日本刑事政策研究会
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最近の犯罪動向と犯罪者の処遇─令和2年版犯罪白書から─
田村 太郎
はじめに
 犯罪白書は,犯罪の防止と犯罪者の改善更生を軸として,刑事政策の策定とその実現に資するため,犯罪情勢と犯罪者の処遇の実情を分析・報告している。令和2年版犯罪白書も,統計資料に基づき,ルーティン部分(第1〜第6編)において,令和元年(平成31年1月1日から同年4月30日を含む。以下同じ。)を中心とする最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観・分析し,特集部分(第7編)において,薬物犯罪について概観・分析した。
 このうち,本稿においては,上記ルーティン部分について,その要点を紹介するが,法令名・用語・略称については,本白書で用いられたものを使用している。

1 最近の犯罪動向
(1)刑法犯
ア 認知件数
 令和元年における刑法犯の認知件数は,74万8,559件(前年比8.4%減)であった。罪名別の構成比では,窃盗(71.1%)が最も多く,次いで,器物損壊(9.6%),詐欺(4.3%),暴行(4.0%)の順であった。刑法犯の認知件数は,平成14年に戦後最多の約285万件に達したが,平成15年以降,毎年減少し続け,平成27年以降,戦後最少を毎年更新中である。認知件数の減少の主な要因は,刑法犯の7割以上を占める窃盗の認知件数が大幅に減少し続けたことにあるが,窃盗を除く刑法犯の認知件数も,平成17年以降,減少し続けており,令和元年は21万5,994件であった(図1(白書1-1-1-1図)参照)。
 なお,刑法犯に危険運転致死傷・過失運転致死傷等を合わせた認知件数も減少を続けており,令和元年は111万7,741件(前年比9.2%減)であった。

