日本刑事政策研究会
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少年非行
―平成17年版犯罪白書から―
近藤 日出夫


1 はじめに
 本年の犯罪白書は、「少年非行」を特集として取り上げた。犯罪白書が少年非行を特集テーマとして取り上げるのは、平成10年版以来であり、7年ぶりのこととなる。
 以下では、平成17年版犯罪白書から、平成16年の犯罪の動向及び特集の内容を中心に、その要点を紹介する。本稿の記述のうち、白書の内容の紹介を超える部分は、いうまでもなく筆者個人の見解である。

2 犯罪の動向
 (1) 刑法犯認知件数
 平成16年における警察による刑法犯の認知件数は、342万7,606件(前年比6.0%減)、一般刑法犯(交通関係業過を除く刑法犯) の認知件数は、256万3,037件(同8.1%減) であった。いずれも2年連続で減少しているが、戦後全体を通じてみると、なお高い水準にあるといえる(図1参照)。罪名別の動向を見ると、窃盗が前年比25万4,270件(11.4%) 減少しており、これが全体を減少させた大きな要因となっている。

 (2)刑法犯検挙人員
 刑法犯の検挙人員は、平成11年以降毎年戦後最多を更新し、16年には、128万9,416人(前年比1.5%増) と戦後最多を記録した。

 (3)刑法犯検挙率
 刑法犯の認知件数の急増に検挙が追い付かず、検挙率は、近年低下傾向が続いていたが、平成14年以降、やや回復の兆しを見せ、16年には、刑法犯全体で44.7% (前年比3.4ポイント上昇)、一般刑法犯で26.1% (同2.8ポイント上昇) と回復したが、これは、例年刑法犯の認知件数の約6割を占めてきた窃盗の検挙率が13年の15.7%から16年の22.6%まで年々回復したことによるものである。窃盗を除く一般刑法犯の検挙率の低下傾向は改善されておらず、16年は37.8%であった。



 (4)外国人の犯罪
 来日外国人の一般刑法犯の検挙件数は、3万2,087件(前年比17.7%増) であった。来日外国人による犯罪は、当初、首都圏において集中的に発生したと指摘されているが、近年、地方に拡散する傾向がうかがわれ、特に、一部地方では急激に増加している。

 3 犯罪者の処遇
 (1)検察
 平成16年における検察庁新規受理人員は、216万3,854人(前年比769人増)であり、その内訳は、刑法犯が127万596人(58.7%)、特別法犯が89万3,258人(41.3%) であった。10年以降刑法犯が増加し、特別法犯が減少する傾向が続いており、16年も刑法犯が前年より2万5,205人増加したのに対し、特別法犯は前年より2万4,436人減少した。
 平成16年における検察庁終局処理人員は、218万3,811人(前年比4,448人増)であり、その内訳は、公判請求が14万8,939人(6.8%)、略式命令請求が75万4,128人(34.5%)、起訴猶予が97万7,616人(44.8%)、その他の不起訴が6万4,054人(2.9%)、家庭裁判所送致が23万9,074人(10.9%) であった。公判請求人員は、10年連続で増加しており、16年は、前年より2,442人増加した。

 (2)裁判
 平成16年の裁判確定人員は、83万7,528人(前年比4.5%減) であった。このうち、死刑確定者は、14人と最近10年間で最多となった。また、無期懲役確定者は、115人であり、10年以降、増加傾向が続いている。

 (3)矯正
 平成16年12月31日現在、行刑施設の収容人員は、7万6,413人(このうち既決の収容人員は6万4,931人) であった。行刑施設全体の収容率は、105.9% (前年比0.1ポイント上昇) であり、既決の収容率は、117.6% (同1.0ポイント上昇) であった。収容定員の増加が図られたにもかかわらず、依然として、収容率は前年を上回り、過剰収容の深刻度が増している。

