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社会内処遇における“増加する暴力的色彩の強い犯罪”
寺戸 亮二


1 はじめに
 かれこれ10年前であったろうか。あるフランスの犯罪研究者から,我が国の犯罪の発生率の低さのわけについて聞かれたことがある。確かにそのころは我が国にも,比較的治安が保たれているという漠然とした感覚がまだあったように思う。平成5年時点で,一般刑法犯(交通関係業過を除く)の認知件数が増加傾向にありながら,どうしてこうした感覚があったかであるが,その認知件数の増加は窃盗事件の増加が大きく寄与しており,実際,窃盗を除く一般刑法犯の認知件数は,それまでの20年間18万人台から22万人台の範囲で推移し,特に増加する気配も見せなかったことが大きく影響していたであろう。また,私が当時勤務していた保護の現場における感覚はさらに明確で,保護観察新規受理人員は昭和59年に最高値を打って以降毎年減少を続けていたのであり,関係する矯正の現場でも,新受刑者数,少年鑑別所新収容人員,少年院新収容者はやはり59年を過ぎて減少に転じていることから,その感覚は強まった。先の質問はそういう時期のものであったので,私はそれを,多くの外国人が持つ疑問として当たり前に受けとめた。その時,頭の中では,地域に根ざした交番制度のこと,世間体という個人が感じる社会の目が,結果的に人の行動に関し相互監視システムになっていることなど,いくつかの説明要因が浮かんだが,どれもこれも決定的な説得力に欠け,かといって失業率の低さに触れるのもためらわれるものがあったので,色々説明要因は考えられるが,正確なところはよく分からないと答えざるを得なかった。実はこの時,説明しながらも,この先も果たして我が国は治安の良さを続いて享受できるのだろうかという一抹の不安が私の中に一貫してあった。それだからであろうか,当時新任の観察課長として地域の保護司会などの集まりで挨拶する際は,「平和とか治安の良さとかは,人々の不断の努力の積み重ねによるものであり,それを忘れると将来とんでもないしっぺ返しに遭うことになりますので,それを忘れず共により良き活動と研鑽に努めましょう。」という趣旨のフレーズを繰り返していたことを記憶している。
 そして約10年後の現在,テレビ・新聞紙上での物騒な事件報道を毎日のように目にし,犯罪の質的量的変化を次第に実感するところとなっている。また実際,(個人的な感想ではあるが)通勤の帰途等で駅や電車内で騒動を目撃することが珍しくなくなっている。犯罪を取り巻く我が国の状況は少々変わったようだ。この国は今,不断の努力を怠ったしっぺ返しに見舞われつつあるのではないかと不安になってくる。平成14年版犯罪白書では,殺人及び暴力的9罪種について,その年次的変動の推移等に関し多角的に検討を加える目的で,「暴力的色彩の強い犯罪の現状と動向」と題した特集を組むなどして,こうした社会状況の変化が一体いかなるものか,その実態に数量的に迫ろうと試みており,認知件数,検挙件数・人員などから見た特徴については,他の稿で紹介されると思われるので,本稿では少々視点を変え,特集以外の部分にも光を当て,社会内処遇における対象者の数量的な時代的変化をまず概観し,そこから何が見えてくるかを考え,明らかになった問題点に関し処遇策等について私なりに検討してみたい。本稿中,意見に関する部分は筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りしたい。