図1 刑法犯 認知件数・検挙人員・検挙率の推移


イ 検挙人員と検挙率
 令和元年における刑法犯検挙人員は,19万2,607人(前年比6.5%減)であった。罪名別の構成比では,窃盗(48.9%)が最も多く,次いで,暴行(13.7%),傷害(10.4%),横領(遺失物等横領を含む。)(6.9%)の順であった。刑法犯検挙人員は,平成16年(約39万人)をピークとして減少し続けている。
 令和元年における刑法犯の検挙率は39.3%(前年比1.4pt 上昇)であった。刑法犯の検挙率は,平成13年に戦後最低(19.8%)を記録したが,平成14年から回復傾向にあり,一時横ばいで推移した後,平成26年以降再び上昇している。
ウ 主な罪名別の特徴
 【窃盗】認知件数は,戦後最多を記録した平成14年をピークに減少し続け,平成26年以降は毎年戦後最少を更新しており,令和元年は53万2,565件(前年比8.5%減)であった。検挙率は,平成14年から上昇に転じ,令和元年は34.0%(同1.2pt 上昇)であった。手口別構成比を見ると,認知件数では自転車盗(31.7%)が最も高く,検挙件数では万引き(36.4%)が最も高い。なお,令和元年の認知件数を見ると,特殊詐欺に関係する手口である払出盗が前年比52.0%増,職権盗が同189.9%増とその増加が顕著であった。
 【殺人】認知件数は,平成15年(1,452件)をピークとして減少傾向にあるが,令和元年は950件(前年比3.8%増)であった。検挙率は,安定して高い水準にあり,令和元年は99.5%(同2.6pt 上昇)であった。
 【強盗】認知件数は,平成16年から減少傾向にあり,令和元年は1,511件(前年比15.4%減)と戦後最少を記録した。検挙率は,平成17年から上昇傾向にあり,令和元年は87.8%(同0.5pt 上昇)であった。認知件数の手口別構成比では,路上強盗(21.2%)が最も高く,次いで,コンビニ強盗(11.1%),住宅強盗(9.7%)の順であった。
 【傷害】認知件数は,平成15年(3万6,568件)をピークとして減少傾向にあり,令和元年は2万1,188件(前年比5.9%減)であった。
 【暴行】認知件数は,平成18年以降おおむね高止まりの状況にあり,令和元年は3万276件(前年比3.5%減)であった。
 【脅迫】認知件数は,平成24年に急増して以降は3,000件台で推移しており,令和元年は3,657件(前年比4.5%増)であった。
 【詐欺】認知件数は,平成17年(8万5,596件)をピークとして減少に転じたものの,平成24年から増加傾向を示し,その後,平成30年からは再び減少しており,令和元年は3万2,207件(前年比16.4%減)であった。
 かねて社会問題となっている特殊詐欺(被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ,指定した預貯金口座へ振り込ませるなどの方法により,不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(恐喝及び窃盗を含む。))について見ると,令和元年における認知件数は1万6,851件(前年比5.6%減)であり,検挙件数は,6,817件(同22.8%増)であった。特殊詐欺の手口を見ると,主要手口(オレオレ詐欺,架空請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金等詐欺)によるものの認知件数は1万2,981件(前年比20.4%減),その他の手口によるものの認知件数は93件(同48.9%減)と減少した一方,キャッシュカード詐欺盗(特殊詐欺のうち,警察官等を装って被害者に電話をかけ,「キャッシュカードが不正に利用されている」等の名目により,キャッシュカードを準備させた上で,隙を見るなどし,同キャッシュカード等を窃取するもの)の認知件数は3,777件(同180.2%増)と大きく増加した。令和元年の特殊詐欺全体としての被害総額は,約196億円(前年比32.9%減)であった(なお,ATM 引出し額を含めると約316億円であった。)。
 【強制性交等・強制わいせつ】強制性交等(刑法改正(平成29年7月施行)前は強姦・準強姦であり,上記改正後は強姦,準強姦,準強制性交等及び監護者性交等を含む。)の認知件数は,平成15年に2,472件を記録した後,減少し続けていたが,平成24年及び25年にやや増加するとともに,平成29年から増加し,令和元年は1,405件(前年比7.5%増。なお,上記改正による対象拡大(被害者の性別を問わなくなり,かつ,肛門性交・口腔性交も対象行為となったほか,監護者性交等が新設された。)に留意する必要がある。)であった。このうち,女性を被害者とするものは1,355件であった。令和元年の強制性交等の検挙件数は1,311件(同10.2%増)であり,検挙率は93.3%(同2.3pt 上昇)であった。なお,監護者性交等の認知件数及び検挙件数は共に87件(検挙率100.0%)であった。
 強制わいせつ(上記改正前は準強制わいせつを含み,上記改正後は準強制わいせつ及び監護者わいせつを含む。)の認知件数は,平成15年に1万29件を記録した後減少し,平成22年からは増加傾向にあったものの,平成26年から再び減少に転じ,令和元年は4,900件(前年比8.2%減。なお,上記改正による対象縮小(口腔性交・肛門性交が強制性交等の対象行為となった。)・拡大(監護者わいせつの新設)に留意する必要がある。)であった。令和元年の強制わいせつの検挙件数は3,999件(同6.7%減)であり,検挙率は81.6%(同1.3pt 上昇)であった。なお,監護者わいせつの認知件数・検挙件数は, それぞれ60件・54件(検挙率90.0%)であった。
 
(2)特別法犯
 令和元年における特別法犯の検察庁新規受理人員は,32万8,053人(前年比7.7%減)であった。このうち,道路交通法違反が23万9,500人であり,特別法犯全体の73.0%を占める。
 道交違反(道路交通法違反及び保管場所法違反をいう。)を除く特別法犯の検察庁新規受理人員は,平成19年(11万9,813人)をピークとして減少傾向にあり,令和元年は8万7,868人(前年比2.3%減)であった。罪名別で見ると,覚醒剤取締法(構成比15.2%),軽犯罪法(同8.7%),廃棄物処理法(同8.0%),入管法(同7.7%),大麻取締法(同7.1%)の各違反の順であり,このうち,特別法犯の検察庁新規受理人員が全体として前年より減少した中で前年より増加したのは,入管法違反(6,798人。前年比15.0%増),大麻取締法違反(6,255人。同17.2%増)であった。