 (3)保護
 平成16年の保護観察新規受理人員は、6万8,194人であり、このうち仮出獄者は1万6,690人(前年比5.7%増)、保護観察付き執行猶予者は5,251人(同2.2%減) であった。また、同年の保護観察終了人員のうち、仮出獄者(1万6,539人) の6.2%が仮出獄を取り消され、保護観察付き執行猶予者(5,324人) の31.0%が執行猶予を取り消されている。

 4 特集「少年非行」の概観
 (1)特集のねらい
 少年非行を防止し、次代を担う者たちの健全育成を推進することは、社会全体の要請であり、少年非行に厳正・的確に対応することは、刑事司法に課せられた役割である。ところが、近年、凶悪・特異な非行を行ったにもかかわらず、その動機等を理解することが困難な少年が後を絶たず、非行の背景に複雑な家族関係や発達上、資質上の問題を抱えている少年が少なくないともいわれている。
 そこで、本特集では、最近における我が国の少年非行の動向と非行少年の資質等を分析した上、非行少年に対する施設内及び社会内における処遇の実情を紹介するとともに、少年法改正後の重大事犯少年の実態と処遇を紹介し、これらの問題点を探り、併せて、諸外国の少年非行の動向、少年非行に係る司法制度等を概観し、今後の議論のための資料を提供することとした。

 (2)少年非行の動向
 少年刑法犯検挙人員等の推移は、図2のとおりである。少年刑法犯検挙人員は、ここ数年おおむね20万人前後で推移しており、平成16年は、4年ぶりに前年より減少し、19万3,076人となったものの、刑法犯全検挙人員の約15%を占めている。
 また、社会の少子高齢化が進み、少年人口が減少する中で、10歳以上20歳未満の少年人口10万人当たりの少年刑法犯検挙人員の比率は、近年上昇傾向にあり、平成16年は1,505.9と前年より低下したものの、なお戦後の少年非行のピークである昭和50年代後半ころに次ぐ高水準にあって、成人人口10万人当たりの成人刑法犯検挙人員の比率の約1.4倍となっている。
 さらに、少年の強盗検挙(補導) 人員は、平成8年以降、年間1,000人を超える高い水準で推移してきており、少年による社会の耳目を集める凶悪重大事犯も発生するなど、少年非行の動向は、なお予断を許さない状況にあるといえる。

 (3)非行少年の質的分析
 最近の少年非行に関しては、量的な側面の問題以上に、非行少年の資質・家族関係等における問題の複雑・多様化、処遇の困難化といった質的な側面の問題として取り上げられることが多い。そこで、法務総合研究所では、最近の非行少年の質的分析を行うため、非行少年に対する意識調査、非行少年の保護者に対する意識調査及び少年院の法務教官に対する最近の非行少年に関する認識についての調査を実施した。これら三つの調査の結果を踏まえ、最近の非行少年の処遇上の留意点についてまとめた結果は、以下のとおりで ある。



 ア 人の痛みに対する共感性を育てる処遇
 多くの少年院教官が処遇において最も困難になったと感じていたのは、「人に対する思いやりや人の痛みに対する理解力・想像力に欠ける」、「自分の感情をうまくコントロールできない」といった非行少年の感情・情緒に関連する資質面の問題であった。他方、近年、被害者に誠意をもって対応していくことについての指導を一層充実させることが要請されている。
 こうした最近の非行少年の資質面での問題や社会からの要請を考慮すると、人の痛みに対する共感性を育てる処遇を強化する必要がある。矯正・更生保護の処遇の現場では、被害者の視点を取り入れた教育などの充実強化が従来にも増して強調され、ロールレタリング等の教育・処遇を展開している。このように、自らの非行を反省し、被害者への償いができるようになるまでに、まず人としての素地作りの作業をじっくりと行う必要がある非行少年が増えてきていることから、非行少年処遇の困難度が増してきているものとも考えられる。

