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平成14年版犯罪白書に見る犯罪・非行の動向と矯正処遇
庵前 幸美


1 はじめに
 平成14年版犯罪白書(以下「本白書」という。)によれば,行刑施設の収容率は平成5年以降上昇を続け,13年には,全体で101.2%,既決では109.7%となり,行刑施設の本所の8割強が定員を超過するなど,文字通りの過剰収容を迎えている。また,少年院及び少年鑑別所でも,8年以降,新収容者及び新収容人員が増加に転じ,13年には,戦後における少年非行の第三の波とされる時期のピークである昭和59年の数値に,ほぼ並ぶものとなった。このように,矯正施設がそろって収容増となった背景にある,現下の犯罪・非行の動向はどのようなものであり,また,最近の収容増にはどのような特徴がうかがえるのであろうか。
 本稿では,このような視点から,本白書の関連する部分について,その概要を紹介させていただくこととする。なお,誌面の都合上,まずもって説明すべき基礎的なデータ及び図表を本稿には載せていないので,白書に当たっていただければありがたい。また,意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておく。

2 少年非行の動向と少年鑑別所・少年院の収容状況
 近年の少年矯正施設の収容動向を見ると,少年鑑別所の新収容人員については平成4年から7年まで,少年院の新収容者数については5年から7年まで,それぞれ減少傾向にあったものが,8年以降増加に転じ,13年は,少年鑑別所では第三の波のピークとなった昭和59年の総数を超える2万2,978人に達し,少年院でも,同年の総数にほぼ並ぶ6,008人に上った。ところで,平成13年における少年刑法犯の検挙人員は19万8,939人(前年比2.9%増),交通関係業過を除くと15万8,721人(前年比3.9%増)であり,いずれも前年に比べて増加しているが,第三の波のピーク時における水準(少年刑法犯検挙人員については,昭和58年の31万7,438人,交通関係業過を除くと26万1,634人が,第三の波の最多数値である。)には遠く及んでいない。最近の少年矯正施設の収容増は,少年刑法犯全体の増加を上回るペースを示しているともいえる。これについては,様々な要因が考えられるところであるが,一つの視点を示すものとして,本白書は,興味深いデータを提示している。まず,図1は,少年鑑別所・少年院の新収容者を罪名別に見た場合の,強盗,傷害及び恐喝が占める比率の推移を示したものである。次に,図2は,強盗,傷害及び恐喝の罪名別に,少年鑑別所・少年院の新収容者数及び「送致率」(少年鑑別所については,家庭裁判所の終局総人員に占める観護の措置をとった人員の比率をいい,少年院については,家庭裁判所の終局総人員に占める少年院送致となった人員の比率をいう。以下同じ。)の推移を見たものである。
 以下,図1及び図2について,平成13年と昭和59年とを比較しながら,最近における収容動向の特徴を見ていくこととする。図1のとおり,新収容者中に占める,強盗,傷害及び恐喝の比率は上昇傾向を示し,昭和59年と平成13年とを比較すると,少年鑑別所では15.8%から33.3%へ,少年院では16.3%から33.6%へと,それぞれ2倍以上になっている。次に,図2からは,これら3罪種による新収容者の増加傾向がうかがえる。中でも強盗については,平成8年以降の伸びが顕著であり,昭和59年と平成13年とを比較すると,少年鑑別所では415人から1,283人へ,少年院では165人から570人へと,それぞれ3倍以上に増加している。また,傷害及び恐喝については,強盗のような急激な動きは見られないものの,着実に人員を押し上げてきており,これら3罪種の増加が,最近の少年矯正施設における収容増の特徴の一つであるといえる。さらに,これら3罪種の新収容者の増加要因を考えるとき,図2が参考となる。図2からは,3罪種に係る少年保護事件の,家庭裁判所終局処理における少年鑑別所及び少年院への送致率が,ともに上昇傾向にあることが見て取れる。ことに,総数が比較的大きく,送致率において,従来は一定範囲内で推移してきた傷害及び恐喝における,近年の送致率の上昇が目を引くところである。

図1 新収容者に占める強盗・傷害・恐喝による収容者の比率の推移
@ 少年鑑別所新収容者
(昭和53年〜平成13年)


A 少年院新収容者
(昭和49年〜平成13年)
1 矯正統計年報による。

2 昭和57年及び58年の少年院新収容者については,在宅事件で少年院送致の決定のあった者を含まない。


図2 強盗・傷害・恐喝の少年鑑別所・少年院の新収容者数及び送致率の推移
(昭和49年〜平成13年)
@ 強盗(総数)


