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平成23年版犯罪白書特集テーマ
〜少年・若年犯罪者の実態と再犯防止〜
「少年院出院者の追跡調査」より
武田 玄雄
1  はじめに

 平成23年版犯罪白書の特集テーマは「少年・若年犯罪者の実態と再犯防止」である。ここでは,特集第7編の第3章「少年院出院者の犯罪」(法務総合研究所の特別調査による。)の主だった内容を紹介するとともに,少年・若年犯罪者の処遇等について,今後の課題や展望についての考えを論じたい。なお,本文中,意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

2  特別調査の概要

 特別調査の調査対象者は,平成16年1月から3月の間に全国の少年院を出院(以下「本件出院」という。)した644人(出院時18歳(342人)又は19歳(302人)の者に限る。)であり,全員が仮退院者であった。調査対象者について,本件出院後の刑事処分(本件出院後に行った犯行により,25歳に至るまでに確定した罰金以上の刑(道交違反の罪のみに係る罰金刑を除く。)をいう。)の有無を調査した上,刑事処分を受けた248人について,刑事処分の内容や本件出院後の生活状況等について,検察庁保管の刑事確定記録により調査を行った。

3  調査対象者の概要

 表1は,調査対象者全員の当該少年院送致決定に係る非行(以下「本件非行」という。)について,男女別に非行名を見たものである。総数では,窃盗(31.7%)の比率が最も高く,次いで道路交通法違反(16.0%),傷害・暴行(12.6%)となっている。男女別では,男子が窃盗(33.0%),道路交通法違反(16.8%),次いで強盗(13.0%)であるのに対し,女子では,覚せい剤取締法(47.4%)が最も高く,次いで傷害・暴行(15.8%),窃盗,ぐ犯(それぞれ10.5%)と,男女間に相違が見られた。本件非行時に,「暴走族との関わりがあった者」の比率が男子(31.3%)において女子(10.8%)と比べて高いことが,道路交通法違反の構成比の差に,又,「何らかの薬物を使用していた者」の比率が女子(65.8%)において男子(13.4%)と比べて顕著に高いことが,覚せい剤取締法の構成比の差に関連しているのではないかと推測される(注1)。

表1 調査対象者 本件非行名別(男女別)


4  本件出院後の犯行

(1)初回犯行日までの期間
 図2は,本件出院後,刑事処分を受けた248人について,保護観察終了日(図2脚注3参照)から初回犯行日までの期間(横軸の月数までの累積人員の比率)を本件出院時年齢別に見たものである。図2を見ると,保護観察終了日から1年の間に過半数,約2年半の間には約80%の者が,初回犯行に及んでいることが分かる。また,初回犯行時の年齢別に人員をみると,20歳に至るまでと比べて20歳前半が多くなっていることからも(注2),保護観察期間中(保護観察期間は20歳までの者が多い。)は,保護観察官や保護司による指導・監督,引受人等の援助があるため犯罪が抑止されているが,その後,犯罪に至る者が多くなっているものと推測される。これらのことから,保護観察期間終了後の成人後の数年間は,犯罪防止対策上重要な期間であり,何らかの形でのサポート体制の継続が望まれる。

図2 初回犯行の累積状況(保護観察終了日以降)


(2)犯罪の傾向
 図3は,調査対象者全員を本件非行名(非行群)及び本件出院後の全刑事処分に係る罪名(犯罪類型)により分類(分類の詳細については犯罪白書266頁参照)し,犯罪類型率(図3脚注2参照)を見たものである。図3を見ると,重大非行群以外の全ての非行群において,同種の犯罪類型率が全体よりも高く,特に,窃盗,粗暴,性及び薬物の各群において,その傾向が明らかで,これらにおいては犯罪傾向に一定の連続性がうかがえる。一般に,粗暴,性及び薬物犯罪については,個人の嗜癖や性向,思考の問題などの影響が大きく,改善を図るのが困難であるため,専門家による介入の必要性が高く,問題の回復や改善更生に時間を要することを認識しておくことが大切であると考える。
 また,刑事処分を受けた者のうち,窃盗に及んだ者は半数近く(123人,49.6%)おり,手口別に見ると,非行少年一般に比べて侵入窃盗,ひったくりの各構成比が高く,万引きの構成比が低くなるなど,犯行の悪質化がみられた(注3)。一般に,少年・若年者の罪名別構成比は,両者ともに窃盗が最も多く,また,年齢層が高くなるにつれて窃盗以外の犯罪の構成比が高くなる傾向にあり,加齢による犯罪の多様化傾向があると推測される(注4)。犯罪性が進んだ者も,その初期は万引き等の窃盗により非行を開始することが多く,窃盗は,様々な犯罪・非行の端緒となることから,少年時の万引きなどの問題に対しては,早い段階で,手厚くきめ細かな対応を行い,非行が進むのを防止することが重要である。

