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詐欺事犯者の実態と処遇 ─令和3年版犯罪白書特集から─
田村 太郎
第1 はじめに
 詐欺の認知件数は,刑法犯全体の認知件数が平成15年以降減少し続けている中,増減を繰り返しており,その動向は,認知件数が減少し続けている窃盗とは異なる。近年でも引き続き大きな社会問題となっている特殊詐欺が,平成15年頃に急増したことを踏まえると,このような詐欺の動向の背景には,特殊詐欺の動向が関係していると思われ,引き続き詐欺(特に特殊詐欺)の予防,撲滅に向けた対策,詐欺事犯者の再犯防止に向けた対策の必要性も高い。
 そこで,特殊詐欺を含む詐欺事犯の実態や詐欺事犯者の特性等を明らかにし,それらの対策の在り方の検討に資する資料を提供すべく,令和3年版犯罪白書では,「詐欺事犯者の実態と処遇」を特集テーマとした。
 本稿では,できる限り,上記特集テーマの概要を紹介することに努めたが,紙幅の関係上,割愛せざるを得なかった分析結果等もあるので,詳細は,ぜひ本白書をご一読いただきたい。
 本稿中,本白書の記載を超えるものは,筆者の個人的見解である。

第2 詐欺事犯の動向等
1 認知件数・検挙件数・検挙率
(1) 詐欺
 認知件数は,平成15年及び16年に大きく増加し,18年に減少した後も,増加傾向と減少傾向を繰り返している(図1参照)。検挙率は,平成16年に32.1%まで低下した後,22年(66.1%)まで上昇し,その後は低下傾向と上昇傾向を繰り返している。

図1 詐欺 認知件数・検挙件数・検挙率の推移


(1) 特殊詐欺
 本白書において,特殊詐欺とは,例えば,被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ,指定した預貯金口座へ振り込ませるなどの方法により,不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(恐喝及び窃盗を含む。)の総称をいい,その類型は,表2のとおりである。
 特殊詐欺の認知件数は,平成16年に2万5,667件に達した後,減少傾向と増加傾向を繰り返している(図3参照)。令和2年の類型別認知

表2 特殊詐欺の類型



図3 特殊詐欺 認知件数・検挙件数・検挙率の推移


件数は,オレオレ詐欺(6,407件。同年においては「預貯金詐欺」を含む。以下同じ。),キャッシュカード詐欺盗(2,850件),架空料金請求詐欺(2,010件),還付金詐欺(1,804件)の順に多かった。
 検挙件数は,平成24年から増加傾向にあり,令和2年は,平成16年以降最多であった。
2 検挙人員
(1) 詐欺
 詐欺の検挙人員は,平成21年(1万2,542人)をピークに翌年から減少傾向にあり,令和2年は8,326人であった。
 このうち少年の構成比は,平成16年(10.0%)に大きく上昇した後,20年以降は7〜11%台で推移している(令和2年は8.2%)。20歳代の者の構成比は,上昇傾向を示しており,令和2年における少年及び20歳代の者の検挙人員の合計は,詐欺の検挙人員の37.1%(平成13年比12.0pt上昇)を占める。
(2) 特殊詐欺
 特殊詐欺の検挙人員は,平成24年に1,000人を,27年に2,000人をそれぞれ上回り,令和2年は2,621人であった。
 特殊詐欺4類型(オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺)の検挙人員の年齢層別構成比の推移(平成26年以降)を見ると,少年及び20歳代の者の構成比は,62〜73%台で推移している(令和2年は72.1%)。
3 検察における被疑事件の処理
 詐欺(刑法246条及び248条に規定する罪に限る。)の起訴率は,平成22年以降は50%台で推移しており(令和2年は54.3%),刑法犯全体(同37.4%)よりも顕著に高い。起訴猶予率は,平成18年以降上昇傾向にあり,25年以降は30%前後で推移しているが(令和2年は30.5%),刑法犯全体(同52.2%)よりも低い。
4 裁判
(1) 科刑状況
 詐欺について,平成13年・23年・令和2年の地方裁判所における科刑状況別構成比を見ると,実刑の者の構成比は,平成13年が最も高く,23年及び令和2年は,ほぼ同程度である。2年未満の実刑の者の構成比は,平成13年が最も高い。3年を超える実刑の者の構成比は,令和2年,平成23年,13年の順に高く,特に,令和2年における3年を超え5年以下の実刑の者及び5年を超え10年以下の実刑の者の構成比(それぞれ11.3%,2.8%)は,平成13年(それぞれ5.2%,0.7%)より大きく上昇している。
 令和2年における詐欺の地方裁判所における全部執行猶予率(52.8%)は,全体の地方裁判所における有期懲役・禁錮の全部執行猶予率(63.0%)よりも低い。
(2) 家庭裁判所における処理状況
 令和2年における詐欺の少年保護事件について,家庭裁判所終局処理人員(536人)の処理区分別構成比は,保護観察(38.1%),審判不開始(24.8%),少年院送致(17.9%)の順であり,児童自立支援施設・児童養護施設送致はなかった。