A 傷害(総数)


B 恐喝(総数)
1 矯正統計年報及び司法統計年報による。

2 昭和52年以前は,少年鑑別所の新収容者については罪名別の統計がないため,53年以降について掲載した。

3 「鑑別所送致率」は,家庭裁判所の終局総人員に占める観護措置をとった人員の比率を,「少年院送致率」は,家庭裁判所の終局総人員に占める少年院送致となった人員の比率を示している。

4 司法統計年報では,平成11年から簡易送致事件を除いた人員を掲載するようになったため,それに合わせて10年以前の各罪名の総人員については,簡易事件送致事件数を除いた人数を用いた。

 本白書では,「暴力的色彩の強い犯罪の現状と動向」をテーマに特集を組み,強盗,傷害,暴行,脅迫,恐喝,強姦,強制わいせつ,住居侵入及び器物損壊の9罪種(本白書では,「暴力的9罪種」という。)の動向について,統計的な分析を試みているが,少年においても,暴力的犯罪,ことに強盗,傷害及び恐喝は従来から少年比が高い上に,近年検挙人員の増加及び少年人口比の上昇が目立っており,これら3罪種は,前述のとおり少年矯正施設の収容動向にも多大な影響を及ぼす,注目すべき犯罪であるといえる。また,共犯率の高さが少年犯罪の特徴の一つとされ,3罪種はいずれも共犯率が高いが,中でも強盗では,多人数による集団化が進んでいるのが最近の特徴である。付言すれば,少年による殺人においても,近年,共犯化・集団化の傾向が認められる。
 最後に,平成13年4月から施行された少年法等の一部を改正する法律との関連で,殺人及び強盗に係る少年保護事件の家庭裁判所終局処理における検察官送致(刑事処分相当)の比率(人員)を見ると,殺人では,前年よりも2.0ポイント上昇して16.0%(12人)となり,強盗では,3.2ポイント上昇して5.6%(76人)となっている。ちなみに,殺人及び強盗における検察官送致の比率及び人員について,ここ10年間の推移を見ると,総数が小さい殺人では,比率についてもばらつきが大きく,個別事例の研究・検証等を行わずに数値を意味付けることはできないが,強盗については,平成13年の比率及び人員は,ともに前年の2倍以上に急上昇して,ここ10年間では最も高い数値となっており,今後の動向に着目したい。

3 犯罪の動向と行刑施設の収容状況
 図3は,ここ20年間における,行刑施設の収容率の推移を見たものである。行刑施設の一日平均収容人員は,昭和61年の5万5,348人をピークに,その後漸減して,平成4年には4万4,876人となったが,5年以降増加に転じ,その後は加速度的な急増を示して,13年には6万3,415人(前年比7.9%増),うち受刑者は5万1,668人(同8.4%増),未決拘禁者は1万1,323人(同6.4%増)となっている。また,収容率も5年以降上昇に転じ,ことに8年ころからは顕著な伸びを示して,平成13年12月31日には,全体で101.2%,既決収容者では109.7%という,ここ30年間では突出した高水準に,かつ,急激な速さで到達している。このような状況において,近年,行刑施設の収容動向に関する研究及び議論が活発になされ,法務総合研究所においても,研究部報告「行刑施設の収容動向等に関する研究」において平成13年度の研究成果をまとめているが,本白書も,行刑施設の収容動向等を考える上で示唆に富む,様々な統計資料を提示している。本稿では,その中から,年齢等の受刑者の属性や刑期など,幾つかの事項に着目し,関連するデータの一部を紹介しながら,論を進めることとしたい。

図3 行刑施設収容率の推移
(昭和57年〜平成13年各12月31日現在)
注 法務省矯正局の資料による。


(1) 高齢化の進展
 受刑者の高齢化がいわれるようになって久しいが,平成13年の新受刑者においても,60歳以上の者が全体の8.2%(前年は7.7%)を占め,13年末現在の受刑者中60歳以上の者は5,216人(うち,70歳以上は876人)となり,受刑者全体の9.8%を占めるに至るなど,高齢化の着実な進展がうかがわれる。さらに,本白書の特集部分における,近年増加が顕著な暴力的9罪種の犯罪者の属性に関する分析結果の中で,@年齢層別検挙人員を見ると,50歳代及び60歳以上の年齢層では,9罪種のすべてにおいて増加しており,中でも強盗は,昭和49年と平成13年を比較すると,50歳代で12.7倍,60歳以上で18.6倍になっている,A50歳代及び60歳以上の年齢層では,犯罪発生率もおおむね上昇傾向にあり,特にここ数年の上昇傾向が目立っている,などの注目すべき指摘がなされている。このような傾向は,前年白書の特集において,B窃盗に関して,50歳代,60歳代及び70歳以上における,検挙人員及び犯罪発生率の増加が指摘されているのと軌を一にするものであり,国民人口構成上も高齢化が進む中で,中高年齢層の犯罪発生の伸びは,矯正施設の収容動向に対して,既に進行している収容増と高齢化に,更に拍車をかける方向で作用することが予測されるところである。