図3 犯罪類型率の比較



5  犯罪に至る要因

 これまでみてきた犯罪の悪質化・多様化の背景には,少年・若年者が抱える複雑な問題がうかがえる。図4は,刑事処分を受けた者について,本件出院後から初回の犯行までに見られた問題行動等を罪種別に見たものである。
 図4について,調査が可能であった189人(図4脚注2参照)のうち,問題行動がなかった者が10.1%,1つの者が15.3%であり,複数(2つ以上)の問題行動が認められた者は74.6%とほぼ4人に3人の者が複数の問題を抱えている結果となった。問題領域としては,「不良交友」関係が最も多く,そのほか,不就労,経済的不安定,薬物依存等について問題を抱えている者が多かった。これらの問題は,重複して相互に作用していることが多い。
 図5は,これら複数の問題の関連性について,最も多くの者に見られた「不良交友」と他の問題行動等の重複状況を見たものである。
 図5を見ると,不良交友との重複者が,薬物使用に30人(薬物使用全員の76.9%),無為徒食に42人(同68.9%),ギャンブルたん溺に20人(同69.0%),借金問題に47人(同72.3%),粗暴行為に17人(同77.3%)おり,これらの問題と不良交友との関連性がうかがわれる。不良交友と借金問題の両者を有する者は対象者の約4人に1人(47人,24.9%)となっており,両者の問題を抱える者では,窃盗に及ぶ者が多いことが認められた(47人中17人,36.2%。注5)。このほか,不良交友及び薬物使用の重複者においては,覚せい剤取締法違反又は毒劇法違反により刑事処分を受けた者が半数近く(46.7%)おり,不良交友が見られない薬物使用の者(33.3%)と比べて薬物犯罪の比率が高く,さらに,不良交友と無為徒食の重複者においては,粗暴犯により刑事処分を受けた者(31.0%)の比率が,不良交友の見られない者(5.3%)と比べて顕著に高い(注6)。
 不良交友は,共犯者の存在が犯罪に弾みをつけるとともに,犯罪の悪質化(仲間の存在により犯罪が大胆になるなど),多様化(仲間に薬物を勧められ手を染めるなど)につながり易く,特に留意を要する問題と言える(注7)。
 不良交友の端緒(注8)については,その開始時期をみると,本件入院前に交友を開始した者(75人,68.2%)の方が本件出院後の者(50人,45.5%)よりも多く,また,端緒場所としては,前者では地元(26人,34.7%)と学校(21人,28.0%)が多いのに対し,後者では地元(9人,18.0%),職場(同僚)(8人,16.0%)が比較的多いものの,5人前後の項目が多く,端緒とする場所が多岐にわたっている。

図4 本件出院後の問題行動等(罪種別)