第3 矯正
1 入所受刑者
 詐欺の入所受刑者人員は,平成29年以降は減少し続けており,令和2年は1,559人であった。その年齢層別構成比を見ると,30歳未満の者は,平成16年までは10〜11%台で推移し,25年以降は20%を,30年以降は30%をそれぞれ上回って推移している(なお,入所受刑者総数における30歳未満の者の構成比は,13年(24.4%)以降,低下傾向にある。)。
2 少年院入院者
 詐欺の少年院入院者の人員は,平成24年以降は100人を上回り,30年(336人)以降は減少し続けている(令和2年は121人)。令和2年における少年院入院者総数に占める詐欺の少年院入院者の比率は7.5%であった。

第4 更生保護
 詐欺について,保護観察開始人員の推移(最近20年間)を見ると,仮釈放者は,増減を繰り返し,保護観察付全部・一部執行猶予者は,おおむね減少傾向にあり,保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。)は,平成29年及び30年に大きく増加した後は減少し(令和2年は210人),少年院仮退院者は,平成28年(226人)まで増加した後,増減を繰り返している(令和2年は153人)。

第5 再犯・再非行
1 再犯者・再非行少年の人員,再犯者率・再非行少年率
 令和2年において,詐欺による検挙人員(8,326人)に占める再犯者の人員(4,837人)の比率(再犯者率)は,58.1%であった。同年において,詐欺により検挙された少年(634人)に占める再非行少年の人員(345人)の比率(再非行少年率)は,54.4%であった。
2 出所受刑者の再入所状況
 平成23年及び28年の詐欺の出所受刑者について,出所年を含む5年以内又は10年以内における再入率(図4参照)は,満期釈放者等及び仮釈放者のいずれにおいても,出所受刑者全体(5年以内再入率は,それぞれ47.3%,29.0%。10年以内再入率は,それぞれ55.4%,35.6%。)と比べて低いが,いずれの出所年の詐欺の出所受刑者においても,満期釈放者等は,仮釈放者よりも再入率が相当高く,出所受刑者全体と比べて,その差は顕著である。

図4 詐欺 出所受刑者の出所事由別再入率


3 再犯防止に向けた各種施策・取組
(1) 矯正における施策・取組
 刑事施設においては,詐欺及び特殊詐欺事犯受刑者に対する再犯防止指導について,「薬物依存離脱指導」,「性犯罪再犯防止指導」等の特別改善指導のような全国的に統一された標準的なプログラムは策定されていないが,被害者の心情及び事件の重大性を認識させ,しょく罪の方法を考えさせるとともに,再犯を防止するため,事件に至るまでの自己の問題点等を振り返らせ,健全な金銭感覚及び職業観を身に付けさせることを目的として作成された視聴覚教材(DVD 教材)及びワークブックを活用するなどした一般改善指導が実施されている。少年院においても,各施設の実情に応じ,特殊詐欺再非行防止指導の取組が行われているほか,各都道府県警察本部と連携した特殊詐欺再非行防止指導の取組が行われている。
(2) 更生保護における施策・取組
 保護観察所においては,令和3年1月から,保護観察処分の対象となった事案に特殊詐欺への関与が含まれる者や,それ以外の者で,現に特殊詐欺グループへの関与が認められる者を「特殊詐欺類型」の保護観察対象者に認定し,特殊詐欺が被害者に与えた影響について理解させ,謝罪や被害弁済等の今後行うべきことを考えさせるとともに,離脱意思やグループへの関与の程度に応じた指導や支援を行っている。また,本人自身がグループに所属しているという感覚を持っていない場合には,離脱意思を強化するような働きかけに代えて,グループ以外の居場所を持てるような働きかけとして,就労や就学を中心とした健全な生活を送るための指導を行うなど特殊詐欺グループとの関係に焦点を当てた指導等のより効果的な処遇が行われている。

