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最近の犯罪動向と犯罪者処遇
─平成24年版犯罪白書から─
松田 芳政
 はじめに

 犯罪白書は,犯罪の防止と犯罪者の改善更生を軸とした刑事政策の策定やその実現に資する目的から,犯罪動向と犯罪者処遇の実情を分析し,報告するとともに,刑事政策上特に重要な課題となっている事柄について特集を組み,掘り下げて紹介している。平成24年版白書では,統計資料等に基づいて最近の犯罪動向等を概観しているほか,「刑務所出所者等の社会復帰支援」と題した特集を組んでいるが,本稿では,このうち,最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情について,要点を紹介する。

1  最近の犯罪動向

(1) 刑法犯
ア 刑法犯の認知件数
 平成23年における刑法犯の認知件数は,213万9,725件(前年比13万1,584件(5.8%)減)であり,このうち,一般刑法犯(刑法犯全体から道路上の交通事故に係る自動車運転過失致死傷,業務上過失致死傷及び重過失致死傷(以下「自動車運転過失致死傷等」という。)を除いたもの)の認知件数は,148万1,098件(前年比10万5,091件(6.6%)減)であった。刑法犯の認知件数は,8年以降毎年戦後最多を更新し,14年には約369万件を記録したが,その後は,刑法犯の過半数を占める窃盗の認知件数が毎年減少するようになったことが大きな要因となって,減少に転じている。また,17年からは,窃盗を除く一般刑法犯の認知件数も減少傾向にあるが,戦後を通じて見ると,その認知件数は,4年の約1.6倍あり,依然として高い水準にあると言える(1図,2図参照)。なお,23年における一般刑法犯の認知件数においては,窃盗が76.5%と最も多く,次いで,器物損壊,横領(遺失物等横領を含む。),詐欺,暴行の順であった。

1図 刑法犯 認知件数・検挙人員・検挙率の推移



2図 一般刑法犯(窃盗を除く) 認知件数・検挙件数・検挙率の推移



イ 刑法犯の検挙人員と検挙率
 刑法犯の検挙人員は,平成10年に100万人を超え,11年から毎年戦後最多を更新し,16年に128万9,416人を記録した後,17年から減少に転じて,23年は98万6,068人(前年比4万3,049人(4.2%)減)と100万人を下回った。罪名では,自動車運転過失致死傷等が検挙人員の7割近くを占めていた。また,このうち,一般刑法犯の検挙人員は,30万5,951人(前年比1万7,005人(5.3%)減)であった。
 女子の一般刑法犯の検挙人員は,平成4年の5万2,000人台を底として増加し,17年には8万4,175人と戦後最多を記録したが,18年から再び減少に転じ,23年は6万5,631人(前年比3,861人(5.6%)減)であった。
 検挙率については,かつて刑法犯総数で70%前後で推移していたが,昭和63年から低下傾向となり,認知件数の急増に検挙が追い付かずに更に低下し,平成13年には,刑法犯総数で38.8%,一般刑法犯で19.8%と戦後最低を記録した。しかし,14年から上昇に転じ,18年以降は,横ばい(刑法犯総数で50.9〜52.4%)で推移し,23年は,刑法犯総数で52.4%(前年比0.3pt上昇),一般刑法犯で31.3%(同0.1pt低下)であった。
ウ 刑法犯における主要罪名別認知件数及び検挙率
 殺人の認知件数は,長期的にはおおむね横ばい傾向にあるが,平成16年以降はわずかながら減少傾向にあり,23年は1,051件(前年比16件(1.5%)減)であった。検挙率は,安定して高い水準(23年は97.9%)にある。
 強盗の認知件数は,平成15年に昭和20年代後半以降で最多の7,664件を記録した後,平成16年から減少傾向にあり,23年は3,673件(前年比356件(8.8%)減)であった。検挙率は,17年から上昇傾向にあり,23年は64.9%(同2.5pt上昇)であった。
 強姦の認知件数は,平成9年から増加傾向を示し,15年には2,472件を記録したが,16年から減少し,23年は1,185件(前年比104件(8.1%)減)であった。検挙率は,10年から低下し,14年に62.3%と戦後最低を記録したが,15年以降は回復傾向にあり,23年は83.8%(同1.3pt上昇)であった。
 窃盗については,平成7年から13年まで,認知件数の増加と検挙率の低下が続いていたが,最近は,状況の悪化に歯止めが掛かっている。具体的には,認知件数は,14年に約238万件と戦後最多を記録したが,その後は毎年減少し,23年は,113万3,127件となり,14年と比べて約124万件の減少となった。検挙率は,14年から21年(27.9%)まで毎年上昇し,23年は,27.0%と若干低下しているものの,戦後最低であった13年と比べて11.3pt高い。また,23年における窃盗の認知件数の手口別構成比を見ると,自転車盗(29.8%),万引き(12.5%),車上ねらい(9.9%)の順に多い。
 詐欺の認知件数は,平成14年から毎年大幅に増加し続け,17年に昭和35年以降で最多の8万5,596件を記録した後,平成18年から減少に転じ,23年は3万4,602件(前年比2,914件(7.8%)減)であった。検挙率は,9年から低下し続け,16年には32.1%と戦後最低を記録したが,17年から上昇に転じ,21年以降は60%を超え,23年は64.1%(同2.3pt低下)であった。近時の詐欺の急増要因の一つは,振り込め詐欺の多発にあるところ,振り込め詐欺(恐喝)の認知件数及び被害総額は,21年に大きく減少(前年比でそれぞれ64.2%,65.3%減)する一方,検挙件数は増大(同28.8%増)し,検挙率も大きく上昇した。23年は,認知件数が6,233件であり,前年より6.1%減少したが,被害総額は約110億1,958万円と前年より34.2%増加し,検挙率は38.8%と前年より39.4pt低下した。
(2) 特別法犯
 特別法犯の検察庁新規受理人員について,近年は減少傾向にあり,平成23年は51万7,138人(前年比4万1,041人(7.4%)減)であった。このうち,毎年道交違反(道路交通法違反及び自動車の保管場所の確保等に関する法律違反)が特別法犯の多くを占めており,23年も全体の約81%が道交違反であったが,その道交違反の検察庁新規受理人員については,10年間で52.4%減少した。
 道交違反を除く特別法犯においても,平成20年から減少傾向にあり,23年は9万6,779人(前年比7.7%減)であった(3図参照)。罪種別では,覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反等の薬物関係(24.8%),軽犯罪法違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反等の保安関係(18.0%)の構成比が高い。