2 犯罪者の処遇
(1)検察
 令和元年における検察庁新規受理人員の総数は,90万752人(前年比8.5%減)であった。罪種別の構成比を見ると,過失運転致死傷等及び道交違反がその7割弱(67.8%)を占めている。令和元年における検察庁終局処理人員は90万7,273人(同8.9%減)であり,その内訳は,公判請求8万1,186人,略式命令請求20万1,658人,起訴猶予51万3,757人,その他の不起訴6万2,920人,家庭裁判所送致4万7,752人であった。公判請求人員は,平成17年から減少傾向にあり,令和元年は前年より3.1%減少した。
(2)裁判
 裁判確定人員は,平成12年(98万6,914人)から毎年減少し,令和元年は,24万5,537人(前年比11.0%減)であり,最近10年間でおおむね半減している。有期懲役判決が確定した人員(4万6,086人)について,全部執行猶予率(有期懲役人員に占める全部執行猶予人員の割合)は60.9%であり,一部執行猶予付判決が確定した人員は1,452人(同7.3%減)であった。また,無罪確定者は96人(裁判確定人員総数の0.039%)であった。
 令和元年の通常第一審における終局処理人員を罪名別に見ると,地方裁判所(4万7,704人)では,窃盗(構成比23.1%)が最も多く,次いで,覚醒剤取締法違反(同14.4%),道交違反(同12.2%),自動車運転死傷処罰法違反(同10.1%)の順であった。簡易裁判所(4,341人)では,窃盗(同82.6%)が最も多かった。令和元年に一部執行猶予付判決の言渡しを受けた人員は1,363人であり,罪名別では,覚醒剤取締法違反(90.2%)がほとんどを占め,次いで,大麻取締法違反(2.7%),窃盗(2.6%)の順であった。
 令和元年の裁判員裁判対象事件の第一審における判決人員は1,001人であり,このうち,死刑が2人,無期懲役が18人,無罪が13人であった。また,有期懲役のうち,185人が全部執行猶予(うち89人が保護観察付)で,3人が一部執行猶予(全員が保護観察付)であった。
(3)矯正
 入所受刑者の人員は,平成19年から減少し続け,令和元年は1万7,464人(前年比4.4%減)と戦後最少を更新した。同年末現在の刑事施設における被収容者の収容人員は,4万8,429人(前年末比4.2%減)であり,収容率(既決)は60.6%(同2.7pt低下)であった。
 令和元年の入所受刑者の罪名別構成比では,男女共に,窃盗が最も高く(男性33.4%・女性47.4%),次いで,覚醒剤取締法違反(男性24.2%・女性33.0%),詐欺(男性10.4%・女性6.8%),道路交通法違反(男性5.1%・女性2.3%)の順であった。入所受刑者の年齢層別構成比では,男女共に,40歳代が最も高く(男性26.4%・女性27.7%),女性は男性と比べて高齢者の構成比が高かった(男性12.2%・女性19.2%)。
 令和元年における出所受刑者(2万853人)について,満期釈放又は一部執行猶予の実刑部分終了により出所した者の比率は,41.7%(前年比0.1pt 上昇)であった。令和元年には,一部執行猶予受刑者1,493人(一部執行猶予の実刑部分刑期終了295人,仮釈放1,198人)が出所した。
(4)更生保護
 令和元年の出所受刑者は1万9,953人(前年比5.1%減)であった。このうち,一部執行猶予者(実刑部分の刑期終了者)は295人(同40.5%増),満期釈放者は8,018人(同5.9%減),仮釈放者は1万1,640人(全部実刑者1万442人(同7.7%減),一部執行猶予者1,198人(同20.8%増))であり,仮釈放率は,平成23年から平成30年まで上昇し続けていたが,令和元年は58.3%(同0.1pt低下)であった。
 令和元年の保護観察開始人員は,仮釈放者1万1,640人のほか,保護観察付一部執行猶予者1,419人(前年比45.7%増),保護観察付全部執行猶予者2,248人(同9.4%減)であった(いずれも事件単位の延べ人員である。)。
 保護観察付全部執行猶予者の保護観察開始人員(令和元年は2,248人)は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成28年以降を見ると減少し続けており,令和元年の全部執行猶予者の保護観察率は7.2%(前年比0.6pt低下)であった。