第6 詐欺被害者
1 被害件数
(1) 詐欺
 詐欺(被害者が法人その他の団体である場合を除く。)の男女別の認知件数を見ると,平成13年は,女性が男性の約2分の1であったが,23年以降は,女性が男性を上回っている(令和2年は,女性が男性の約1.3倍)。
 平成13年・23年・令和2年における詐欺の認知件数について,主たる被害者の年齢層別構成比を総数・女性別に見ると,主たる被害者が65歳以上の者(以下「高齢者」という。)であるものは,総数・女性共に,令和2年(47.0%,58.3%),平成23年(36.8%,48.9%),13年(17.6%,25.2%)の順に高い(特殊詐欺の認知件数が増加した時期が平成15年頃以降であることに留意されたい。)。
(2) 特殊詐欺
 令和2年における特殊詐欺(被害者が法人その他の団体である場合を除く。)の認知件数について,被害者の男女別構成比を見ると,特殊詐欺総数では,女性が73.6%を占めた。類型別に見ると,預貯金詐欺,オレオレ詐欺及びキャッシュカード詐欺盗は,女性の構成比が男性の構成比を上回った(いずれも被害者の約8割が女性)。
 特殊詐欺総数について,年齢層別構成比を見ると,高齢者が85.7%を占めた。高齢者の構成比が最も高い類型は,預貯金詐欺(98.4%)であり,特に,80歳以上の者が68.8%に達していた。
2 被害額
(1) 詐欺
 詐欺(被害者が法人その他の団体である場合を含む。)による被害額は,平成20年に700億円台に達した後,400億円台まで減少したが,26年には最高額である約846億円に達し,令和2年は約640億円(前年比36.3%増)であった。同年における現金被害額は,約592億円(同39.1%増)であった。
(2) 特殊詐欺
 図5は,特殊詐欺による被害総額(現金被害額)及び実質的な被害総額(被害総額に,詐取又は窃取されたキャッシュカードを使用してATM から引き出された金額を加えた額をいう。)の推移である。各年の被害総額(平成22年以降は,実質的な被害総額)を特殊詐欺の認知件数(未遂も含まれる点に留意されたい。)で割った金額の推移を見ると,16年(約111万円)から増加傾向にあり,23年に200万円を,24年に400万円を超え,26年(約422万円)に最高額に達した後,その翌年から減少傾向にあったが,令和2年は約211万円(前年比12.3%増)であった。
 令和2年における特殊詐欺の実質的な被害総額を類型別に見ると,架空料金請求詐欺(約80億円),オレオレ詐欺(約68億円),預貯金詐欺(約58億円),キャッシュカード詐欺盗(約43億円),還付金詐欺(約25億円),金融商品詐欺(約4億円),融資保証金詐欺(約4億円)の順に多かった。同年の類型別被害総額を当該類型の認知件数(未遂も含まれる点に留意されたい。)で割った金額は,金融商品詐欺は約718万円,架空料金請求詐欺は約397万円,オレオレ詐欺(預貯金詐欺を含む。)は約197万円,キャッシュカード詐欺盗は約150万円,還付金詐欺は約138万円,融資保証金詐欺は約133万円であった。