図5 問題行動等の重複状況


6  犯罪抑止要因

 図6は,調査可能であった174人について,本件出院後,最初の刑事処分に至るまでの間で,犯罪をしていない時期の行動パターンについて見たものである(図6脚注2参照)。
 図6を見ると,調査対象者(174人)のうち143人(82.2%)に就労,9人(5.2%)に就労努力が見られ,双方の重複者を除く85.6%の者が就労又は就労努力を行っていた。就労領域に次いで,監督者との生活が乱れた者が73人(42.0%)と多い。監督者との同居に関して,犯行時には同居を解消している者が相当数に及んでおり(注9),少年・若年者にとっては,監督者との同居などにより,就労も含めた規則正しい生活を継続できることが,犯罪抑止要因となると推測され,監督者等による人的なサポート体制の如何がその後の改善更生に大きく影響するものと考えられる。
 図7は,調査可能であった181人(図7脚注2参照)について,犯罪を行っていない時期における更生の支援者を見たものである。
 図7を見ると,更生の支援者では,親が138人(76.2%)と圧倒的に多く,配偶者26人(14.4%),雇用主24人(13.3%)の順となっており,少年・若年者の更生を図るうえで,親の存在がいかに大きいかが理解できる。しかし,その一方で,出院後「両親と同居」する者の比率が低くなってきていることや(注10),若年者の中には親との同居を早期に解消する者が相当数いることなどが,犯罪のリスクを高めているものと思われる。また,支援者の数については,1人(各項目をそれぞれ1人と計上)が65.2%,2人以上が29.3%と,支援者が1人のみの者が多く,更生支援者の広がりが狭いことがうかがわれ,今後の課題と言える。

図6 犯罪がない時期の行動


図7 更生の支援者


7  今後の課題や展望について

 これまでみてきた少年・若年者犯罪者の特徴や問題性を踏まえ,その置かれている現状も視野に入れながら,少年・若年者(以下「青少年」という。)の犯罪防止について,気付いた個人的な考えを記し,まとめとしたい。
 青少年の犯罪は,年齢層が高くなるほど悪質化・多様化が進み,また,有保護処分歴者についてはその処分歴の程度が増すほど改善更生が困難となる傾向がある(注11)。特に,窃盗については,犯罪が進んでいないごく初期の非行として行われることも多いが,その後の犯罪の多様化へとつながる可能性があり,万引き等の問題が発覚した早期の段階において,「小さなほころび」が「大きな穴」に広がらないよう手厚く対応することが,将来の犯罪防止につながるものと考えられる。
 「三つ子の魂百まで」というように,幼少時から,善悪の判断を養い,社会のルールを守ることの大切さを体得させることが重要であるが,それが充分に家庭内で行われていない場合があるように思われる。特に,家族機能が弱くなった家庭の増加を耳にする機会が多くなった昨今においては,地域社会が親に代わる役割を果たせることが望ましいが,他方で地域の人々のつながりが希薄化しており,地域社会が親の役割を補うようなこともなくなってきている(注12)。このような現状においては,問題を抱える青少年やその親を,従来の地縁型社会とは異なる形で支援する体制が必要であり,ソーシャルサポートネットワークの更なる充実が望まれる。
 犯罪に陥る青少年についてみると,高校中退や離転職の繰り返しにより,自分の居場所を失い,人生の目標も失っている者が多くみられる。また,これらの少年の中には,自分の居場所を求めて,暴走族や地域不良集団に加わり「不良交友」の問題を抱える者も多いと思われる。そして,不良交友などが原因で犯罪に手を染めてしまうなど,益々社会での居場所がなくなりがちになるように思われる。この悪循環から早い段階で抜けることが,改善更生の近道であり,青少年が安心して自分の心情を吐露できる居場所を家庭や学校,地域社会の中で増やしていくことが重要ではなかろうか。青少年は,他者との健全な関係を通して社会性を育てていくことから,今後は,青少年に対して他者と健全に交わる機会(注13)を積極的に提供する必要もあるのではないかと思われる。
 特別調査の結果から,性,粗暴及び薬物犯罪等について,少年期と若年期を通して犯罪傾向に一定の連続性が認められた。再犯性の高いこれらの罪種は,その背景となる問題性の根が深く,改善に時間を要することから,矯正・更生保護における処遇の一貫性はもとより,保護観察期間終了後も継続してフォローしていく体制作りが重要であり,今後の課題であろう。また,性や薬物犯罪等の処遇においては,その焦点が問題性の改善に集中しがちであるが,それと平行して,規則正しい生活の維持など,生活全般にわたる総合的な視点から個々の抱える生活上の問題点を見極めて,様々な角度から,「点」ではなく「面」による複合的なアプローチを行うべきと考える。特別調査の結果から,刑事処分のあった者の多くが複数の問題を抱えており,罪種に限らず,全ての対象者に「面」によるアプローチを行う必要性が改めて認識された。このためには,地域における多機関の専門職からなるチームアプローチによる処遇が必要であり,社会内処遇を担う保護観察官には多機関連携における調整が期待される。
 そのほか,青少年の改善更生にとっては,親との関係が大きな鍵となることが,特別調査の結果から改めて確認できたように思われる(注14)。これらの結果からも,少年院在院者に対する生活環境の調整においては,引受意思などの形式面のみならず,引受人と本人の関係性をよく見極め,調整が必要な場合は,少年院在院中から積極的に働き掛けるなど,帰住後の生活環境を整えておくことが望ましい。また,若年者においては,成人後間もなくの犯罪が多く,少年院退院後,親元に帰住しても,刑事処分に係る犯行がみられた時点では親との同居を解消している者も相当数いた。青少年にとって,親との同居は大きな犯罪抑止要因となる一方,親元から巣立ち,自立する力を養うことも大切であり,段階を踏みながら時間をかけて慎重に自立につなげていくことが望ましく,必要に応じて周囲の者がサポートできる体制を整えておくことが望ましいのではなかろうか。
 最後に,就労関係について少し触れたい。就労・就学については,就労支援やサポート校の活用など,制度面の充実は図られているが,他の処遇や支援と同様にアフターフォローが今後の課題と言える。例えば,就労支援については就職するまでは手厚く支援しているが,その後の就労継続に対するケアがなされず離職するなどのケースが見られ,これらの問題を解消するための今後の取組みを期待したい。
 これまでみてきたように,少年・若年犯罪者の抱える問題は複雑で多岐にわたり,改善更生にも長い時間がかかる。我々刑事司法に携わる者だけではなく,地域社会で暮らす一人一人が長い目で青少年の成長を見守り,励まし,支援していくことができれば,将来に希望を持って生きる青少年も増え,それが犯罪防止につながるものと思われる。
(法務総合研究所室長研究官)