 イ 集団場面を活用した処遇
 非行少年調査では、友人関係に対する非行少年の満足度は一般青年と比較 して低く、非行少年の方が交友面での不適応を感じやすいことがうかがわれ る。少年院教官調査でも、「対人関係を円滑に結ぶスキルが身に付いていな い」、「周りの誘いを断れない」、「心から信頼し合える関係を持てない」など、 最近の非行少年の交友関係面での不適応感の原因となる問題が多く指摘され ていた。
 こうした対人関係面での問題を抱えた非行少年に対しては、集団場面を活 用した処遇が有効と考えられる。少年院や保護観察所においては、SST (Social Skills Training) や障害児教育の専門家とも連携して発達障害等の 問題性に応じた新たな集団処遇を展開している。こうした教育・処遇によっ て、社会の一員としての足場が築かれ、不良仲間、不良集団等からスムーズ に離脱することが期待される。

 ウ 保護者の自発的対応を促す働き掛け
 少年院教官調査では、指導力に問題のある非行少年の保護者が「増えた」 と認識している少年院教官が80%を超えていた。また、保護者調査では、父 親の方が子育てに対する関心の乏しさが問題であったと認識している比率が 高かったのに対し、母親の方は、夫婦間の意見の不一致、過干渉が問題であっ たと認識している比率が高いなど、多くの点で父母間の認識に相違が認めら れた。
 非行少年の更生のための保護者の自発的対応を促す働き掛けにおいては、 こうした父母の認識の違いを自ら確認させることが、その第一歩になると考 えられる。その上で、子供の立ち直りのために何が必要かを共に考えさせて いく必要がある。 例えば、少年院や保護観察所においては、保護者会や保護者のためのグルー プワーク等、家族関係調整のための取組の強化に努めている。こうした教育・ 処遇によって、保護者が子供を適切に受容し、親としての責任を自覚するこ とが、非行少年にとっても、家庭からスムーズな形で巣立っていくために不 可欠であろう。

 (4)非行少年の処遇
 最近の非行少年の量的、質的変化に対応して、実際に、矯正、更生保護等 の諸機関がどのような立ち直りのための働き掛けを行っているのかをできる だけ具体的に示すとともに、今後の課題について検討した。

 ア 少年事件の検察及び裁判
 犯罪少年の検察庁新規受理人員(交通関係業過及び道交違反を除く。) は、 少年非行の第三の波である昭和58年をピークに平成7年まで減少した後、16 年は15万5,353人(前年比6.5%減) となった。これを人口比で見ても、同様 の波を示しているが、近年の人口比は、第三の波の時期に次ぐ高い水準にあ る。
 少年保護事件の家庭裁判所新規受理人員は、昭和41年及び58年のピークを 経て、しばらく減少傾向にあったが、近年は20万人前後で横ばいとなってお り、平成16年は20万2,292人(前年比2.9%減) であった。

 イ 少年鑑別所における鑑別
 少年鑑別所新入所人員は、昭和60年以降平成7年まで減少傾向を示してい たが、8年には増加に転じ、13年には少年非行の第三の波とされる時期を上 回った。16年は、2万1,031人(前年比8.8%減) であった。
 少年鑑別所の課題とこれに対する取組として、@資質鑑別体制の充実・強 化、A資質鑑別方法の充実、B低年齢少年の鑑別・観護、C外国人少年の鑑 別・観護、D地域の青少年相談センターとしての活動の推進の5項目を取り 上げ、説明している。

 ウ 少年院における処遇
 新入院者の特徴等について様々なデータを提示した上で、少年院における 処遇の実際について詳細に紹介している。その要点については、本誌掲載の 小澤政治「少年院在院者の概況と保護者に対する働きかけ」を参照されたい。

 エ 少年受刑者の処遇
 少年新受刑者は、昭和41年には1,000人を超えていたが、その後は減少傾 向を示し、平成8年には41人となった。最近は、小幅な増減を繰り返してお り、16年には84人(前年比16人増) となった。少年受刑者の処遇の実際につ いては、個別的処遇計画の一例を示し、説明している。

 オ 少年の更生保護
 保護観察対象者の動向等について、様々なデータを提示した上で、少年に 対する保護観察処遇の実情と課題について説明している。その要点について は、本誌掲載の押切久遠「少年の保護観察の現状と課題」を参照されたい。