図5 特殊詐欺 被害総額等の推移


第7 特別調査
1 調査の概要等
 法務総合研究所は,特殊詐欺を行った者を含む詐欺事犯者の実態や特性等を明らかにするために,詐欺事犯者に関する特別調査を実施し,その結果を分析した。
 調査対象者は,全国の地方裁判所(支部を含む。以下同じ。)において,平成28年1月1日から同年3月31日までの間に,詐欺(既遂・未遂を問わず,また準詐欺,電子計算機使用詐欺,犯罪収益移転防止法若しくは組織的犯罪処罰法の各違反又はこれらの幇助罪・教唆罪を含み,特殊詐欺に該当する恐喝及び窃盗を含む。断りのない限り,以下同じ。)により有罪判決の言渡しを受け,調査時点で有罪判決が確定していた者(1,343人。以下「全対象者」という。)である。これら全対象者に関して,詐欺により有罪判決の言渡しを受け,その後,有罪判決が確定した事件(以下「調査対象事件」という。)について,裁判書等の資料に基づき,調査対象事件の概要,対象者の基本的属性・科刑状況等に関する調査を実施したほか(以下「全対象者調査」という。),被害状況についても調査した。
 加えて,全対象者の中で,犯行の手口に特殊詐欺が含まれる者(408人。以下「特殊詐欺事犯者」という。)のうち,東京,横浜,さいたま及び千葉の各地方裁判所で判決の言渡しを受けた者(202人)については,全対象者調査に加え,刑事確定記録等を用いて,より詳細な調査を行った(以下「確定記録調査」という。)。
2 全対象者調査の結果
(1) 調査対象事件の概要
ア 犯行の手口
 全対象者の人員(1,343人)には,複数件の詐欺を行った対象者が含まれる上,複数の対象者による共犯事件を1件と計上していることから,調査対象事件である詐欺の事件数は,延べ2,515件である。犯行の手口別構成比を見ると,特殊詐欺(33.3%),通帳等・携帯電話機の詐取(13.7%),保険金詐欺(8.1%),無銭飲食等(7.8%),偽造クレジットカード等使用詐欺(7.1%)の順であった。
イ 共犯
 調査対象事件における共犯率は,総数では49.7%であり,犯行の手口別では,特殊詐欺(99.8%)が顕著に高く,次いで,保険金詐欺(49.0%),通帳等・携帯電話機の詐取(27.2%),無銭飲食等(5.1%)の順であった。
 共犯事件の総数に占める共犯者数別構成比を見ると,いずれの手口においても,2人組の構成比が最も高い。特殊詐欺では,2人組(49.8%),3人組(19.1%),5〜9人組(14.8%),4人組(12.3%),10人以上の組(3.7%)の順であり,他の手口と比べると,多人数による共犯事件の構成比が高い
 調査対象事件のうち共犯者がいる事件(1,251件)において,共犯者に氏名不詳の者が含まれる事件の構成比は,総数では67.5%であり,犯行の手口別では,特殊詐欺は91.1%と顕著に高かった。
(2) 全対象者の特徴
(ア) 基本的属性
 全対象者の人員(1,343人)の内訳は,男性1,189人(18〜77歳),女性154人(18〜80歳)であり,犯行時の平均年齢は,38.5歳(男性38.2歳,女性41.6歳)であった。
 全対象者の総数から,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除いた1,271人について,犯行の手口別構成比を見ると,特殊詐欺(31.5%),通帳等・携帯電話機の詐取(15.3%),無銭飲食等(11.3%),保険金詐欺(11.0%),偽造クレジットカード等使用詐欺(6.3%)の順であった。なお,以下も,犯行の手口別に全対象者の調査結果を見る場合には,異なる手口により2件以上の詐欺を行った者を除く。