3図 特別法犯 検察庁新規受理人員の推移




2  犯罪者の処遇

(1) 検察
 平成23年における検察庁終局処理人員(少年事件を含む。)は,148万7,266人(前年比9万103人(5.7%)減)であり,その内訳は,公判請求10万1,755人,略式命令請求37万2,370人,起訴猶予81万344人,その他の不起訴6万9,943人,家庭裁判所送致13万2,854人であった。公判請求人員は,7年から毎年増加していたが,17年から減少に転じ,23年も前年より7,817人(7.1%)減少した(4図参照)。

4図 検察庁終局処理人員の処理区分別構成比・公判請求人員等の推移



(2) 裁判
 裁判確定人員は,平成12年(98万6,914人)から毎年減少し,23年は43万2,050人(前年比8.7%減)と10年間で半減しているが,その減少は,道交違反の人員の減少によるところが大きい。同年の無罪確定者は,77人であり,裁判確定人員総数の0.02%であった。
 平成23年における通常第一審の終局処理人員を罪名別で見ると,地方裁判所では,窃盗が1万2,102人(21.2%)と最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反1万830人(19.0%),道交違反6,900人(12.1%),自動車運転過失致死傷・業過(自動車運転過失致死傷,業務上過失致死傷及び重過失致死傷)5,234人(9.2%)の順であった。簡易裁判所では,窃盗が7,332人(82.7%)と最も多く,次いで,傷害267人(3.0%),住居侵入251人(2.8%),横領(遺失物等横領を含む。)226人(2.5%)の順であった(5表参照)。

5表 通常第一審における終局処理人員(罪名別・裁判内容別)