(2) 女子の増加
 軒並み過剰収容にある行刑施設の中でも,取り分け,女子施設が深刻な状況にあると聞き及ぶが,近年,女子新受刑者数及び新受刑者中に占める女子比が,ともに増加傾向にあり,ことに平成12年,13年の伸びが著しく,13年は,女子新受刑者数が昭和31年以降では最多の1,562人,女子比は戦後最高値の5.5%となった。ここ30年間の女子新受刑者数の推移を見ると,昭和49年(467人,女子比1.8%)を底に以降急増し,60年(1,363人,女子比4.3%)にピークに達した後,平成3年,4年ころまでは漸減していたものが,5年から増加に転じ,12年,13年は急増して昭和60年を超える高水準に至ったものであるが,女子新受刑者の罪名に着目すると,興味深い傾向が見て取れる。
 女子については,覚せい剤取締法違反(以下,「覚せい剤」ともいう。)の比率が高いのが特徴の一つとされているとおり,昭和49年には36人であった覚せい剤女子新受刑者が,52年には138人を数え,53年にはそれまでトップであった窃盗を超えて,以降,女子新受刑者の罪名において断然のトップを維持し,平成13年には725人に上っており,ここ30年間における女子受刑者の増加の大半は,まずは,覚せい剤事犯者の増加によるものと見なすことができる。ただし,最近の傾向として,覚せい剤及び窃盗以外の罪名の漸増も見過ごせない。ちなみに,女子新受刑者の罪名別構成比について,昭和50年代から60年代におけるピークとなった昭和60年と,平成13年とを比較すると,13年は,@覚せい剤は,57.5%から46.4%へと低下し,実数も減少している一方,A上昇しているのは,道路交通法違反(0.4%から,2.9%へ),強盗(0.9%から,2.4%へ),傷害(0.4%から,2.1%へ),恐喝(0.4%から,1.2%へ)などであり,B強盗,傷害及び恐喝の3つの暴力的罪種を合わせた数値で比較すると,構成比では1.8%から5.6%へ,実数では24人から88人へと,ともに増加している。従来から構成比が高い殺人(昭和60年は75人,5.5%,平成13年は74人,4.7%である。)では大きな変動が認められない一方で,強盗,傷害,恐喝など,以前はさほど目立たなかった暴力的犯罪が若干とはいえ増加傾向を見せていることについては,本白書の特集部分で,@近年,暴力的9罪種の認知件数の急増に伴い,女子の比率が上昇する傾向が認められる,A行刑施設において,平成8年ころから,暴力的9罪種の新受刑者が増加している,B少年鑑別所及び少年院の新収容者について,女子においても,強盗,傷害及び恐喝の3罪種が近年急増している,などの指摘がなされていることと符合するものであり,女子受刑者の収容動向を考える上で,女子における暴力的な犯罪の動向も見過ごせないところである。

(3) 刑期等の動向
 前掲の「行刑施設の収容動向等に関する研究」を始め,最近の研究において,懲役受刑者の刑期及び行刑施設における在所期間の長期化傾向が指摘されているが,刑期等の動向は,収容状況に直接影響するのみならず,矯正処遇にもかかわる重要事項であり,本稿でも,本白書から関連するデータをかいつまんで紹介することとしたい。
 まず,懲役新受刑者の刑期別人員及び構成比の推移を見ると,@平成9年と比較して,13年は,「1年以下」及び「1年を超え2年以下」が,合わせて5.4ポイント下降し,他方,「3年を超え5年以下」及び「5年を超える(無期も含む。以下同じ。)」が,3.7ポイント上昇するなど,刑の長期化傾向が認められ,A中でも,「5年を超える」については,昭和46年以降,600人台から900人台の間で推移していたものが,平成10年に1,000人を突破し,13年には1,563人を数えるなど,近年の増加が目立っており,これと関連して,B年末在所懲役受刑者においても,刑期が「5年を超える」者の数が,昭和48年以降,おおむね6,000人台で推移していたものが,平成10年には7,000人を,12年には8,000人を超え,13年には9,478人に達するなど,急激な増加が注目される。なお,C無期懲役刑について,裁判の状況を見ると,平成13年の通常第一審における無期懲役言渡人員は88人(前年より19人増,4年を100とした指数では259)となり,確定人員においても,13年は68人(前年より9人増,4年を100とした指数では234)と,近年増加傾向にあると同時に,D無期刑仮出獄者の行刑施設在所期間別人員を見ると,平成4年の仮出獄者21人のうち,在所期間が20年を超える者は8人(38.1%)であったものが,12年及び13年の20人については,1人を除く19人(95.0%)が20年を超えている。  以上,刑期が全般に長期化し,無期を含む長期刑受刑者が増加している上に,無期刑仮出獄者の行刑施設在所期間が長期化傾向にあることを,本白書から読み取ることができる。なお,仮出獄状況について付言すると,平成13年は,仮出獄申請受理人員は1万6,027人(前年比1,402人増),仮出獄人員は1万4,423人(同1,169人増),仮出獄率は56.1%(同0.2ポイント上昇)となっており,仮出獄人員等は大幅に増加しているものの,仮出獄率は例年並みの水準となっている。