 全対象者(各属性等が不詳の者を除く。)の属性等を犯行の手口別に見ると,犯行時の年齢層では,特殊詐欺は30歳未満の者の構成比(56.6%)が,無銭飲食等は50〜64歳の者の構成比(34.7%)が最も高い。前科(調査対象事件より前の,道交違反,道路交通取締法,同法施行令又は道路交通取締令の各違反を除く,罰金以上の刑に処せられた事件をいう。)の有無及びその内容を見ると,特殊詐欺(63.6%),通帳等・携帯電話機の詐取(62.4%)及び保険金詐欺(62.9%)は,前科を有しない者の構成比が高く,無銭飲食等は,同種前科を有する者の構成比(52.8%)が高かった。全対象者のうち,確定判決において詐欺以外の罪も認定された者は341人(25.4%)であり,その主な罪名(重複計上)は,窃盗(158人),文書偽造(91人),薬物犯罪(覚醒剤取締法違反等)(58人)の順であった。全対象者(前科を有する者に限る。)について,同種前科の回数別構成比を総数・犯行の手口別に見ると,特殊詐欺(81.5%),通帳等・携帯電話機の詐取(79.5%)及び保険金詐欺(90.4%)は,同種前科を有しない者の構成比が高かったが,無銭飲食等は,その構成比は37.2%にとどまり,同種前科5回以上を有する者が17.4%に上った。
イ 犯行の態様等
(ア) 被害額
 全対象者(異なる手口で2件以上の詐欺を行っていた者を除く。)について,調査対象事件の詐欺被害額別(1人の対象者が2件以上の詐欺を行っていた場合はその合計金額をいい,複数の対象者による共犯事件については,それぞれの対象者に詐欺被害額を計上している。)構成比を見ると,特殊詐欺(出し子がATM から引き出した現金を含む。)では,1,000万円以上5,000万円未満(27.4%)が最も高く,次いで,100万円以上500万円未満(24.2%),「なし」(22.2%),500万円以上1,000万円未満(12.0%),1億円以上(6.2%)の順であり,「なし」を除いて10万円未満はいなかった。
(イ) 犯行の動機・理由
 今回の特別調査では,(特殊)詐欺に至る動機・理由及び背景事情・原因(以下「動機・背景事情」という。)として想定し得る項目をあらかじめ複数設定した上で,主として,全対象者調査では,裁判書の記載内容を,確定記録調査では,これに加えて調査対象者の捜査段階及び裁判時における供述内容を基に,犯行に至った動機・背景事情として前記項目に該当するものを選別して集計(重複計上。以下同じ。)した。
 図6は,全対象者(動機・理由が不詳の者を除く。)が詐欺を行った動機・理由を総数・犯行の手口別・年齢層別に見たものである。
 総数では,「金ほしさ」(60.4%),「生活困窮」(20.5%),「友人等からの勧誘」(19.1%),「軽く考えていた」(3.3%)の順に割合が高かった。犯行の手口別に見ると,特殊詐欺では,「金ほしさ」(70.1%)の割合が最も高く,次いで,「友人等からの勧誘」(36.1%),「生活困窮」(7.2%)の順であったが,他の手口と比べると,「友人等からの勧誘」の割合が高く,「生活困窮」の割合が低かった。また,「軽く考えていた」(5.8%)の割合は,総数(3.3%)及び他の手口より高かった。無銭飲食等では,「生活困窮」(51.4%)の割合が顕著に高く,「金ほしさ」(9.7%)の割合が総数及び他の手口より顕著に低かった。
 年齢層別に見ると,いずれの年齢層でも,「金ほしさ」の割合が最も高かった。それに次いで高い割合を占めたのは,30歳未満の者では「友人等からの勧誘」(26.1%)であったが,その他の年齢層では「生活困窮」であった。特に,50〜64歳の者及び65歳以上の者では,動機・理由に「生活困窮」があった者が約3分の1を占めた。
(ウ) 科刑状況
 全対象者に対する有期の懲役の科刑状況別構成比を見ると,総数では,全部実刑の者(一部執行猶予の者はいなかった。)が50.6%であり,詐欺の令和2年の地方裁判所における全部実刑の者の構成比(47.2%)