 科刑状況を見ると,最近10年間における死刑の言渡しは,殺人(自殺関与・同意殺人・予備を除く。平成23年の人員は3人)又は強盗致死(強盗殺人を含む。同7人)に限られている。23年における無期懲役言渡人員は,殺人で9人(同罪の有罪人員に占める比率は2.4%),強盗致死傷(強盗殺人を含む。)・強盗強姦では18人(同4.4%)であった。そのほか,無期懲役の言渡しを受けた者は,組織的犯罪処罰法違反(組織的な殺人)3人であった。
 裁判員制度の実施状況を見ると,平成23年における裁判員裁判対象事件の通常第一審の新規受理人員は,1,790人であり,罪名別では,強盗致傷(延べ411人)が最も多く,次いで,殺人(同370人),覚せい剤取締法違反(同173人),現住建造物等放火及び傷害致死(同各167人)の順であった。通常第一審で終局判決に至った裁判員裁判対象事件の開廷回数は,大多数が5回以下であり,3回以下で41.0%を占め,平均は4.1回であった。また,裁判員裁判対象事件について,23年に通常第一審で有罪判決を受けた者の科刑状況は,死刑9人,無期懲役24人,有期懲役1,481人であり,そのうち執行猶予付きのものは240人(単純執行猶予が104人,保護観察付執行猶予が136人)であった。
(3) 矯正
 刑事施設の年末収容人員は,平成5年から毎年増加し続け,18年に昭和31年以降で最多となる8万1,255人を記録したが,平成19年から減少に転じ,23年末現在は,6万9,876人(労役場留置者978人を含む。前年比4.2%減)であった(6図参照)。

6図 刑事施設の収容人員・人口比の推移



 収容率(年末収容人員の収容定員に対する比率)は,平成5年から14年に大幅に上昇したが,17年から毎年低下し続けている。23年末現在において,収容定員が9万547人(このうち既決の収容定員は7万2,434人)であるところ,収容率は,77.2%(既決85.7%,未決43.0%)であり,収容人員が収容定員を超えている刑事施設(本所に限る。)は,77庁中6庁(7.8%)であった。女子については,収容率は19年以降おおむね横ばいであったが,23年は,収容棟の増設による女子受刑者定員の拡大がなされたこともあって,若干低下し,同年末現在において90.6%(既決108.7%,未決40.3%)である。しかし,既決については,収容定員を約1割上回る状態が続いている。また,刑事施設の職員一人当たりの被収容者負担率(刑事施設全体の一日平均収容人員を職員定員で除した数値)は,10年の3.04から18年に4.48まで上昇し,23年も3.68と高い水準にある。
 入所受刑者(裁判が確定し,その執行を受けるため,各年中に新たに入所するなどした受刑者)の人員は,平成4年に戦後最少(2万864人)を記録した後,増加し続けていたが,19年から減少に転じ,23年は2万5,499人(前年比5.8%減)であった。
 平成23年の入所受刑者の罪名別構成比を男女別に見ると,男子では,窃盗(33.5%)の構成比が最も高く,次いで,覚せい剤取締法違反(24.4%),詐欺(7.5%),傷害と道路交通法違反(各5.3%)の順であった。一方,女子では,覚せい剤取締法違反(39.7%)が最も高く,次いで,窃盗(39.4%),詐欺(5.2%),殺人(2.0%)の順であった(7図参照)。

7図 入所受刑者の罪名別構成比(男女別)



(4) 更生保護
 仮釈放審理を開始した人員は,受刑者の増加に伴い,平成8年から増加傾向にあり,19年において1万8,128人であったが,20年から4年連続で減少し,23年は1万6,095人(前年比0.6%減)であった。仮釈放率(仮釈放により出所した者と満期釈放により出所した者の合計に占める前者の比率)は,17年から6年連続で低下していたが,23年は51.2%(前年比2.1pt上昇)に上昇した(8図参照)。これを男女別に見ると,男子が49.6%,女子が70.3%であった。また,仮釈放の許可決定があった定期刑受刑者について,刑の執行率(執行すべき刑期に対する出所するまでの執行期間の比率)の構成比を見ると,近年,刑の執行率が低い段階で仮釈放が許される者の構成比は,低下傾向にある。

8図 出所受刑者人員・仮釈放率の推移



 仮釈放者の保護観察開始人員は,平成17年からやや減少傾向にあったが,23年は若干増加し,1万4,620人であった。保護観察付執行猶予者は,13年から減少傾向にあり,23年は3,398人であった。保護観察率(執行猶予言渡人員に占める保護観察付執行猶予言渡人員の比率)は,昭和38年の20.6%を最高に,以後,上昇と低下を繰り返しながら,ほぼ同水準で推移していたが,50年代後半から低下傾向にあり,平成20年には8.3%にまで低下したものの,21年に上昇に転じ,23年は9.2%(前年比0.1pt増)であった。
 平成23年における保護観察終了人員の終了事由を見ると,仮釈放者の95.3%,保護観察付執行猶予者の70.7%が,期間満了で保護観察を終了している。他方,取消しで終了した者は,仮釈放者(仮釈放の取消し)で4.2%(619人)であり,保護観察付執行猶予者(執行猶予の取消し)では26.3%(1,012人)であった。