 カ 児童自立支援施設における自立支援
 児童自立支援施設の在所児童数は、昭和58年以降おおむね減少傾向にあり、 平成15年10月1日現在、1,714人であり、少年院の在院者数の約3分の1で ある。在所児童の特徴、自立支援の内容、退所後の自立支援等について紹介 している。

 (5) 少年法改正後の重大事犯少年の実態と処遇
 改正少年法施行(平成13年4月1日) 後に重大事犯(故意の犯罪行為によ り被害者を死亡させた罪の事件をいう。以下同じ。) を犯した少年(以下 「重大事犯少年」という。) につき、その実態の分析を始めとして、処分状況、 矯正施設での処遇、保護観察という非行少年の処遇の流れに沿って、縦断的 な調査研究を行った。その結果の概要は、以下のとおりである。

 ア 重大事犯少年の実態
 法務総合研究所において、改正少年法施行後の重大事犯の実態と処遇を把 握するため、犯行時14歳以上の少年で、平成13年4月1日以降に犯した重大 事犯により少年鑑別所に観護措置により入所し、16年3月31日までに家庭裁 判所の終局処理決定により退所した278人を対象に特別調査を実施した。
 重大事犯少年の実態の分析に当たっては、非行類型ごとにどのような特徴 が見られるかを検討した。非行類型の設定においては、まず重大事犯を一般 事犯と交通事犯とに分け、交通事犯を「交通型」とした。次に、一般事犯の うち、被害者と加害者が親族関係にある事件(交際相手の実子を死亡させた 事件を含む。) を「家族型」とし、それ以外の一般事犯を共犯の有無によっ て「単独型」及び「集団型」とした。
 集団型の少年は、重大事犯少年のほぼ4分の3を占める。学校では成績が 振るわず、仕事も長続きせず、遊び中心に過ごす中で、暴力によって優越性 の確認や憂さ晴らしをしようとした結果、重大事犯につながった者が多かっ た。
 単独型の少年は、資質の上で大きな問題を抱えている者が目立ち、早期か ら粗暴傾向が顕著で、資質面の問題性がそのまま重大事犯につながった者、 異性との感情のもつれに直面し、適切な対応を取れず、激情に任せた行動に 出た結果として被害者を死亡させた者などが見られた。
 家族型の少年は、様々な家庭内の問題を複合的に抱え、家庭内の問題がま さに凝縮された形で重大事犯へと発展している。父親が被害者となった事件 では、優位な立場にある父親に暴力で対抗した結果、重大事犯に至った事例 等が見られた。他方、母親が被害者となった事件では、母親の側に目立った 問題が認められず、少年の側に精神面での障害などの問題が認められる事例 等が見られた。また、嬰児殺の女子では、家庭内で手のかからない子として の自らの立場を守ろうとして、親にも妊娠の事実を告げず、出産の発覚を恐 れて我が子の殺害に至る事例等が見られた。
 交通型の少年は、他の非行類型の少年と比較して犯行時年齢は高く、家庭 内の問題、生活上の問題の少ない少年が比較的多かった。通常の家庭環境の 下で、目立った非行もなく、一応、職業に就き、社会人としての生活を送っ ていたが、交通規範面での問題から車両運転の際に重大な結果を引き起こす に至った事例等が見られた。