図6 全対象者 犯行動機・理由(総数・犯行の手口別・年齢層別)


とおおむね同程度であった。総数について,実刑の刑期を見ると,2年以上3年以下の者(22.0%),3年を超え5年以下の者(12.4%),1年以上2年未満の者(10.0%),5年を超え10年以下の者(3.6%)の順に構成比が高かった。
 犯行の手口別に見ると,全部実刑の者の構成比は,無銭飲食等(69.4 %) が最も高く, 次いで, 特殊詐欺(67.3 %), 保険金詐欺(25.0%),通帳等・携帯電話機の詐取(17.5%)の順であった。
3 特殊詐欺事犯者の調査の結果
(1) 特殊詐欺事件の概要
 確定記録調査の対象者(202人。以下「確定記録調査対象者」という。)が行った特殊詐欺には,1人の確定記録調査対象者が複数件の特殊詐欺を行った場合があるほか,複数の確定記録調査対象者が共に同一の者を被害者とする特殊詐欺を行った場合があるため,被害者や主要な事実等が共通する事件の数を除くと,その件数は336件である(以下,特に断りのない限り,これを「特殊詐欺事件」という。)。
 特殊詐欺事件の犯行類型別構成比は,オレオレ詐欺(59.2%),金融商品詐欺(8.3%),架空料金請求詐欺(6.3%)の順に高く,融資保証金詐欺,交際あっせん詐欺及びキャッシュカード詐欺盗はなかった。
 特殊詐欺事件(架け子が詐称した身分が不詳のものを除いた335件)について,架け子が詐称した身分(複数の身分を詐称した場合,最初に又は主に詐称した身分)別の構成比を見ると,家族・親族を詐称した事件が約6割(「被害者の子・孫」(54.0%),「その他の親族」(4.8%))に上っており,それ以外では「企業等の社員・従業員」(37.3%)が高かった。
(2) 特殊詐欺事犯者(確定記録調査対象者)の特徴
ア 基本的属性
 特殊詐欺の犯行グループは,「主犯・指示役」を中心として,電話を繰り返しかけて被害者をだます「架け子」,自宅等に現金等を受け取りに行く「受け子」,被害者からだまし取るなどしたキャッシュカード等を用いてATM から現金を引き出す「出し子」,犯行に悪用されることを承知しながら,犯行拠点をあっせんしたり,他人名義の携帯電話や預貯金口座等を調達する「犯行準備役」等が役割を分担し,組織的に犯行を敢行している。
 確定記録調査対象者(役割が不詳の者等6名を除く196人)について,その役割に着目して類型化すると,「受け子・出し子」が46.4%,「犯行準備役」が15.8%,「主犯・指示役」が9.7%,「架け子」が28.1%であった。
 確定記録調査対象者の犯行時の年齢層を総数・役割類型別に見ると,総数,「架け子」,「犯行準備役」及び「受け子・出し子」は,いずれも30歳未満の者が過半数を占め,次いで,30歳代の者,40歳代の者の順であったが,「主犯・指示役」は,30歳代の者(57.9%),30歳未満の者(31.6%),40歳代の者(10.5%)の順であった。
 検挙時の保護処分歴を見ると,総数及びいずれの役割類型においても,保護処分歴を有しない者の構成比が60〜70%台を占めるが,「主犯・指示役」が61.1%と最も低かった。他方,役割類型別に保護処分歴を有する者が占める構成比を見ると,少年院送致歴を有する者の構成比は,「主犯・指示役」(27.8%)が最も高く,保護観察処分歴を有する者の構成比は,「架け子」(20.4%)が最も高かった。
 検挙時の暴力団加入状況を見ると,総数では非加入の者の構成比(80.0%)が最も高く,次いで,準構成員・周辺者(11.0%),構成員(5.2%),元構成員等(3.9%)の順であった。役割類型別に構成員の構成比を見ると,「主犯・指示役」(23.5%),「犯行準備役」(7.7%)及び「架け子」(5.3%)よりも高く,「受け子・出し子」には,構成員がいなかった。また,役割類型別に構成員,準構成員・周辺者及び元構成員等の合計人員の構成比を見ると,「主犯・指示役」(47.1%)及び「犯行準備役」(46.2%)は,「受け子・出し子」(11.4%)及び「架け子」(7.9%)よりも顕著に高かった。
イ 犯行の態様等
 確定記録調査対象者が行った特殊詐欺の事件数(判決で認定された事件のうち,特殊詐欺に該当する事件の総数をいう。複数の被害者がいる事件は異なる事件として計上している。)別構成比を見ると,「架け子」(43.6%)及び「主犯・指示役」(42.1%)は,事件数が5件以上の者の構成比が最も高く,事件数が1件である者の構成比は最も低かった。他方,「受け子・出し子」(54.9%)及び「犯行準備役」(45.2%)は,事件数が1件である者の構成比が最も高かった。
 確定記録調査対象者(報酬の有無が不詳の者を除く。)のうち共犯者がいる者(193人)について,報酬の有無を見ると,「主犯・指示役」及び「犯行準備役」の全員に報酬があり,「架け子」及び「受け子・出し子」のいずれも,報酬があった者の構成比が9割を超えた。
 確定記録調査対象者(報酬を受け取った又は受け取る約束をしていた者のうち,報酬額が不詳の者を除く。)のうち共犯者がいる者(175人)について,報酬額(複数の事件がある場合は,報酬額の合計をいう。)別構成比を見ると,報酬額100万円以上の者は,「主犯・指示役」では42.9%,「架け子」では34.7%であり,「受け子・出し子」では2.4%にとどまった。他方,約束のみ(報酬を受け取る約束をしていたものの,実際には受け取っていないことをいう。)の者は,「受け子・出し子」では56.1%,「犯行準備役」では41.7%であった。
ウ 犯行の動機・背景事情
 確定記録調査対象者(動機・理由が不詳の者を除く。)が特殊詐欺に及んだ動機・理由は,図7のとおりである。
 総数及びいずれの役割類型についても,「金ほしさ」及び「友人等からの勧誘」の割合が突出して高かった。総数(66.1%)及び「受け子・出し子」(78.4%)は,「金ほしさ」の割合が最も高く,「架け子」は,「友人等からの勧誘」の割合が最も高く(67.3%),「主犯・指示役」及び「犯行準備役」は,「金ほしさ」及び「友人等からの勧誘」の割合が同率で最も高かった(「主犯・指示役」では53.3 %,「犯行準備役」では57.1%)。また,「友人等からの勧誘」は,「受け子・出し子」では23.9%であり,総数及び他の役割類型よりも低かった。
 「金ほしさ」及び「友人等からの勧誘」を除くと,「主犯・指示役」では「所属組織の方針」の割合(13.3%)が他の役割類型よりも高く,「受け子・出し子」では「軽く考えていた」(10.2%),「だまされた・脅された」(8.0%),「生活困窮」(6.8%)の割合が他の役割類型よりも高かった。
 確定記録調査対象者(背景事情が不詳の者を除く。)が特殊詐欺に及んだ背景事情は,図8のとおりである。
 総数及びいずれの役割類型においても,「無職・収入減」,「不良交友」及び「借金」の割合が高く,経済状況や交友状況が背景事情の多くを占めた。役割類型ごとに見ると,「主犯・指示役」,「架け子」及び「犯行準備役」は,「不良交友」,「無職・収入減」,「借金」の順に高く,「受け子・出し子」は,「無職・収入減」(70.7%)が顕著に高く,次いで,「借金」(26.8%),「不良交友」(22.0%)の順であった。