2 保護観察新規受理人員から見た傾向
(1)全般的傾向
 図1は保護観察新規受理人員の総数等の推移を示したものであるが,昭和49年を境に変形したフタコブラクダのような曲線を描いている。この境となった49年であるが,この年記録した4万4,310人という人員は,現在の更生保護制度の草創期の24年の数値を除けば最も低い人員であった。本稿では,便宜上48年までを「前期」,49年以降を「後期」と呼ぶことにする。まず,この前期と後期の間での差異の一つに,少年対成人の比があり,前期でも39年までは少年の保護観察対象者人員はせいぜい40%台止まりであり,成人の対象者が過半数を占めたのが,その後少年の対象者の割合が上回ることが多くなり,後期に入ってからは少年の対象者が50%台以上で推移し,それも60%台から70%台の年も少なくなくなっている。なお,52年から交通短期保護観察制度が実施され,このタイプの処遇を受ける対象者が加わり,さらに少年の対象者の割合が増加することとなった。
 本稿では,暴力的色彩の強い犯罪について次に触れることになるので,その準備として,比較的本件非行内容が軽微と考えられる交通短期保護観察事件を除外した保護観察新規受理人員を計算すると,後期は59年の5万9,813人がピークであり,その後減少に転じ,平成6年には約4万人と底を打った後,再度増加に転じているものの,平成13年でも約5万人となっており,後期のピークの約6万人のレベルまでには至っていない。このように交通短期以外の保護観察事件に限れば,増加の様子が若干違っていることが分かる。

図1 保護観察新規受理人員の推移
(昭和24年〜平成13年)
1 法務統計年報及び保護統計年報による。

2 「総数」には,「保護観察処分少年」,「少年院仮退院少年」及び昭和33年以降の「婦人補導院仮退院者」が含まれる。


(2)突出して増加している保護観察処分少年,少年院仮退院者の傷害,恐喝,強盗
 それでは上記で見た保護観察新規受理人員の動向の中身はどうなっているか,すなわち罪種別の分布に時代的変化は見られるかという疑問が起こる。話を後期(昭和49年以降)の動向に絞る。結論から述べると,保護観察の種類別に,殺人及び暴力的9罪種の動向を調べたところ,増加がとりわけ顕著であるものは保護観察処分少年,及び少年院仮退院者における傷害,恐喝,強盗の3罪種であった。図2は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者の4罪種に関する新規受理人員の推移を示しているが,上記3罪種は昭和49年から大雑把に言って右肩上がりであり,特に平成7年以降の増加の傾斜が強い。なお,余談であるが,冒頭で平成5年に治安の良さを感じていたことを述べたが,暴力的罪種に係る保護観察対象者新規受理人員からこの感覚を検証すると,図2から分かるように,このころは上りの階段の踊り場に差し掛かっていたことが分かる。
 また,成人については,(本稿では図を掲載していないが,)少年ほど顕著ではないものの,保護観察付き執行猶予者について傷害,恐喝が7年あたりから増加傾向にあり,また量的には多くないが,住居侵入,強制わいせつの増加傾向も目を引くところである。

図2 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の4罪種に関する新規受理人員の推移
@ 保護観察処分少年


A 少年院仮退院者
注 保護観察統計年報による。


(3)オリジンとしての少年の検挙人員
 次に保護観察対象者のオリジン(源泉)に目を移すこととし,保護観察決定から時間を遡り検挙段階について見てみよう。図3は,少年の3罪種の年齢層別検挙人員を示したものである。昭和49年以降の動向全体を見ると,強盗は保護観察新規受理人員と大雑把に言ってほぼ同様の右肩上がりの傾向があるものの,傷害,恐喝は異なった様相を示し,同様の傾向にあるとは必ずしも言えない。つまり,上記3罪種の増加のうち,傷害,恐喝については保護観察新規受理人員について検挙人員の動向からの影響は必ずしも窺えないようである。なお,傷害と恐喝の動向中,年少少年(14・15歳)について,1980年代の約10年で突出した山があるが,この山は,処分の段階で消え(不処分等),保護観察新規受理人員での山としては反映されていない。この山は,傷害,恐喝の罪種に特有のものではなく,少年の検挙人員全体で見ても同様の傾向を示している。その事情についてはもとより推量するしかないが,年少少年でもあり家庭裁判所に初めて係属したケースも少なくないことが推定され,かなりのケースが不処分等になったものと思われる。