 イ 重大事犯少年の裁判
 家庭裁判所における終局処理状況を見ると、調査対象者278人のうち4人 が年齢超過により検察官送致とされたほか、138人(49.6%) が刑事処分相 当により検察官送致とされ、136人(48.9%) が保護処分とされていた。調 査対象者のうち犯行時の年齢が16歳以上の原則逆送少年236人(年齢超過に より検察官送致とされた4人を除く。) について見ると、検察官送致となっ たのは135人(57.2%) であり、残る101人(42.8%) が保護処分となってい た。
 これら原則逆送少年について、非行類型別に審判状況を見ると、交通型は、 ほとんどが検察官送致とされていた。集団型については、主導者であったか どうか、被害者にどの程度の致命傷となる暴力を振るったかなどの様々な要 因が、決定に影響を及ぼしていることがうかがわれた。他方、家庭型は、被 害者である父親に多量の飲酒や暴力などの問題がある事例、少年に精神面の 障害が認められる事例等が多く含まれ、保護処分とされる比率が高くなって いることがうかがわれた。単独型でも精神面での障害が認められる事例等が 保護処分とされていた。
 検察官送致とされた原則逆送少年139人は、地方裁判所に起訴され、平成 17年8月31日までに、通常第一審で133人(裁判時少年108人、同成人25人) が終局裁判を受けた(表3参照)。

 ウ 重大事犯少年の意識
 事件の重大性については、ほとんどの者がその重大性を認識していた。事 件直後と現在の意識の変化については、事件の責任を他に転嫁せず、自分に あるとする者が増加するなど多くの点で好転が認められた。

 エ 重大事犯少年に対する処遇
 少年院においては、個々の少年の必要度等を勘案して個別的処遇計画が立 案され、処遇が行われていた。被害者の視点を取り入れた教育や保護者に対 する働き掛けのために多くの手法が組み合わされて実施されていた。また、 処遇に困難を伴った事例を検討したところ、資質面での問題が大きな者、家 族のサポートが容易に得られない者が含まれており、それに対して、精神医 療面での手当て、家族関係の調整等、少年の問題性に応じた手厚い働き掛け が加えられていた。
 刑務所においても、少年院と同様に少年受刑者に対して個別的処遇計画が 立案され、処遇が行われていた。刑務所での処遇期間は、少年院よりも長い 場合が多く、その中で職業訓練など、出所後の職業生活に直結した処遇が行 われていたが、まだ在所中の者が多く、処遇内容については途中経過の分析 にとどまった。
 保護観察所では、裁判所の決定により保護観察に付された少年及び矯正施 設からの仮釈放により保護観察に付された少年の双方を対象として処遇を行っ ており、そのうち後者については、矯正施設で処遇されている段階から、帰 住予定地の環境調整に当たっていた。保護観察の段階にあっては、個々の対 象者の問題に応じて定められる遵守事項に沿って、分類処遇や類型別処遇が 活用されていた。また、被害者や遺族に関連する指導助言の状況を見ると、 被害者等調査、被害者を視野に入れた指導・助言などが実施されていた。





 (6) 諸外国の少年非行
 我が国の少年非行の動向等を諸外国と比較するため、入手し得た公的資料 の範囲内で、フランス、ドイツ、英国及び米国の4か国について、少年非行 の動向並びに少年司法制度及びその運用状況を概観した。同様の比較は、平 成10年版犯罪白書でも行っており、その後の諸外国の少年非行の動向等を把 握するための有用なデータを提供している。

5 おわりに
 特集では、少年非行の量的・質的分析とともに、非行に陥った少年に対し て、矯正、更生保護等の諸機関がどのような立ち直りのための働き掛けを行っ ているのかを、できるだけ具体的に示してきたが、少年非行の防止及び非行 少年の更生は、刑事司法の中だけで完結するものではない。非行少年処遇の 専門機関だけではなく、関係諸機関・団体が有機的に連携し、地域社会と協 働して総合的な非行対策を推進する必要がある。
 その際、有効な非行対策の立案及びその有効性を評価するための基礎デー タを、可能な限り、国民に明らかにすることが、本白書の重要な役割でもあ る。特に、平成12年の改正少年法は、政府が施行後5年を経過した場合にそ の施行の状況について国会に報告するとともに、検討を加えること等を規定 している。そこで、本特集では、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた いわゆる重大事犯少年について、法務総合研究所が実施した調査結果を基に、 事案の実態と処遇の実情等を明らかにした。この調査結果が、今後行われる 少年司法制度に関する議論の基礎データとなることを期待するものである。

(法務総合研究所主任研究官)

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