3  各種犯罪の動向

(1) 外国人犯罪者
 来日外国人による一般刑法犯の検挙件数は,最近では,平成14年から急増し,17年には過去最多となったが,その後,減少に転じ,23年は1万2,582人(前年比10.3%減)であった。その罪名別構成比を見ると,窃盗が73.2%を占めているが,その検挙件数は18年から減少し,23年は9,210件(前年比12.1%減)であった。他方,傷害・暴行の検挙件数は,近年増加傾向にあり,23年は794件であり,14年と比較して約1.5倍になっている。
 来日外国人による特別法犯(交通法令違反を除く。)の送致件数は,平成16年に過去最多を記録した後,減少に転じ,23年は4,690件(前年比18.9%減)であった。また,その送致事件を罪名別に見ると,入管法違反の構成比が圧倒的に高い(23年は2,819件(前年比23.2%減))。
 平成23年における来日外国人被疑事件(一般刑法犯及び道交違反を除く特別法犯に限る。)の検察庁新規受理人員の国籍等別構成比を見ると,中国(香港及び台湾を含む。)(37.2%),韓国・朝鮮(14.2%),フィリピン(9.7%),ベトナム(6.8%),ブラジル(6.7%)の順であった。
(2) 暴力団犯罪者
 暴力団構成員等(暴力団の構成員及び準構成員)の検挙人員(一般刑法犯及び交通法令違反を除く特別法犯に限る。)については,平成15年まで3万人台で推移していたが,16年からは3万人を下回り,23年は2万6,269人(前年比2.3%増)であった。罪名別では,覚せい剤取締法違反が最も多く,次いで,窃盗,傷害,詐欺,恐喝の順であった。また,検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,全体で6.9%であり,罪名別に見ると,一般刑法犯では,恐喝(46.9%),賭博(44.9%),逮捕監禁(44.6%)で高く,特別法犯では,自転車競技法違反(97.9%),競馬法違反(91.3%),覚せい剤取締法違反(55.3%)で高かった。なお,暴力団相互の対立抗争事件数は,20年以降,減少していたが,23年は,13件と増加した。
(3) 薬物犯罪者
 薬物犯罪のうち,その大部分を占める覚せい剤取締法違反(覚せい剤に係る麻薬特例法違反を含む。)の検挙人員は,平成7年から増加傾向となり,9年には2万人近くに達したが,13年以降はおおむね減少傾向にあった。21年からは微増傾向にあるが,23年は前年から1.0%減少し,1万2,083人であった(9図参照)。

9図 覚せい剤取締法違反 検挙人員の推移



 大麻取締法違反(大麻に係る麻薬特例法違反を含む。)の検挙人員は,平成13年以降,21年まで顕著な増加傾向を示していたが,22年から減少に転じ,23年は1,759人と前年から25.7%減少したものの,12年の約1.4倍と依然高水準にある。
(4) 高齢犯罪者
 高齢者(65歳以上の者)の一般刑法犯の検挙人員は,他の年齢層と異なり,増加傾向が著しく,平成23年は4万8,637人であり,4年の検挙人員の約6.3倍となっている(10図参照)。一般刑法犯検挙人員の年齢層別構成について,60歳以上の者の構成比が,昭和57年には3.5%(1万5,363人)であったのが,平成23年には22.9%(7万83人)まで上昇し,高齢者が15.9%(4万8,637人)を占めている。また,一般刑法犯検挙人員の人口比を年齢層別に見ると,高齢者の人口比は,4年との比較で,約3.4倍と上昇が著しく,最近の高齢犯罪者の増加の勢いは,高齢者人口の増加をはるかに上回っている。

10図 一般刑法犯 検挙人員の推移(年齢層別)