(4) 来日外国人及び初入者の動向
 最後に,最近話題になることが多い来日外国人と,著しい伸びを見せる初入者について,本白書のデータを簡単に紹介させていただくこととする。なお,来日外国人については,昨年の白書の特集で取り上げており,初入者等については,前掲の「行刑施設の収容動向等に関する研究」に詳しい。
 来日外国人による交通関係業過を除く刑法犯検挙件数及び人員を見ると,平成13年は,検挙件数は前年よりも減少したが,検挙人員は増加し,昭和55年に比べると,検挙件数は約21倍(1万8,199件),検挙人員は約9倍(7,168人)となっている。これと関連し,日本人と異なる処遇を要する外国人であるF級新受刑者数も,平成13年は1,243人(前年比14.9%増)と引き続き増加し,罪名別に見ると,窃盗,覚せい剤取締法違反,入管法違反,強盗の順となるが,11年以降,強盗が急増している。
 初入者について,新受刑者に占める初入者の数及び比率の推移を見ると,平成5年以降増加傾向にあり,12年は前年より2,258人(20.3%)増と急増し,13年も前年より923人(6.9%)増加して,初入新受刑者数1万4,294人,初入率50.2%と,昭和55年以降では最多となった。また,殺人及び暴力的9罪種(データがない器物損壊を除く。)の新受刑者について,平成8年ころから初入者の比率が上昇していることが,特集部分に示されている。なお,収容分類級別に年末在所受刑者の人員の推移を見た場合にも,7年以降増加の一途をたどり,11年からは急増するB級を,更に上回る勢いでA級が急増しており,これらのことから,新規参入者ともいえる初入者の増加が,近年の行刑施設の過剰収容に大きく関与しているものと解することができる。
 以上,本白書から,行刑施設の収容動向にかかわるデータの一部を紹介させていただいた。本稿では,そのアウトラインを示すにとどまったが,従来からいわれているとおり,近年の行刑施設の収容動向が,数量的な増加と質的な多様化との両方向で,急速に進展していることを読み取っていただければ幸いである。

4 おわりに
 「数量的な増加と質的な多様化」としたが,質の面での変動については,統計的なデータから読み取れることにはむろん限界があり,変動をうかがわせる指標が読み取れるとするのが,より適当なようにも思われる。ただし,質的な動向に着目した,実証的な調査研究を行う上でも,本白書が提示する豊富なデータは,調査研究の方向性を示唆するものとして,十分活用され得るものと考える。
 暴力的な犯罪によって少年矯正施設に収容された最近の少年たちにはどのような傾向があり,こうした少年たちが増加したことは処遇の現場にどのような影響をもたらしているのであろうか。高齢者の増加により,処遇上の様々な配慮に加えて,保護,医療及び福祉関係機関との連携がますます重要になるが,何が連携上の隘路となり,これに対応するにはどのような方策が考えられるのだろうか。無期を始め,長期刑受刑者が増加しているが,これら長期刑受刑者の多くが,人身・人命に重大・深刻な被害を及ぼす犯罪によって収容されていることを考えるとき,社会における被害者救済等への要請の高まりと連動して,矯正処遇にはどのような取り組みが求められており,また,在所期間の長期化には,どのような対応が考えられるのだろうか。本白書のデータを前に,様々な想念がめぐるが,更なる実務的・実証的な研究の成果に期待するものである。
 
(法務総合研究所研究官)


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