による退去命令者及び退去強制者は,24年5月末現在で累計約3,400人である。
こうした施策に加え,入国管理局と警察等が連携を強化して不法滞在者の合同摘発を推進したほか,司法警察員が不法入国等の入管法70条の罪の他に嫌疑のない被疑者を検察官に送致せず入国警備官に引き渡す同法65条の運用拡大,入国・在留審査の厳格化や不法就労防止のための広報活動,入国審査官や入国警備官の増員による出入国管理体制の強化等が実施された。
これらの取組の結果,平成16年当時,約25万人いたと見られる不法滞在者は,21年1月には約13万人に減少して,当初の半減計画はほぼ達成され,その後も不法残留者は減少し続けている。

(2)新しい在留管理制度
平成24年7月,外国人の適正な在留の確保に資するため,法務大臣が,我が国に在留資格をもって中長期間在留する外国人を対象として,その在留状況を継続的に把握する新しい在留管理制度が導入され,これに伴って,従前の外国人登録制度は廃止された。従前の外国人登録制度では,不法滞在者であっても申請があれば外国人登録が行われ,外国人登録証明書が交付されていたことから,同証明書が銀行口座の開設や携帯電話の契約等に使用され,不法滞在者の在留継続を容易にしてきたとの指摘がなされていた。また,近年になり,新たに入国し在留する外国人が増加するに伴い,正確な外国人登録の申請を行わなかったり,申請をせずに頻繁に転居する外国人が少なからず現れるようになった結果,市町村において,外国人の居住実態や外国人児童の就学実態等を正確に把握することが困難となり,外国人に対する地方公共団体における適切な行政サービスの提供という観点からも問題が生じていた。さらに,在留期間の途中で,在留資格に影響する事情の変更(例えば,就労活動に係る在留資格を有する者の退職,留学の在留資格を有する者の退学,日本人の配偶者等や永住者の配偶者等の在留資格を有する者の離婚等)があった場合に,当該外国人にその旨届け出る義務がなかったため,在留資格と在留状況が一致しない状態が継続してしまうなどの適切な在留管理を図る上での問題も生じていた。
新しい在留管理制度では,適法に我が国に中長期間在留する外国人に対し,上陸許可,在留期間更新許可,在留資格変更許可等に伴い,在留カードが交付される。在留カードを所持する中長期在留者が市町村において住居地の届出等を行うと,その情報は市町村長から法務大臣に通知される。また市町村では,在留資格や在留期間満了日等の情報が記載された住民票が作成される。その後,在留資格変更許可や在留期間更新許可等がなされた場合には,それらの情報が法務大臣から市町村長へ通知され,当該外国人の住民票に反映されることで,外国人住民に対する各種行政サービスの提供にも活用されている。
また,同制度では,在留期間中に,例えば,就労活動に係る在留資格を有する者の退職,留学の在留資格を有する者の退学等の特定の事項に変更があった場合,外国人本人やその留学先学校,就労先企業等の所属機関において,当該変更事項を地方入国管理局へ届け出る制度が導入されるとともに,届出に係る情報の正確性を確保するため,入国審査官,入国警備官等が届出事項について事実の調査をすることができることとなり,法務大臣が外国人の在留状況を正確かつ継続的に把握することができるようになった。中長期在留者が,住居地や就労先等に関し虚偽の届出をした場合や一定期間内に届出をしない場合は罰則の対象となるほか,正当な理由がなく定められた期間内に住居地の届出をしない場合や虚偽の住居地を届け出た場合は在留資格取消しの対象となる。「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」(平成20年12月策定)においても,新しい在留管理制度の効果的な運用を通じ,外国人の在留実態を確実かつ迅速に把握し,その情報を活用して,在留状況に疑義がある者に対しては調査を行い,不法滞在者・偽装滞在者等の摘発や在留資格の取消し等を積極的に実施することとしている。

6 刑事司法における国際協力

人,物,金,情報等の国際的な流動の活発化は,犯罪の証拠や犯罪者等の容易な越境化をももたらすものであり,証拠収集を目的とする捜査協力等の手続面の国際協力を推進する必要がある。
我が国が外国との間で捜査共助を要請し,又は要請を受託した件数(最近10年間)は,表2のとおりである。刑事共助条約締約国との間では,我が国から外国に対して捜査共助を要請した案件と我が国が外国から捜査共助の要請を受託した案件のいずれについても増加している。



表2 捜査共助件数


そのほか,国際刑事警察機構(ICPO: International Criminal Police Organization)経由での国際協力件数等(最近10年間)については,表3のとおりであり,情報交換等が活発化している。



表3 ICPO経由の国際協力件数


7 おわりに

前記のとおり,最近10年程度を見る限り,来日外国人による犯罪は新規入国者や在留者の増加に呼応することなく減少を続けており,来日外国人による犯罪情勢の悪化は招いていないと認められる。
今後もグローバル化の流れは続き,アジアを始めとする諸外国・地域の経済発展ともあいまって我が国を訪れ,在留する外国人は増加傾向をたどると思われ,来日外国人犯罪の動向を注視していく必要がある。この点,「来日外国人」の犯罪に係る統計には,中長期在留者の中で最も多くを占める「永住者」の在留資格の者が除外されているものが多く,「永住者」に係る犯罪の動向を把握することが困難となっていることは,今後の課題と言えよう。
また,不法残留者は減少しているものの,偽装結婚事犯の推移を見ても分かるとおり,滞在目的を偽るなどして在留資格を得て在留している偽装滞在者は,相当数に上ると推察される。国民が大多数の善良な外国人に対する無用な警戒感を抱くことなく外国人と共生できる社会の実現に寄与するためにも,入国管理当局においては,引き続き新しい在留管理制度等によって得られる情報を分析・活用することによって効果的に偽装滞在者や不法滞在者へ対応していくことが重要であろう。
(法務省入国管理局総務課企画室政策係長(前法務総合研究所事務官))
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