3 少年非行の動向と非行少年の処遇
 少年による刑法犯検挙人員(触法少年の補導人員を含む。)は,平成16年以降減少し続けており,令和元年は2万6,076人(前年比14.4%減)であった。少年人口比(10歳以上の少年人口10万人当たりの刑法犯検挙人員)も低下傾向が見られ,令和元年は233.4(同13.4%減)であった。少年による刑法犯検挙人員の罪名別構成比では,窃盗(56.1%)が最も多く,次いで,傷害(9.1%),遺失物等横領(8.8%)であった。
 道交違反に係るもの以外の少年保護事件の家庭裁判所新規受理人員も減少傾向にあり,令和元年は4万3,066人(前年比13.2%減)であった。少年鑑別所入所者の人員も,平成16年から減少し続け,令和元年は5,749人(同14.3%減)であった。
 少年院入院者の人員は,最近20年間では,平成12年(6,052人)をピークとして減少傾向にあり,令和元年は1,727人(前年比18.1%減)と昭和24年以降最少であった。また,令和元年の女子比は7.7%(同0.6pt低下)であった。
 保護観察処分少年(家庭裁判所の決定により保護観察に付されている者)の保護観察開始人員は,平成11年以降減少し続け,令和元年は1万1,823人(前年比8.7%減)であった。少年院仮退院者の保護観察開始人員は,平成15年以降減少傾向にあり,令和元年は2,053人(同4.3%減)であった。

4 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇
(1)交通犯罪
 令和元年における交通事故の発生件数は38万1,237件(前年比11.5%減),負傷者数は46万1,775人(同12.2%減)であった。交通事故の発生件数と負傷者数は,いずれも平成17年から減少し続けており,死亡者数も,平成4年(1万1,452人)をピークとして減少傾向にあり,令和元年は,昭和23年以降最少の3,215人(同317人減)であった。
 令和元年における危険運転致死傷の検挙人員は653人(前年比7.8%増)であり,うち致死事件は40人(同3人増)であった。
 令和元年における道交違反の取締件数は,573万7,175件(前年比4.5%減)であった。このうち,送致事件(非反則事件として送致される事件)の取締件数は,平成12年以降減少し続け,令和元年は24万1,391件(同8.3%減)であった。同年の送致事件を違反態様別に見ると,速度超過(構成比32.0%),酒気帯び・酒酔い(同10.5%),無免許(同7.7%)の順であり,酒気帯び・酒酔いは,前年よりも4.4%減少し(2万5,434件),平成期最多であった平成9年(34万3,593件)の約14分の1となっている。
(2)暴力団犯罪
 暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者)の刑法犯検挙人員は,平成15年以降減少傾向にあり,令和元年は8,445人(前年比14.0%減)であった。同年の刑法犯検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は,4.4%であった。罪名別では,傷害(1,823人),詐欺(1,448人),窃盗(1,434人),暴行(866人),恐喝(636人)の順に多く,全検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は,逮捕監禁(43.0%),賭博(41.8%),恐喝(41.4%),暴力行為等処罰法違反(35.7%)の順で高かった。
 暴力団構成員等の特別法犯検挙人員は,平成24年以降減少し続けており,令和元年は5,836人(前年比17.3%減)であった。同年の特別法犯検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は,9.4%であった。罪名別では,覚醒剤取締法(3,593人),大麻取締法(762人),風営適正化法(141人),銃刀法(137人)の各違反の順で多く,全検挙人員に占める暴力団構成員等の比率を見ると,暴力団対策法,暴力団排除条例の各違反は,いずれも100.0%であった。
(3)財政経済犯罪
 独占禁止法違反の検察庁新規受理人員は,平成18年以降,0〜30人台の範囲で増減を繰り返し,令和元年は0人であった。金融商品取引法の検察庁新規受理人員は,平成28年以降,50〜60人台の範囲で増減し,令和元年は57人(前年比6人増)であった。令和元年度の証券取引等監視委員会による同法違反の告発は,3件・9人(法人を含む。)であった。
(4)サイバー犯罪
 不正アクセス行為(不正アクセス禁止法11条に規定する罪)の認知件数は,最近20年間では増減を繰り返しながら推移し,令和元年は2,960件(前年比99.2%増)であった。また,不正アクセス行為後の行為の内訳を見ると,「インターネットバンキングでの不正送金等」(構成比61.1%)が最も多く,次いで,「インターネットショッピングでの不正購入」(同12.7%),「メールの盗み見等の情報の不正入手」(同11.1%)の順であった。
 サイバー犯罪のうち,インターネットを利用した詐欺や児童買春・児童ポルノ禁止法違反などコンピュータ・ネットワークを不可欠な手段として利用した犯罪の検挙件数は,平成29年から3年連続で増加し,令和元年は8,267件(前年比1.7%増)であった。性的な事件の検挙件数について見ると,児童ポルノに係る犯罪は1,575件(同13.7%増),青少年保護育成条例違反は1,038件(同12.1%増)であった。
(5)児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪
 児童虐待に係る事件(児童虐待防止法2条の規定する児童虐待により犯罪として検挙された事件)による検挙件数・検挙人員は,平成20年前後の緩やかな増加傾向に続き,平成26年以降は大きく増加し,令和元年は1,972件(前年比42.9%増)・2,024人(同42.6%増)であり,それぞれ平成15年(212件・242人)と比べると約9.3倍・約8.4倍であった(図2(白書4-5-1-1図)参照)。