図7 特殊詐欺事犯者 犯行動機・理由(総数・特殊詐欺の役割類型別)



図8 特殊詐欺事犯者 背景事情(総数・特殊詐欺の役割類型別)


(3) 特殊詐欺事件の被害状況等
ア 被害者の年齢層
 被害者の年齢が不詳の事件を除く特殊詐欺事件(339件。一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している(以下,(3)において同じ。)。)について,事件当時の被害者の年齢層別構成比を見ると,高齢者の事件が86.1%を占め,特に75歳以上の者の事件が56.3%を占めた。
イ 被害者の居住状況
 被害者の同居人の有無及び被害者の年齢が不詳の事件を除く特殊詐欺事件295件について,被害者が最初に犯人グループと接触したときの被害者の同居人の有無別構成比を見ると,総数では,被害者が単身居住であった事件は30.8%であった。被害者に同居人がある事件について,その同居相手を見ると,配偶者及びその他の親族の構成比(配偶者以外の親族のみと同居している場合も含む。)が最も高く(41.7%),次いで,配偶者のみ(26.8%),親族以外の者(0.7%)の順であった。被害者の年齢層別に見ると,被害者が単身居住であった事件の構成比は,70歳以上(34.3%),65〜69歳(33.3%),40歳代(16.7%)の順であった。65〜69歳及び70歳以上については,被害者が単身居住であった事件及び同居相手が配偶者のみの事件の合計が,それぞれ全体の66.7%,59.7%を占めた。
ウ 犯人からの接触状況
 被害者への最初の連絡方法が不詳の事件を除く特殊詐欺事件340件について,犯人グループから被害者への最初の連絡方法別構成比を見ると,固定電話(86.2%)と携帯電話(7.6%)であった。
エ 被害者の相談状況
 被害者の相談の有無が不詳の事件を除く特殊詐欺事件について,被害者が相談(被害者が,犯人グループからの連絡を受けてから金品を詐取されるまでの間に,連絡を受けた内容を誰かに話すことをいう。)した状況等を既遂事件(235件)・未遂事件(100件)別に見ると,「相談あり」の構成比は,既遂事件(15.7%)と未遂事件(81.0%)で顕著な差があった。被害者が相談した事件について,相談した相手の内訳を見ると,既遂事件(37件)は,64.9%が「同居の家族・親族」に相談していたが,金品を詐取されるに至った。未遂事件(81件)の「同居していない家族・親族」に相談した事件の構成比(29.6%)は,既遂事件(13.5%)よりも高く,「金融機関職員」に相談した6人は,全員が未遂事件であった。
 未遂事件(100件)について,最初に詐欺に気付いた者別の構成比を見ると,被害者自身である事件が過半数(52.0%)を占め,次いで,「同居の家族・親族」(14.0%),「金融機関職員」(12.0%),「同居していない家族・親族」(9.0%)の順であった。
(4) 科刑状況
 確定記録調査対象者について,有期の懲役の科刑状況別構成比を見ると,総数では,全部実刑の者(一部執行猶予の者はいなかった。)の構成比(66.8%)は,令和2年における地方裁判所における詐欺の全部実刑(一部執行猶予を含む。)の者の構成比(47.2%)よりも高かった10
 特殊詐欺の事件数別に見ると,全部実刑の者の刑期は,1件から4件までは,いずれも2年以上3年以下の者の構成比が最も高く,次いで,1件から3件までは,3年を超え4年以下の者(1件では1年以上2年未満の者と,3件では5年を超え10年以下の者とそれぞれ同率)の順であった。他方,5件以上では,3年を超え4年以下の者(32.7%)の構成比が最も高く,次いで,5年を超え10年以下の者(25.0%),4年を超え5年以下の者(17.3%),2年以上3年以下の者(13.5%)の順であった。
 特殊詐欺の役割類型別に見ると,全部実刑の者の構成比は,「主犯・指示役」(84.2%),「架け子」(83.6%),「犯行準備役」(64.5%),「受け子・出し子」(54.9%)の順に高かった。全部実刑の者の刑期を見ると,5年を超え10年以下の者及び4年を超え5年以下の者の構成比は,「主犯・指示役」,(それぞれ21.1%)が最も高く,次いで,「架け子」(16.4%,7.3%),「犯行準備役」(16.1%,6.5%),「受け子・出し子」(1.1%,なし)であった。