注釈(※犯罪白書は全て平成23年版をいう。)
注1:犯罪白書7−3−1−3図参照。
注2:犯罪白書7−3−2−5図参照。
注3: 犯罪白書7−2−1−1−11図,7−3−2−7図,7−3−3−2−1表参照。
注4:犯罪白書7−2−1−1−8図,7−2−1−1−11図参照。
注5:犯罪白書7−3−3−3−8図参照。
注6:犯罪白書7−3−3−3−8図参照。
注7:犯罪白書7−3−2−8図,7−3−2−9図参照。
注8:犯罪白書7−3−3−3−9図参照。
注9:犯罪白書7−3−3−3−1図参照。
注10:犯罪白書3−1−5−4図,7−2−3−9図参照。
注11:犯罪白書7−2−4−7図参照。
注12: 以前は,地域社会に「うるさい親父」,「おせっかいなおばさん」がいたもので,近所の子どもが悪いことをすると叱ったり,おやつをくれて話を聞いてくれるなど,社会のルールを教えたり居場所を与えてくれる「親切な大人」がいたものであるが,最近は地域社会のつながりの希薄化により,そのような話を耳にしなくなった。
注13: 筆者の個人的体験であるが,20年程前の中学生は,ほとんどが何らかの部活に所属し,勉強ができなくてもサッカーや楽器演奏に夢中になり,仲間の存在とともに,部活が大切な居場所であった。そして,同級生や先輩等との関わりの中で,将来,社会の中で必要とされる「関係力」を身につけていった。部活動など,他者との濃密な交流の機会を持つことは,対人関係能力の習得に役立つなど,非行や犯罪の防止という観点からも,何らかの効果があるように思われる。
注14: 犯罪白書7−3−3−1−5図,7−3−3−1−6図参照。
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