図2 児童虐待に係る事件 検挙件数・検挙人員の推移(罪名別)


 配偶者からの暴力事案等の検挙件数について見ると,配偶者暴力防止法に係る保護命令違反の検挙件数は,平成27年以降減少傾向にあり,令和元年は71件(前年と同じ)であった。その一方で,他法令による検挙件数の総数は平成23年以降増加し続けており,令和元年は9,090件(平成22年の約3.9倍)であった。特に,暴行(5,384件。同約6.3倍)及び暴力行為等処罰法違反(314件。同約7.0倍)の検挙件数が大きく増加している。
 ストーカー規制法による警告の件数は,平成29年から減少し,令和元年は2,052件(前年比16.3%減)であった。他方,同法による禁止命令等の件数は,平成29年から急増し,令和元年は1,375件(同18.8%増。うち緊急禁止命令等は601件)であった。ストーカー事案の検挙件数は,平成24年以降高水準で推移しており,令和元年のストーカー規制法違反の検挙件数は864件(同0.7%減。平成23年の約4.2倍),刑法犯及び特別法犯(ストーカー規制法を除く。)による検挙件数は1,491件(同6.5%減。同約1.9倍)であった。なお,令和元年におけるストーカー事案に関する相談等件数(ストーカー規制法その他の刑罰法令に抵触しないものも含む。)は,2万912件であった。
(6)女性犯罪・非行
 女性の刑法犯検挙人員は,平成17年に戦後最多(8万4,175人)を記録した後,減少に転じ,令和元年は4万326人(前年比6.5%減)であった。検挙人員の女性比は,近年20〜21%で推移しており,令和元年は20.9%であった。令和元年における女性の刑法犯検挙人員を罪名別構成比で見ると,窃盗の割合が7割を超え(万引き55.7%・万引き以外の窃盗16.8%),男性の罪名別構成比(同21.6%・同21.0%)と比べて顕著に高く,次いで,傷害・暴行12.9%(男性の罪名別構成比27.1%)であった。
 女性入所受刑者の人員は,平成19年に若干減少した後はおおむね横ばいで推移していたが,平成28年から減少し続け,令和元年は1,718人(前年比2.9%減)であった。最近20年間の入所受刑者総数に占める女性比は上昇傾向にあり,平成24年からは9%台で推移している(平成12年は5.3%。令和元年は9.8%)。女性の入所受刑者の罪名別構成比では,窃盗の増加が著しく,平成24年以降,窃盗が覚醒剤取締法違反を抜いて最も高くなっている。
 女子の少年院入院者の人員は,平成13年までは増加傾向にあったが,その後は減少傾向にあり,令和元年は133人(前年比24.0%減)であった。少年院入院者に占める女子比は7.7%であった。非行名別に見ると,窃盗(29人),覚醒剤取締法違反(24人),傷害・暴行(17人)の順に多かった(なお,ぐ犯は19人。)。
(7)高齢者犯罪
 高齢者の刑法犯検挙人員は,平成20年(4万8,805人)をピークとして高止まりの状況にあったが,平成28年から減少傾向にあり,令和元年は4万2,463人(前年比5.1%減)であり,このうち,70歳以上の者は,高齢者の刑法犯検挙人員の72.4%に相当する3万763人(同2.0%減)であった。高齢者率は,他の年齢層の多くが減少傾向にあることからほぼ一貫して上昇し,平成28年からは20%を超えている(令和元年は22.0%(同0.3pt上昇))。女性の高齢者率は,平成29年(34.3%)まで増加した後,低下に転じ,令和元年は33.7%(同0.2pt 低下)であった。
 令和元年における高齢者の刑法犯検挙人員の罪名別構成比を見ると,窃盗の割合が高く(万引き52.4%・万引き以外の窃盗17.6%。全年齢層では同28.7%・同20.1%),特に,女性高齢者は,9割以上が窃盗(同75.6%・同14.6%)と顕著に高い(なお,男性高齢者では同41.5%・同19.1%)。
(8)外国人犯罪
 来日外国人による刑法犯の検挙件数は,平成17年(3万3,037件)をピークとして減少し続け,平成29年に一旦増加に転じたものの平成30年から再び減少に転じ,令和元年は9,148件(前年比4.4%減)であった(図3(白書4-8-2-1図)参照)。