第8  おわりに(特殊詐欺対策や詐欺事犯者の処遇の在り方についての考察)
1 特殊詐欺の撲滅に向けた取組
(1) 徹底的な取締りの必要性
 特殊詐欺の撲滅のためには,まずは,特殊詐欺事犯を検挙し,犯人グループを撲滅することが重要である。特に,犯人グループにとって,預貯金口座や携帯電話は,特殊詐欺の犯行ツールとして不可欠であり,今回の特別調査でも,調査対象事件総数の13.7%を通帳等・携帯電話機の詐取が占めていた。そのため,特殊詐欺を助長し得る手口については,詐欺の幇助等だけでなく,携帯電話不正利用防止法,犯罪収益移転防止法等の各種法令を駆使して徹底した取締りに当たる必要がある。また,特殊詐欺事件の約9割について,共犯者に氏名不詳の者が含まれたという特別調査の結果を踏まえると,特殊詐欺の全容解明に向け,刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)により導入・拡充された諸制度(犯罪捜査のための通信傍受,刑事免責制度等)の活用等も重要である。
(2) 特殊詐欺を実行する犯罪組織への参加を食い止めるための方策
 犯人グループが現金を獲得するために必要不可欠な存在である「受け子・出し子」として犯人グループへ参加する者を根絶させることは,特殊詐欺の撲滅に向けた一つの方策となり得る。
 特別調査の結果,特殊詐欺事犯者の役割類型の中で最も多かった「受け子・出し子」については,特殊詐欺に及んだ背景事情として「無職・収入減」がある者,動機・理由として「金ほしさ」がある者の割合が高いことから,被害者等との直接の対面や防犯カメラによる捕捉等により,他の役割類型よりも検挙される可能性が高いにもかかわらず,経済的利益を求めて犯行に加担する者が多いことがうかがえる。
 しかし,特別調査によれば,「受け子・出し子」の約9割の者が報酬を受け取るか受け取る約束をしていたものの,実際に報酬を得た者は半分に満たず,報酬を得られたとしても高額な報酬を得た者はまれであった。それどころか,犯人グループ内では従属的な立場である「受け子・出し子」であっても,その約半数が全部実刑となっているのが実態であるから,「受け子・出し子」として特殊詐欺に加わることが,決して「割に合う」犯罪ではないと認識させることが有効と思われる。そして,「受け子・出し子」の約6割を30歳未満の若年者層が占めている上,約3割が保護処分歴を有していたことを考えると,その機会としては,罪名が詐欺であるか否かを問わず,保護観察や少年院における指導の一環として行う余地もあり得ると思われる(これらは,「受け子・出し子」以外の役割類型の者についても,基本的に当てはまると思われる。)。
(3) 特殊詐欺の被害を防止するための方策
 特殊詐欺については,これまでも各種の広報啓発活動が行われているところではあるが,令和2年における特殊詐欺の認知件数のうち,女性が被害者のものが約4分の3を占めており,特に,高齢女性が全体の約3分の2を占めていることを踏まえると,主要な被害者層である高齢女性やその家族等に訴求するように工夫された広報啓発活動が必要と思われる。
 もっとも,いかに広報啓発活動が行われても,実際にだましの電話に直面した被害者や同居の家族・親族が冷静さを保つのは困難な場合がある。そのため,同居していない家族・親族とのコミュニケーションを深めておくなど,相談しやすい環境が確保されるのが望ましい。さらに,そのような環境の確保が難しい被害者も少なくないと思われるところ,特別調査の結果,未遂にとどまった特殊詐欺事件の12%は,金融機関職員が最初に詐欺に気付いたものであるなど,金融機関職員等が特殊詐欺の被害防止に貢献している実態が明らかとなった。そのため,金融機関,コンビニエンスストア等の幅広い事業者の被害発生防止に向けたより一層の取組も重要である。
 加えて,犯人グループから被害者への最初の連絡方法は9割弱が固定電話であったという特別調査の結果を踏まえると,電話機の呼出音が鳴る前に,犯人に対し,犯罪被害防止のために通話内容が自動録音される旨の警告アナウンスを流し,犯人との通話内容を自動録音するなどの機器が被害防止のために有効である。
2 詐欺事犯者の特性等を踏まえた処遇の充実
(1) 特殊詐欺事犯者
 特殊詐欺の検挙人員の多くは,30歳未満の若年者層が占めている上,特別調査の結果,特殊詐欺事犯者は,主に,「金ほしさ」や「友人等からの勧誘」を動機・理由として安易に犯行に加担するという実態が浮かび上がっている。加えて,犯人グループが役割分担し合って犯行に及んでいることから,被害者に多大で深刻な経済的・精神的苦痛を与えているにもかかわらず,「受け子・出し子」・「架け子」共に,自らがその原因を作ったことに思いが至っていない者も少なくないと思われる。そのため,特殊詐欺事犯者の改善更生のためには,刑事施設や少年院において,不良な交友関係からの離脱について指導や,被害者の心情の理解を深めさせて自己の責任を自覚するとともに,事件に至るまでの自己の問題点等を振り返らせ,健全な金銭感覚,勤労意欲や職業観を身に付けさせるための就労支援や職業訓練など再犯防止に向けた指導の取組をより一層充実させることが重要である。
(2) 無銭飲食等の詐欺事犯者
 特別調査の結果,無銭飲食等の詐欺事犯者については,「生活困窮」が動機・理由となっている者が約半数を占めていることなどから,それらの者には,生活困窮の状況を改善するために,生活状況を改善することが重要である。そのため,早期の段階から安定した生活環境に向けての支援,勤労意欲や能力を高めるための就労支援のほか,動機や背景事情等を考慮した上で生活態度に関する指導等を行うことが重要である。
(法務省法務総合研究所研究部室長研究官)

1 特に断らない限り,「詐欺」は,刑法246条に規定される罪のほか,同法246条の2に規定される電子計算機使用詐欺罪及び準詐欺罪(同法248条)を含む。
2 定義との関係で,各種統計において,特殊詐欺は,「詐欺」だけではなく,「恐喝」又は「窃盗」として計上されるものが含まれ得ることに留意する必要がある。
3 特殊詐欺の各類型について集計を始めた時期が異なる点等には留意する必要がある。
4 平成16年法律第156号による刑法の改正(平成17年1月施行)により,有期刑の上限が15年から20年に,有期刑を加重する場合の長期の上限が20年から30年にそれぞれ引き上げられたこと,特殊詐欺の認知件数が増加したのが平成15年頃以降であることに留意する必要がある。
5 令和2年については一部執行猶予の者も含み,一部執行猶予は,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。
6 氏名不詳の共犯者がいる場合には,裁判書等で「氏名不詳者ら」等と認定されている場合も含めて,氏名不詳の共犯者を「1人」と計上していることから,実際の共犯者数よりも少ない可能性があることに留意を要する。
7 全対象者の中には,詐欺以外の事件も含めて有罪判決を受けたものが含まれていることに留意する必要がある。
8 無銭飲食等は同種前科を有する者の構成比が高いことに留意する必要がある。
9 報酬額は,裁判書等の資料から読み取ることのできる最低金額であり,確定記録調査対象者自身の供述等の証拠によることも少なくないと思われる点等に留意する必要がある。
10 なお,特殊詐欺には,詐欺以外の罪名のものが含まれ得ることに留意する必要がある。
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