 平成23年における高齢者の一般刑法犯検挙人員の罪名別構成比を見ると,窃盗の割合が高く,特に女子では,91.9%が窃盗であり,しかも万引きによる者の割合が80.8%と際立って高い。また,高齢者の一般刑法犯検挙人員の大半を占める窃盗において,この20年間で検挙人員の増加が認められるが,さらに,重大事犯である殺人及び強盗,粗暴犯である傷害及び暴行においても検挙人員が増加している(11図参照)。

11図 高齢者の検挙人員の推移(罪名別)



 高齢者の入所受刑者人員の推移を入所度数別に見ると,その人員は,最近20年間,ほぼ一貫して増加しており,入所受刑者総数に占める高齢者の比率(高齢者率)もほぼ一貫して上昇している(平成23年は8.0%)。また,入所受刑者全体と比べて,再入者(受刑のため刑事施設に入所するのが2度以上の者)の割合が高いが,20年前と比べて初入者(受刑のため刑事施設に入所するのが初めての者)も著しく増加している。
(5) 精神障害のある犯罪者等
 平成23年における一般刑法犯の検挙人員30万5,631人のうち,精神障害者は1,533人(前年比15.6%増),精神障害の疑いのある者は1,558人(同0.1%増)であり,精神障害者等(精神障害者及び精神障害の疑いのある者)の比率は,1.0%であった。精神障害者等による罪名別検挙人員は,窃盗(1,233人)が最も多く,精神障害者等の総数3,091人の39.9%を占めている。また,罪名別検挙人員総数に占める精神障害者等の比率は,放火(22.4%),殺人(14.3%)において高かった。

4  少年非行

 少年による刑法犯の検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)の推移には,昭和26年,39年及び58年をピークとする三つの大きな波が見られる。59年以降は,平成7年まで減少傾向にあり,その後,若干の増減を経て,16年から毎年減少し続け,23年は,11万6,089人(前年比8.7%減)であった。また,人口比も,近年,低下傾向にあるものの,成人よりは高い水準にある(12図参照)。罪名別では,窃盗の構成比が最も高く,次いで,遺失物等横領が高く,これら2罪名で,全体の79.9%を占めている。

12図 少年による刑法犯 検挙人員・人口比の推移



 平成23年の家庭裁判所における少年一般保護事件(自動車運転過失致死傷,業務上過失致死傷,重過失致死傷,危険運転致死傷及びぐ犯を除いたもの)の終局処理人員は,8万4,155人であり,その処理区分別構成比を見ると,審判不開始(68.7%)が最も多く,次いで,保護観察(14.6%),不処分(11.8%),少年院送致(3.7%)の順であり,刑事処分相当の理由により検察官に送致された者は0.2%であった。
 少年鑑別所の入所者(観護措置,勾留に代わる観護措置又はその他の事由(勾留,引致等)により入所した者)の人員については,平成8年から増加し,15年に昭和45年以降最多を記録したが,その後,8年連続で減少し,平成23年は1万3,189人であった。また,少年院入院者(少年院送致の決定により新たに入院した者)の人員については,昭和49年に戦後最低となった後,増減を繰り返し,最近20年間では,平成12年(6,052人)をピークに減少傾向が続いており,23年は3,486人であった。
 保護観察処分少年(家庭裁判所の決定により保護観察に付された者)の保護観察開始人員については,平成2年に過去最多の7万3,779人を記録したが,その後は減少傾向にあり,23年は2万3,580人(前年比7.6%減)であった。また,少年院仮退院者(少年院からの仮退院を許されて保護観察に付されている者)の保護観察開始人員は,9年から増加し,14年に5,848人まで増加したが,その後は減少傾向にあり,23年は3,601人(同7.3%減)であった。

5  再犯者

(1) 検挙
 一般刑法犯により検挙された者のうち,再犯者(前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり,再び検挙された者)の人員は,平成9年から増加し続けていたが,19年から5年連続で若干減少し,23年は13万3,724人(前年比2.8%減)であった。他方,再犯者率(検挙人員に占める再犯者の人員の比率)は,9年から一貫して上昇し続け,23年は43.8%(同1.1pt上昇)であった(13図参照)。