図3 外国人による刑法犯 検挙件数・検挙人員の推移


 来日外国人による刑法犯の検挙件数の罪名別構成比を見ると,窃盗(57.0%),傷害・暴行(12.7%),詐欺(9.5%)の順に多かった。窃盗については,平成18年(2万3,137件)以降減少傾向にあり,令和元年は5,218件(前年比9.5%減)であった。傷害・暴行については,近年増加傾向にあり,令和元年は1,164件(同6.4%増)であった。
 来日外国人による特別法犯の検挙件数は,平成16年をピークとして平成24年まで減少していたが,平成25年からの増減を経て,平成28年から増加し続けており,令和元年は8,112件(前年比21.8%増)であった。このうち,主な罪名・罪種を見ると,入管法違反(5,897件),薬物関係法令違反(覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法,あへん法及び麻薬特例法の各違反。890件),風営適正化法違反(180件),売春防止法違反(24件)であった。
 令和元年における来日外国人被疑事件(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。)の検察庁新規受理人員(1万6,204人)の地域・国籍別構成比を見ると,ベトナム(27.7%),中国(27.4%),韓国・朝鮮(6.0%),フィリピン(5.6%),タイ(4.4%)の順に多かった。
(9)精神障害のある者による犯罪等
 令和元年における精神障害者等(精神障害者及び精神障害の疑いのある者)の刑法犯検挙人員は,1,977人(精神障害者1,280人,精神障害の疑いのある者697人)であり,罪名別では,傷害・暴行(568人)が最も多く,次いで,窃盗(505人)であった。また,同年における刑法犯検挙人員の総数に占める精神障害者等の比率は,1.0%であり,罪名別では,放火(15.2%),殺人(9.8%),脅迫(2.8%)の順に高かった。

5 再犯・再非行
 令和元年に刑法犯により検挙された者のうち,再犯者(前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり,再び検挙された者)は9万3,967人(前年比6.6%減)であり,初犯者は9万8,640人(同6.5%減)であった。
 刑法犯検挙人員のうち,再犯者の人員は,平成18年(14万9,164人)をピークとして漸減状態にあるのに対し,初犯者の人員は,平成16年(25万30人)をピークとして減少し続け,それらの間の減少ペースは,初犯者が再犯者を上回っていたことから,再犯者率(検挙人員に占める再犯者の人員の比率)は上昇傾向にあり,令和元年は48.8%(前年比0.0pt低下)であった(図4(白書5-2-1-1図)参照)。