図3 少年の罪種・年齢層別検挙人員
@ 強盗


A 傷害


B 恐喝
注 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。


(4)少年の不良集団との関係
 近年少年による粗暴事件の特徴として,共犯者多数で惹起する傾向が指摘されてきているが,その中には不良集団に係るものも少なくないと考えられる。図4では,少年の保護観察対象者に関する新規受理人員について,不良集団との関係の推移を見たものである。
 一見して,保護観察処分少年も少年仮退院者もともに,暴走族,地域不良集団,不良生徒・学生集団等の,不良集団関係者全体が増加傾向にあるが,それ以上に,不良集団関係のない少年の増加傾向が顕著であることが分かる。
 不良集団関係者の内訳を具体的に見るため,図4の元表である表1を見てみたい。これによれば暴走族,地域不良集団に関係があるものの人員が概して増加傾向にあることが目を引く。


図4−1 保護観察処分少年の罪名別不良集団関係
@ 強盗(人員)


A 傷害(人員)


B 恐喝
注 法務省大臣官房司法法制部の資料及び法務総合研究所の調査による。


図4−2 少年院仮退院者の罪名別不良集団関係
@強盗(人員)


A傷害(人員)
B恐喝(人員)
注 法務省大臣官房司法法制部の資料及び法務総合研究所の調査による。




表1−1 保護観察処分少年の罪名別不良集団関係(人員)
(平成4年〜13年)
@ 強盗
不良集団の種類 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
総   数 192 227 258 342 405 616 581 596 651 576
な   し 96 132 138 201 208 366 350 334 373 362
暴 力 団 1 1 1 1 1 2 0 0 1 3
暴 走 族 12 25 27 15 23 33 26 36 60 56
地域不良集団 53 51 69 89 110 145 142 158 144 105
不良生徒
学生集団
19 12 21 27 54 62 43 56 57 44
そ の 他 10 5 2 9 7 6 15 12 13 5
不   詳 1 1 0 0 2 2 5 0 3 1


A 傷害
不良集団の種類 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
総   数 1,751 1,457 1,573 1,969 2,122 2,746 2,792 2,846 3,610 3,636
な   し 718 681 800 1,017 1,167 1,440 1,474 1,547 1,984 1,977
暴 力 団 73 40 30 28 31 33 28 29 33 36
暴 走 族 511 353 291 358 294 430 418 406 505 598
地域不良集団 260 241 287 370 391 578 528 570 641 652
不良生徒
学生集団
158 117 139 147 189 209 302 263 387 309
そ の 他 24 21 22 45 40 43 27 21 43 53
不   詳 7 4 4 4 10 13 15 10 17 11


@ 恐喝
不良集団の種類 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
総   数 637 638 797 959 1,140 1,486 1,723 1,740 2,151 1,903
な   し 335 335 418 563 676 931 1,037 1,050 1,306 1,185
暴 力 団 28 27 21 14 14 12 23 24 19 18
暴 走 族 49 56 78 78 62 97 133 158 205 161
地域不良集団 150 151 193 209 241 312 369 333 409 367
不良生徒
学生集団
58 48 70 69 115 115 124 151 156 137
そ の 他 16 13 15 23 23 15 24 14 47 27
不   詳 1 8 2 3 9 4 13 10 9 8
注 法務省大臣官房司法法制部の資料及び法務総合研究所の調査による。


表1−2 少年院仮退院者の罪名別不良集団関係(人員)
(平成4年〜13年)
@ 強盗
不良集団の種類 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
総   数 147 148 143 191 224 346 578 454 494 550
な   し 52 58 62 77 84 135 166 139 186 200
暴 力 団 21 9 8 4 6 2 11 15 24 13
暴 走 族 26 35 23 35 34 75 199 137 153 136
地域不良集団 40 41 37 65 91 114 174 141 103 154
不良生徒
学生集団
5 2 11 7 4 16 18 11 21 28
そ の 他 3 3 2 2 5 1 8 8 6 17
不   詳 0 0 0 1 0 3 2 3 1 2