13図 一般刑法犯検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移



 一般刑法犯により検挙された成人の有前科者(道路交通法違反を除く犯罪による前科を有する者に限る。)の人員は,平成8年から増加し続けていたが,19年以降は5年連続で若干減少し,23年は6万4,970人(前年比2.7%減)であった。他方,有前科者率(成人による一般刑法犯検挙人員に占める有前科者の人員の比率)は,4年以降22〜30%で推移しており,23年は28.5%であるが,罪名別では,強盗(46.6%),詐欺(40.4%)の有前科者率が顕著に高い。同一罪種(警察庁の統計の区分による。)の前科を有する者の比率は,一般刑法犯全体で14.9%であるが,窃盗では19.4%と高い。また,覚せい剤取締法違反(覚せい剤に係る麻薬特例法違反を含む。)について,同一罪名再犯者(前に同法違反で検挙され,再度,同法違反で検挙された者)の比率を見ると,23年において60.1%と,一般刑法犯の再犯者率と比べても高い水準にある。
(2) 矯正
 入所受刑者のうち,再入者の人員は,平成11年から毎年増加した後,19年からはほぼ横ばい状態であったが,23年は1万4,634人(前年比3.8%減)に減少した。再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率)は,16年から毎年上昇し続けており,23年は57.4%であった。
 平成14年及び19年の出所受刑者について,出所年を含む5年又は10年の間で,累積再入率(各年の年末までに再入所した者の累積人員の比率)を出所事由別(満期釈放又は仮釈放の別)に比較すると,満期釈放者は,仮釈放者より累積再入率が相当高い。14年の出所受刑者について,10年以内の累積再入率は,満期釈放者で62.5%,仮釈放者で40.7%であった(14図参照)。入所度数別では,入所度数が多いほど累積再入率が高く,特に入所度数が1度の者と2度の者の差が顕著であり,2度以上の者は,おおむね半数を超える者が5年以内に再入所しており,入所度数を重ねるにつれて,改善更生の困難さが増していくことがうかがわれる。

14図 出所受刑者の出所事由別累積再入率



(3) 少年の再非行等
 一般刑法犯により検挙された少年のうち,再非行少年(前に道路交通法違反を除く非行により検挙(補導)されたことがあり,再び検挙された少年)の人員は,平成16年から23年まで毎年減少しているが,再非行少年率(少年の一般刑法犯検挙人員に占める再非行少年の人員の比率)は,9年を底として翌年から毎年上昇を続けており,23年は32.7%であった(15図参照)。また,14年から23年までの間に少年院を出院した者について,再入院(新たな少年院送致決定による再入院)又は刑事施設への入所(初入受刑者としての入所に限る。)の状況を見ると,出院年を含む5年間に再入院した者の比率は,14.5〜16.4%で,出院年(複数回入院した者の場合には最終の出院年)を含む5年間に刑事施設に入所した者の比率は,8.1〜9.6%であった。

15図 少年の一般刑法犯 検挙人員・再非行少年率の推移




6  統計上の犯罪被害

 人が被害者となった一般刑法犯の認知件数及び被害発生率(人口10万人当たりの認知件数)は,いずれも,平成15年以降,減少・低下している。男子の被害発生率は,女子の2倍以上である(16図参照)。

16図 人が被害者となった一般刑法犯 認知件数・被害発生率(男女別)



 一般刑法犯による死傷者数は,平成17年から7年連続で減少しており,23年は3万1,606人であった。死傷者中に女子が占める比率は,3割前後である。また,強姦及び強制わいせつによる女子の被害は,16年以降,認知件数・被害発生率ともおおむね減少・低下している。
 13歳未満の子供が被害者となった刑法犯の被害者数は,全体として,平成16年以降,減少傾向にある。23年における被害者数に占める女子の比率を罪名(強姦を除く。)ごとに見ると,強制わいせつが90.6%,略取誘拐・人身売買が73.5%と高い。他方,児童虐待に係る事件(児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)にいう児童虐待の行為(保護者によるその監護する18歳未満の児童に対する虐待の行為)が刑法犯等として検挙された事件)は,検挙件数・人員とも,総数で顕著な増加傾向にある(17図参照)。また,23年における児童虐待に係る事件について,被害者と加害者との関係(加害者の立場)を見ると,全体では,父親等によるものが286人(69.9%)と多いが,殺人や保護責任者遺棄では,母親等によるものがそれぞれ24人(75.0%),12人(52.2%)と多い。

17図 児童虐待に係る事件 検挙件数・検挙人員の推移(罪名別)



(法務総合研究所室長研究官)
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