図4 刑法犯 検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移


 刑法犯により検挙された成人のうち有前科者(道路交通法違反を除く犯罪の前科を有する者)は,平成19年から減少し続け,令和元年は4万8,528人(前年比6.4%減)であった。他方,刑法犯の成人検挙人員総数も減少していることから,有前科者率(刑法犯の成人検挙人員に占める有前科者の人員の比率)も,平成9年以降27〜29%台でほぼ一定しており,令和元年も28.1%であった。罪名別では,刑法犯全体(28.1%)と比べ,恐喝(54.8%),強盗(44.3%),詐欺(38.0%)の有前科者率が特に高い。
 令和元年に起訴された者の犯行時の身上を見ると,全部執行猶予中の者が6,518人(前年比190人減。うち1,005人が保護観察中),一部執行猶予中の者が349人(同218人増。うち341人が保護観察中),仮釈放中の者が526人(同156人減),保釈中の者が285人(同27人増)であった。
 令和元年の入所受刑者人員(1万7,464人)のうち,再入者の人員は1万187人(前年比6.6%減)であり,再入者率は58.3%(同1.3pt低下)であった。女性の再入者は856人(同1.4%減)であり,再入者率は男性と比べると低い49.8%であった。
 出所受刑者の再入所状況については,平成27年の出所受刑者の2年以内再入率(各年の出所受刑者人員のうち,出所後の犯罪により,出所年を1年目として2年目(翌年)の年末までに再入所した者の人員の比率)・5年以内再入率を見ると,18.0%・37.5%であり,平成22年の出所受刑者の10年以内再入率を見ると,44.7%であった(図5(白書5-2-3-6図)参照)。いずれの出所年の出所受刑者においても,満期釈放者は,仮釈放者よりも再入率が相当高く,入所度数が多い者は,少ない者に比べて再入率が高かった。
 平成27年の出所受刑者の5年以内再入率を罪名別に見ると,覚醒剤取締法違反(46.3%)及び窃盗(43.9%)が他の罪名と比べて高く,傷害・暴行(37.3%),詐欺(24.7%)がそれに続いた。

図5 出所受刑者の出所事由別再入率


 「再犯防止に向けた総合対策」(平成24年7月犯罪対策閣僚会議策定)において,刑務所出所者の2年以内再入率について,過去5年の平均値(20%)を基準として,令和3年までに20%以上減少させるという数値目標が設定されているところ,平成30年の出所受刑者の2年以内再入率は,16.1%(前年比0.7pt 低下)であった。なお,平成30年の出所受刑者のうち一部執行猶予受刑者は1,202人であり,このうち2年以内再入者は136人であった。
 再非行少年率(少年の刑法犯検挙人員に占める再非行少年(前に道路交通法違反を除く非行により検挙(補導)されたことがあり,再び検挙された少年)の人員の比率)は,平成10年から平成28年まで上昇し続けていたが,平成29年以降低下し,令和元年は34.0%(前年比1.5pt低下)であった。平成27年の少年院出院者について,5年以内の再入院率は16.0%,再入院・刑事施設入所率は22.7%であり,平成30年の少年院出院者の2年以内再入院率は9.7%,再入院・刑事施設入所率は10.9%であった。

6 統計上の犯罪被害
 令和元年において,人が被害者となった刑法犯の認知件数は58万2,008件(前年比9.0%減),男女別の被害発生率(人口10万人当たりの認知件数)は,男性620.6・女性310.2であり,いずれも平成14年の約4分の1以下であった。
 令和元年において,生命・身体に被害をもたらした刑法犯の被害者数は,2万5,123人(前年比5.7%減。うち死亡者700人,重傷者(全治1か月以上)2,564人)であり,財産犯(強盗,窃盗,詐欺,恐喝,横領及び遺失物等横領)による被害総額は,約1,193億円(同8.3%減。うち現金被害額約696億円(同1.0%減))であった。
 財産犯による被害総額を罪名別に見ると,窃盗によるもの(被害総額の53.1%),詐欺によるもの(同39.3%)の順に多かった。このうち,現金被害額だけを見ると,詐欺によるものが最も多く,財産犯による現金被害総額の61.2%を占めている。

(法務省法務総合研究所研究部室長研究官)
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