A 傷害
不良集団の種類 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
総   数 480 495 502 445 478 588 657 753 822 936
な   し 101 118 133 116 114 146 194 208 224 241
暴 力 団 104 65 48 35 39 29 37 42 42 50
暴 走 族 175 233 218 214 208 261 231 305 376 428
地域不良集団 78 49 82 63 97 120 160 161 139 176
不良生徒
学生集団
20 20 16 9 17 25 28 28 35 32
そ の 他 2 8 3 8 3 6 5 6 6 7
不   詳 0 2 2 0 0 1 2 3 0 2


B 恐喝
不良集団の種類 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年
総   数 203 197 191 231 237 274 348 409 425 522
な   し 61 58 67 89 87 104 134 151 151 181
暴 力 団 52 45 32 34 29 29 24 30 33 35
暴 走 族 38 44 36 48 48 66 72 109 143 166
地域不良集団 43 41 46 50 60 69 98 96 80 118
不良生徒
学生集団
7 6 5 8 8 2 14 16 12 18
そ の 他 1 3 5 2 3 4 4 4 5 3
不   詳 1 0 0 0 2 0 2 3 1 1
注 法務省大臣官房司法法制部の資料及び法務総合研究所の調査による。


図5 暴走族の構成員数及びグループ数の推移
(平成4年〜13年)
注 警察庁交通局の資料による。


 図5は,暴走族の構成員数及びグループ数の10年間の推移を見たものであるが,これによると,近年暴走族の構成員数は減少しているが,逆にグループ数は増加している。この稿で言う保護観察新規受理人員における暴走族関係者は,構成員だけでなくその周辺者を含んでいるが,暴走族のグループ数が増えているということは,それだけそれまで関係のなかった少年が何らかの暴走族グループと接触を持つ確率が高まっていると言えなくもない。従って,今後もこうした不良集団との関係について留意する必要性はさらに高まっていくと思われる。不良集団を一部で非行助長集団と呼称しているように,集団で群れると,思わぬ大きな逸脱に走る恐れもあり,保護観察の処遇上交友関係の問題は留意すべきポイントである。

3 暴力的色彩の強い犯罪を行った少年の処遇について
 上述したように,保護観察新規受理人員から見ても,「暴力的色彩の強い」犯罪の増加の一端が認められ,これらの罪種を惹起した少年の保護観察処遇に期待されるウエートが大きくなっていることが窺えた。こうした犯罪は,万一同種の再犯を惹起した場合,社会的影響は極めて大きいものがあり,対象者の処遇上工夫・配慮が必要であろう。
 不良集団関係者については,上で述べたような不安要因もあるので,不良集団との接触に留意しなければならないが,保護観察当初,仮に不良集団関係が認められないからといっても,そうと決め付けるわけにはいかない点に留意したい。理由の一例を挙げれば,いまどきの少年は,相互に携帯・ネットでコミュニケーションを図るため,大人社会から見えにくくなっており,また交友関係のなかには地域社会から乖離したものになる可能性もあり,大人の気付きの外側で不測の事態も考えられるからである。彼らの生活空間が分からなければ,適切な援助もできない。少年の目線に立って彼らの生き方について一緒に考える等の視点も必要である。
 それ以上に,やや回り道かもしれないが,彼らの生活環境をエンパワーメントできる方法を考えることが必要ではないかと思う。これは不良集団関係者だけでなく,関係がない者についても必要であろう。エンパワーメントは,対象者本人に単に自助努力だけさせて力をつけさせることではない。紙面の都合から詳述できないが,個人的な能力は,生活環境が変わることで,僅かしか発揮できないかもしれないし,逆に想像もできないような能力を発揮することもできるのであり,対象者を社会関係の中で処遇し,人間関係の相互作用を体験させ,そこから本人の自己治癒力が活性化するきっかけを見出させる機会を与える必要があろう。家庭や学校の中で自分の場所を見つけられなかったりして,無気力化している少年も少なくない。そうしたパワーが乏しくなった状態では,人は健康的(心身ともに)で自律的な行動を取ることが阻害され勝ちとなり,自己の置かれた状況の動きに流され易くなる。エンパワーメントは,乱暴に言えばそうした人に自律能力を向上させる方向で行われる援助と言えるかもしれない。何らかの場において具体的な役割を与えることにより,自分で考え,汗して取り組み,その人間関係の中で自己の感情をコントロールし,やがては,無力感を克服し,自律的な行動習慣を獲得することが期待される。考えてみれば,こうした少年に対する”処遇”方法に近いものは,かつてのこの国では,家庭内や地域社会であたりまえのものとして存在していたが,現在では多くは化石化してしまっており,大人が少年に応じた処遇プログラムを意図的に用意しなければならない。処遇プログラムと言っても難しく考える必要はないのではないか。近年,非行少年に地域の行事等を手伝わせたり,スポーツ競技に誘ったりする取り組みがあちこちで行われているようであり,そうした気運の拡充と発展が期待される。

 4 成人の保護観察対象者について
 少年の新規受理人員の増加が顕著であるため,これまで少年の話に重点を置いてきたが,上で述べたように,保護観察付き執行猶予者について傷害,恐喝の近年の増加と,住居侵入,強制わいせつの増加傾向も目を引くところである。白書では,保護観察対象者について年齢層別の分布は調べていないが,検挙人員の人口比から見て,成人では傷害,恐喝などの罪種については,大雑把に言って年齢が低いほど発生確率が高いことから,もしその傾向が今後保護観察新規受理人員に反映されることになれば,成人でもとりわけ若年者の処遇に期待される割合が高くなると思われる。こうした層に対しても何らかの効用感を持たせるような処遇のほか,生活環境を整える方向での調整を図り生活を安定させ心情の安定を図ることが必要かと思われる。

5 おわりに
 本稿では主として保護観察対象者の新規受理人員から,暴力的色彩の強い犯罪の動向について見たが,これ以外にもいくつかの統計指標が懸念される様相を示しており,こうした社会だからこそ,より活発で広範な犯罪予防に向けた社会機能の今以上の活性化が以前にも増して必要になってきているといえる。そのためには,単に,地域社会の連帯を復活させましょう,と漠然としたスローガンを地域社会に連呼するだけでは効果は期待に比べ薄いかもしれない。この国は,阪神淡路大震災の被災時や,日本海における転覆船舶からの重油流出事故後,海岸線が汚濁に見舞われた際,一般市民等の目を見張るボランティア活動への参加があった。そこには具体的な目的の存在と人々の活動の総合調整があった。コミュニティが果たしてあるのかといわれる我が国であるが,これらを見ると,草の根活動も,やり方次第では大化けする可能性もあるかもしれない。犯罪予防に向けどう取り組むか,という社会に課せられた課題は,上記の一般市民の社会的(乃至はボランティア)活動の対象と違い,秘密保持の問題などより複雑でデリケートな要素を抱えてもおり,絶対確実なお奨めの対処方法をここに具体的に提示することは困難であるが,確実に言えることは,社会的活動を行う際,その活動の目的・方法をより具体的・明確化し,人々の活動を如何に統合していくかがキーポイントであると思われる。また,これまで行われた各種の活発な草の根活動を検討すると,人々の連携の基盤を,地域社会に限定することなく,より広い地域からネット等で情報交換するなどして,連携の広がりと盛り上がりを実現しているようにも思われるが,何か犯罪予防活動に参考にできる点はないかと思う。
 また保護観察等の犯罪者・非行少年の処遇の面では,社会が萎縮し,経済的にも精神保健的にも暮らしにくい世の中になっており,今後も暴力的色彩の強い犯罪が減ることを期待させる要因は社会内にあまり見当たらないのではないか。だからこそ,今のうちから刑事政策上総合的な対応策について検討しておくことも必要と思われる。
(法務総合研究所研究部研究官)


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